バッファロー「PC-MV9H/U2」。写真はスタンドを外した状態。 |
MPEG-2による映像のファイルサイズを
1/3に圧縮できるH.264
「テレビ録画機能付きパソコン(以下テレパソ)やHDDビデオレコーダーでテレビ番組を録画して楽しんでいたら、いつの間にかHDDの空き容量が残りわずかになっていた」。テレパソやHDDビデオレコーダーを使用している人なら、このような経験は一度や二度ではないだろう。テレビ番組の録画で一般的に用いられるMPEG-2フォーマットでは、解像度720×480ドットで録画すると、最低でも映像のビットレートを4~6Mbps程度に、動きの激しいシーンが多い映像であれば8Mbps以上に設定する必要がある。仮に平均6Mbps(可変ビットレート方式)で1時間の番組を録画した場合、そのファイルサイズは2.6GB程度になる。ワンクール(全13回)構成のシリーズものだと、まとめて残すには34.5GB程度の空き容量が必要になるわけだ。これではいくら大容量のHDDを用意しても、容量を使い切るのは時間の問題である。
そこで近年、“H.264/MPEG-4 AVC”(以下H.264)と呼ばれる映像フォーマットが注目されている。H.264は高いデータ圧縮率を実現する新しい映像フォーマットで、720×480ドットの映像であれば、ビットレートが2Mbps程度でも大きな破綻なくエンコードできる。つまり映像の品質を維持しつつ、映像のファイルサイズをMPEG-2の約1/3程度まで圧縮できるのである。
そのH.264でのテレビ録画を実現するテレビチューナーユニットが、(株)バッファローの「PC-MV9H/U2」である。USB2.0接続の外付け型テレビチューナーユニットで、テレビ番組を高品質なMP4ファイルとして、パソコン内に記録できる。H.264対応の録画機器には、外部ビデオ機器から入力した映像をメモリースティックにMP4フォーマットで記録できるビデオレコーダー「MSVR-A10」(ソニー(株))もあるが、MSVR-A10はプレイステーションポータブル(PSP)での再生を強く意識した製品で、サポートする解像度も320×240ドットのみと、テレパソ的な“録画した映像を高画質で蓄積する用途”に向く製品ではない。それに対してPC-MV9H/U2では、映像をDVD並みの解像度(詳細は後述)で記録でき、既存のテレビチューナーユニットに比肩しうる製品となっている。そこでこのレビューでは、PC-MV9H/U2と既存のテレビチューナーユニットとの比較や、お気に入りの映像を永久保存版として記録する目的に使用できるのか、といったポイントを中心に評価していこう。
H.264で直接録れる! リアルタイムエンコードを
実現するハードウェアエンコーダーを搭載
それではまず、スペック面から見ていこう。PC-MV9H/U2は地上アナログ放送対応のテレビチューナーユニットで、映像を符号化するエンコーダーには、米Qpixel Technology社のH.264ハードウェアエンコーダーチップ「QL201」を採用する。これにより以下の機能を実現している。
- テレビ番組のライブ視聴
- H.264フォーマットでのテレビ番組の録画
- H.264フォーマットで録画した映像の再生
- ハードウェア支援によるH.264トランスコード
PC-MV9H/U2がサポートするH.264のプロファイルならびにレベルは、以下のとおり。
- MainProfile(CABAC)1.3/2.1/3.0
- MainProfile(CAVLC)1.3/2.1/3.0
- BaselineProfile 1.3/2.1/3.0
分かりやすく説明すると、アナログテレビ放送などの映像コンテンツに最適なMainProfileに加え、ポータブルビデオプレーヤー向けの映像を想定したBaselineProfileもサポートする。PSPやiPodで楽しむ映像の作成も可能というわけだ。
サポートする映像設定は、解像度が最大720×480ドットで、フレームレートは29.97fps。ビデオビットレートはCABAC時で最大5Mbps、CAVLC時には最大10Mbpsまで設定できる。映像設定のプリセットはテレビ放送の録画を想定した“H.264/AVC(MP4)”のほか“iPod”“PSP”と目的別に用意されている。さらにH.264設定には、映像品質重視の“高画質”、ドラマなどの録画に最適な“普通”、長時間録画モードの“低画質”の3種類が用意されている。
モード名 | 解像度 | 圧縮形式 | ビットレート |
---|---|---|---|
高画質 | 640×480 | CABAC | 2.5Mbps(VBR) |
普通 | 640×480 | CABAC | 2Mbps(VBR) |
低画質 | 640×480 | CABAC | 1Mbps(VBR) |
映像フォーマットの設定ウィンドウ。 | 蓄積目的に最適な“H.264/AVC”設定では、3つのプリセットが用意されている。 |
映像フォーマットの設定では、圧縮方式やビットレートなどのパラメータを、ユーザー自身が設定できるようになっている。 |
アナログ放送用のチューナーユニットには必須と言える高画質化回路は、“ゴースト低減”“3D Y/C分離”“3Dノイズリダクション”“タイムベースコレクター”を搭載する。3D Y/C分離と3Dノイズリダクションは排他利用にはなるが、主要な機能はすべて揃っている。
PC-MV9H/U2の背面。アンテナ入力と出力、通常のAポートとミニポートの2つのUSB端子を備える。 |
PC-MV9H/U2の主なスペック | |
インターフェース | USB 2.0 |
---|---|
入力フォーマット | NTSC-M |
受信チャンネル | VHF 1~12ch、UHF 13~62ch、CATV C13~C63ch |
動画キャプチャー解像度 | 720×480、640×480、352×240、320×240ドット |
入出力端子 | アンテナ入力(F型コネクタ)×1、アンテナ出力×1、Sビデオ入力×1、コンポジットビデオ入力×1、オーディオ入力(L/R)×1、USB 2.0×3(ダウンストリーム Aポート×2、アップストリーム ミニBポート×1) |
対応OS | Windows XP SP1以降、Windows 2000 SP4以降 |
対応パソコン | Pentium 4/Celeron-2GHz以上または同等性能の互換CPU、メモリー256MB以上、HDD 40MB以上(全添付ソフトのインストールには1GB以上)、DirectX 9.0cに対応したハードウェアオーバーレイ可能なグラフィックスカード、DirectX 9.0cに対応した48kHzステレオ再生とDirect Soundに対応したサウンド機能など |
本体サイズ(W×D×H) | 170×180×38mm |
重量 | 約890g |