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【INTERVIEW】松下電器産業が『DMC-L1』に込めたメッセージ

2006年06月22日 17時38分更新

文● 聞き手:編集部 小林久ほか、構成:カメラマン 小林伸

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[アスキー] レンズ込みで20万円台半ばという価格設定は、市場では中級機クラスに相当すると思います。エントリークラスではなく、このクラスから製品を投入された理由はなぜでしょうか。
[杢中] 第1号機として、ある程度中身のある製品を出したかったためです。カメラ本体をほぼゼロの状態から開発したことや、セット販売するレンズのスペックを考えれば、納得のいく価格にできたと考えています。
[西田] 当社の強みは“垂直統合”のモデルを採用し、撮像素子からレンズまで、主要部品を自社生産できることです。レンズは山形工場、本体は福島工場で生産しており、ボディーもいまどき珍しい“MADE IN JAPAN”です。何十年も一眼レフを作り続けてきたメーカーとは体力の違いがありますが、われわれの持っている要素をいろいろ組み合わせ、魅力的なパッケージを作ろうとしたときに、どのようなスペックを選択すべきか考えた結果が、今回の製品です。

一方で、スペックに見合った価格を考えたときレンズのみ30万、ボディと合わせて40万円になってしまっては購入できるユーザーは限られてしまいます。カメラの良さを分かるユーザー層に手の届く範囲で、一番最適な価格が20万円台半ばではないかと考えています。
手動式シャッター
アナログカメラの楽しさを感じさせる、手動式のシャッターダイヤル


手に持って愛でるカメラを

[アスキー] DMC-L1が想定するのは、どのようなユーザー層でしょうか? 同価格帯の競合製品(Nikon D200やEOS 30Dなど)と比べると、かなり趣味性の強いカメラに感じますが。
[西田] メインはハイアマチュアの方々になると思います。手に持って愛でるというか、所有欲を満たすような製品を作りたかった。もちろん、LUMIX FZシリーズからのステップアップも考えており、操作系も共通にしています。単に一眼レフデジタルカメラ市場でシェア何%を取りに行くといったような考え方ではなく、いま弊社が持っている技術で一番評価されるものを製品化することが重要だと考えています。
[アスキー] 製品ラインナップの頂点にプロ用機が存在するメーカーは、このクラスにそのイメージを引き継いだ中級機種を投入していますが。
[杢中] われわれはプロを意識するというよりは、ハイアマチュアやフォトジャーナリストといった方々に最適なカメラを開発しました。DMC-L1の企画に当たって重視したのは、他社にないユニークなポジションでありながら、カメラの本質をしっかりと受け継いでいることです。“楽しく写真を撮れる”カメラ、“撮る気にさせる”カメラを目指しました。
[アスキー] 例えばどんな被写体をメインに撮るユーザーを意識しましたか?
[杢中] スポーツなどの機動性重視というより、マクロ撮影や街角スナップ撮影などじっくりと撮影を楽しみたいユーザーを想定しました。


アナログカメラの伝統とデジタルの利便性を

[アスキー] 角ばった本体のデザインは、最近の一眼レフのトレンドからみると、逆に目新しさも感じますが。
[杢中] デザインは、カメラの伝統にのっとった分かりやすい形であることを目指しました。四角い本体の中央に丸いレンズ、というのはLUMIXのデザインコンセプトですが、子供にカメラの絵を描かせるとたいていそういう絵を描きます。そのくらいポピュラーな形だということでしょう。
[アスキー] DMC-L1をデザインするにあたり、参考にしたカメラはありますか?
[杢中] DMC-LC1のテイストを受け継ぐことを念頭においていますが、特に参考にしたカメラはありません。
[アスキー] 本体サイズを決定する上で重視した点は何でしょうか。
[杢中] サイズはできるだけ小さくしたかったので、余分な出っ張りをなくすために背面の液晶ディスプレーを固定式にしました。ライブビュー機能を生かすために、可動式にしたほうがいいという意見もあったのですが、それをするためには余計な厚みと出っ張りができるため、今回は見送りました。ダイヤルなども完全に出すをいうことはしないで半分ボディーに埋め込んだのも、余分な突起をなくすためです。
[アスキー] レンズに表記されている文字はライカ独自のものですね。ボディー本体の文字は別の書体ですが、統一はされないのですか?
[杢中] ボディー本体につきましては当社の規定がありますので、それに基づいた文字を使用しています。レンズについてはライカレンズなので、当然ライカの規定に基づいたものを使用しています。
[アスキー] ライカからボディーが出れば、フォントは統一されますね。ボディーをライカにOEM供給する予定はありますか?
[杢中] お答えできる立場にありません。
ライカレンズ
どっしりとした印象のLeica Dレンズ。フォントにも注目


少々トリッキーなライブビュー機構

[アスキー] ライブビュー機能についてですが、オリンパスの『E-330』と共通ですか?
[杢中] DMC-L1のライブビューは、撮影用のセンサーを利用したものです。このため、ライブビューでシャッターを押した際には、撮影が終了するまでにミラーとシャッターがそれぞれ2往復するという独特な動きをします。
[アスキー] シャッター音が独特なのは、そのためですね。ピント合わせのために一度ミラーを下げますが、ミラーを上げたままCCDによるコントラスト検知でピントを合わせられないのですか?
[杢中] レンズ交換式ということで、レンズとセンサーの組み合わせが多く難しいため今回は見送りました。
分解写真
発表会で展示されていた分解写真


悪条件に強い、ライカのレンズ

[アスキー] 今回の魅力のひとつは、同梱されるレンズです。設計はライカで行なわれたのですか?
[杢中] 設計は自社で行なっています。それに対して、ライカが評価を行ない、承認されたものを試作します。次にボディー本体と合わせて総合的な画質評価と承認を受けていくような流れになっています。
[アスキー] ライカの評価基準としてシビアに感じるところはどういったところでしょうか?
[杢中] いつも話題になるのは、光学収差です。特に最近のレンズは広角側を重視した広めの画角設計になるので、収差が出やすくなります。そういったところをライカの基準に収めるため、レンズの構成枚数を増やさなくてはならないなどの苦労がありました。あと、ゴースト・フレアにたいしても厳しい。厳しい検査を経て承認されるので、悪条件に強いレンズになっていると思います。
[アスキー] ライカレンズの特徴とはなんでしょうか?
[杢中] 良好な条件ならきれいに撮れて当たり前。厳しい条件できれいに撮れてこそいいレンズだと、ライカの技術者によく言われます。ゴースト・フレアにたいして耐性があるので、逆光時や暗い悪条件でもしっかりした写真が撮れるのが特徴だと思います。実際、撮影してみると骨太な印象で写ると思いました。
[アスキー] 厳しい条件こそ、その良さが分かるというわけですね。ライカDという表記は、このL1だけのためのものですか?
[杢中] フォーサーズシステムマウント/デジタルカメラ用レンズが“ライカD”という表記になります。


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