――組み込み型Linux搭載携帯電話も秋頃発売予定
NEC、企業の基幹システム向けにLinux搭載ソリューション“NECエンタープライズLinuxソリューション for MC”を提供
2004年09月27日 20時28分更新
日本電気(株)(NEC)は27日、高い信頼性が求められる企業/官公庁/自治体などの基幹システムの構築において、従来から提供しているHP-UX/Windowsシステムに加えて、Linuxを用いたソリューション“NECエンタープライズLinuxソリューション for MC(ミッションクリティカル)”を本日販売開始すると発表した。また、今後のLinux関連サポートサービスの強化策として、
- システムの動作検証を行なう“Linux/OSS(オープンソースソフトウェア)検証センター”を10月中旬に設立し、2005年末までにNECグループのLinux関連技術者を現在(約2400名)の2倍に増員
- Linuxとサーバー/ミドルウェア/アプリケーションソフト/サポートサービスなどを組み合わせた動作検証済みのアプライアンス(機能特化)商品の提供
- NECが販売する基幹サーバーすべてにLinuxを搭載可能にし、現在提供中のミドルウェア製品群“VALUMO(ヴァルモ)ウェア”もLinux対応を進めていく
という3つの施策も同時に発表された。
代表取締役副社長の川村敏郎氏 | コンピュータソフトウェア事業本部長の岩岡泰夫氏 |
発表会には代表取締役副社長の川村敏郎氏、コンピュータソフトウェア事業本部長の岩岡泰夫氏らが出席し、同社のこれまでのLinuxへの取り組みや、今後のLinux事業戦略の詳細を説明した。
NECのミッションクリティカルシステム構築の考え方 | 従来はインターネットのフロントエンド向けサーバーなど小規模分野に提供していたLinuxサーバーを、情報系業務や基幹業務にもサポート領域を拡大するという |
川村氏は開口一番、「Linuxを今後の重要な中長期的成長戦略として取り組んでいく」と語り、同社のサーバー/エンタープライズ事業における新たな柱とするべく本腰を入れて取り組む姿勢を見せた。その理由として、「各社似たような状況だと思うが、これまでは事業の選択と集中を進めてきた。しかし、それだけでは規模が縮小してしまう。今後の飛躍と成長のためには、新たな戦略が必要となる。NECでは9年前からミッションクリティカルシステムを提供してきた。これらはUNIXをベースにしたもので、当初は不安視する向きもあったが、現在ではOS/アプリケーション/運用面で高い信頼性を得ているのは周知の通りだ。現在提供しているのは“HP-UX”“Windows”の2つのOSで実績を上げているが、今日提供を開始するLinuxベースのエンタープライズソリューションは、9年前の状況と極めて似ている」とLinux搭載ソリューションに大きな期待と確信を抱いていることを示した。
組み込み系のLinux搭載製品の事例として、携帯電話とパケット交換機の開発を表明 |
NECのLinuxへの取り組みは2002年にさかのぼり、科学技術計算など一部サーバー製品をすでに市場投入している。今回発表したエンタープライズ事業に加えて、組み込み系への展開も準備しており、第1弾製品として今年秋に3G(第3世代)携帯電話として「Nなにがしという型番の製品が市場に出てくるだろう」(川村氏)と話した。携帯電話にLinuxを採用した理由について、川村氏は
- 機能の追加や絞り込みが容易に行なえること
- ロイヤリティーフリーながら、安定性の高いカーネルを利用できること。さらに改善や強化の必要があっても対応が容易であること
- 開発者の教育コストを削減でき、グローバルな開発体制が構築できること
などを挙げた。また、端末だけでなくLinuxベースのパケット交換機についても開発を進めていることを明らかにした。
NEC予測によるエンタープライズ系Linux市場の推移 | 現在のNECのLinuxサーバー/SIサービスの獲得シェア |
具体的なLinuxサーバー(エンタープライズ)の市場規模についても言及し、NEC予測の数値としながら、国内での2003年度実績が1830億円(SI/サポート/プラットフォームを含む)、2004年度予測が2120億円でその後25%程度の成長を続け、2007年度には4500億円規模に拡大すると説明。NECはこのうち、サーバー向上出荷金額で25%、SIサービスの売上で17%のシェアを持つという(これらの数字はいずれもIDC調べ)。NECでは、2007年度のLinux事業全体の売上目標を900億円として、事業強化を推進すると語った。
説明会の最後に記者からのQ&Aで、「すでにLinux事業を進めているIBM(日本アイ・ビー・エム)などに対する(NECの)強みは?」と聞かれると、「オープンシステムにおけるMC事業への取り組みには、古くからかなりの経営資源を投入しており、全OSを見渡してもトップだと自負している。特にサポートサービスにおいて、ベンダーと密接に連携を重ねてきた。このフレームワークがLinux事業においても変わらず提供できると思う。その点では他社に負けない自身がある」と強気の姿勢を見せた。また、「Linux事業が伸びることで、既存のサーバービジネス(HP-UXやWindowsベース)に影響が出るのでは?」と質問されると、「ハードウェアリソースは確かに売上が下がる可能性もある。しかし、サポートビジネスという付加価値を提供していくことで、補えると考えている」と懸念を払拭した。
現在開発中で10月中の設立を目指している“Linux/OSS検証センター”。ユーザーが持ち込む、もしくはNECに依頼することで、ハードウェア/ソフトウェアのLinuxでの動作検証や技術支援などを行なうという |