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DVD+RWアライアンス、第5回アジアパシフィックセミナーを開催――記録型DVD最速・DVD+R16倍速記録のデモ公開

2004年05月27日 22時49分更新

文● 編集部 内田泰仁

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片面2層記録を実現した“DVD+R DL”のロゴ。記録速度は現在2.4倍速
技術面での最新トピックスとしては、2003年秋に達成したDVD+Rへの8倍速記録、2003年末に技術試作が発表され、5月より市場への製品出荷が始まった、DVD+Rへの片面2層記録(容量8.5GB)が可能な“DVD+R DL(Double Layer)”に続き、記録型DVD規格としては最速となる2004年半ばにはDVD+Rへの16倍速記録を実現し、リライタブルタイプとしては最速のDVD+RWへの8倍速記録については2004年秋での実現を目指すという。この日行なわれたデモンストレーションでは、リコーが開発中の16倍速記録対応ドライブおよびメディアを使ったテストが世界で初めて一般に公開された。



上から2番目のドライブがDVD+R16倍速書き込み対応の試作機。開発中のものなのでデザインなどは変更される可能性がある記録速度などの検証が可能な『Nero CD Speed』を使ったテストの結果。CAV方式での記録を行ない、回転速度は約1万回転を常時維持、約6.7倍速で記録を開始し、終了時には16倍速に到達する。途中グラフが一瞬下降しているのはエラーが発生したポイントを示しているが、これは試作機であるための偶発的なもの

16倍速記録での大きな変更点を説明する図。高出力でメディアを反応させるため、特に大きいマークの記録時には、次の記録マークに与える熱“ポストヒート”の影響が大きくなる。そのため、広めの冷却ギャップを設けることでこれを抑えている。また、記録マークを書き込む波長パターン“記録ストラテジ”も16倍速用に新しいものが作られている
DVD+R16倍速記録は、現時点での試作ドライブでは全域をCAV方式(メディアの回転数を常に一定に保ち記録する方式。記録速度は書き込み開始時が一番遅く、記録位置が内周に近づくにつれだんだん速くなっていき、最終的に最高速になる)を使用し、データ転送速度は22MB/秒(CDの144倍速に相当)、線速度は最高速時で秒速約55.83m(時速に換算すると約201kmで、新幹線に迫るスピード)、ディスク回転数は約1万回転/分となっているという。4.7GBのデータ書き込みにかかる時間は6分以内(デモンストレーションでは5分36秒で完了)。同団体の解説によると、DVD+Rメディアなどに使われる材料のポリカーボネートは、メディア回転数が1万回転/分を超えると強度の限界を超え、破損する(割れてドライブ内で飛び散ってしまう)可能性があるため、記録速度的には最高16倍速が限界点となるとしている。

なお、16倍速記録に対応したDVD+Rメディアは、現行の8倍速対応メディアが等倍~8倍速までをサポートするのと同様に、等倍~16倍速までのすべての速度に対応するが、8倍速対応のDVD+RWメディアに関しては、3.3~8倍速対応となる見込みだという。



著作権保護技術“Vidi”による放送録画の基本モデル。Vidi対応のレコーダー、メディアが使用される。開発コード名の由来はローマ皇帝ユリウス・カエサルの言葉“私は来た、私は見た、私は勝った”(ラテン語で“Veni,vidi,vici”)から取ったとのこと“コピーワンス”番組を録画したVidi対応メディアを再生するときの制限の図。表示装置以外にデータを送ることは一切できない

高速化以外の技術面での今後の展開としては、現時点でDVD+RW/+R規格が持たない、著作権保護技術への対応が紹介された。今後のビデオレコーダーでは、地上デジタル放送などで用いられる“コピーワンス”(日本、米国のケーブル/衛星テレビ網)や、インターネットでの録画データの配信を規制する“Broadcast Flag(※1)”(米国の電波放送)などといった放送コンテンツ保護のため制限への対応が求められてくる。DVD-R/RW/RAMは“CPRM(Content Protection for Recordable Media)”でこれらに対応しているが、これに対してDVD+RW/+Rでは、同団体の幹事企業のうち米ヒューレット・パッカード(Hewlett-Packard)社とロイヤル・フィリップス・エレクトロニクスの2社が共同で、DVD+RW/+R向けの著作権保護技術“Vidi”(ヴィディ、開発コードネーム)の開発と、各国の関係団体への認可申請を行なっているという(現段階では同団体全体として正式規格化には至っておらず、現在策定作業中とのこと)。

※1 インターネットでの放送コンテンツ配信は規制するが、コピーメディア作成に関しては制限を設けていない。そのため、録画したデータを対応録画機器に送ることにより、コピーの作成が可能。“コピーワンス”ではこれはできない。

“Vidi”対応のビデオレコーダーの基本構造。メディアのキーブロックとレコーダー側の暗号鍵からユニークなIDを生成し、メディアに記録、録画コンテンツの暗号化記録を行なうことでコンテンツを保護する“Vidi”対応のパソコン用ドライブを用いたパソコンでの録画/再生環境の構造。基本的にはビデオレコーダーと大差はないが、ID生成はVidiに対応したパソコン上のソフトウェアが担当する

基本的な仕組みは、Vidi対応のビデオレコーダー/プレーヤーとVidi対応メディアがそれぞれ暗号鍵を持ち、これらから生成したユニークなIDをメディアに記録しつつ録画データを暗号化することで、コピーの作成や配布を制限するというもの。これは、パソコン用のドライブにも用いられ、その場合、ユニークなIDの生成/照会はパソコン上のソフトウェアが行なう。製造面では、メディアの生産工程に変更が必要なく、Vidi用ICも安価で提供され、かつライセンス料も一定額のみとする、などといったコスト面での優位点が挙げられている。

現在、米国では“Broadcast Flag”を管理するFCC(Federal Communications Commission、連邦通信委員会)に対して認可を申請済みで、日本ではこの夏を目標に(社)電波産業会(ARIB)に“コピーワンス”対応著作権保護技術として申請を行なうという。

また、今回のセミナーでは、DVD+R DLに対応し、2層にまたがるデータ(パソコンのファイルデータおよびDVD-Video規格準拠のMPEG-2データのいずれも)をシームレスに書き込める、独アヘッドソフトウェア(Ahead Software)社の“Nero 6”シリーズや、DVD+RW/+R規格のライセンスの概要も紹介された。

独アヘッドソフトウェアのチャールズ・リッポス(Charles Lippoth)氏Neroシリーズ最新版『Nero Express 6』で2層にまたがったデータを記録している画面。ウィンドウ中段下のプログレスバーのうち、濃い青の部分が1層目、薄い青の部分が2層目に記録中であることを示しているビデオレコーディングソフト『Nero Recorder 2』の画面。DVD+R DLメディアに録画を行なっているため、ウィンドウ下段にあるプログレスバーに記された容量が8000MBを超えている。ユーザーが層の切り替えを意識する必要はまったくない
独アヘッドソフトウェアの“Nero 6”シリーズ。なお、アヘッドソフトウェアは近日日本法人を立ち上げる
DVD+RWメディア製造のライセンスDVD+RW/+Rレコーダー製造ライセンス。この金額にはDVD-Video再生のライセンスは含まれていない
DVD+RW/+Rレコーダー製造ライセンスにDVD-Video再生機器製造ライセンスも追加したパック。DVD+RWアライアンス企業のほか、パイオニアもライセンス提供企業に入っているDVD±R/RWレコーダー製造のライセンス。DVD+RW/+Rのライセンス提供企業、DVD-R/RWのライセンス提供企業の双方と契約を結ぶ必要がある。ここでもDVD-Video再生機器製造ライセンスはオプションとなる
DVD+RW/+R関連のライセンスプログラム。ここでは、(1)DVD+RWまたはDVD+Rメディア製造のライセンス、(2)DVD+RW/+Rレコーダー製造のライセンス、(3)DVD-Video再生機器製造のライセンス、(4)DVD+RW/+RおよびDVD-R/RWの複合ライセンス、が紹介された。各画面の左側は、複数の特許保有企業と合同でライセンスを結ぶ場合、右側は、単独の特許保有企業(ここではフィリップス)とライセンスを結ぶ場合のデータ(特許ごとに別企業との契約が必要なケースも)。基本的には合同でライセンス契約をしたほうがリーズナブル


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