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【最新パーツ性能チェック(Vol.19) 】ついに登場した第4の8パイプラインビデオチップ“DeltaChrome”速攻レビュー!

2004年01月04日 16時25分更新

文● アスキープラス編集部 野口岳郎

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5600/9600水準の性能を実証

 まずはやはり気になる3Dパフォーマンスからチェックしよう。比較対象には、GeForce 5600、RADEON 9600XTのほか、上位、下位のモデルも並べてみた。
 結果を一言でまとめると、今回のDeltaChrome S8サンプルのパフォーマンスは、GeForce FX5600やRADEON 9600と互角以上といえる。FX5600との比較では、3DMark 03では僅差で及ばないものの、今回テストしたそのほかのベンチマークでは10~20%ほどリードしている。RADEONは、テスト機材の関係で比較対象が9600XTであり、これには50%ほどの性能差を付けられているが、9600XTはノーマル9600に比べ、コア、メモリのクロックがそれぞれ1.5倍ほどにも強化されているため、ノーマル版について言えば、DeltaChromeと同程度になりそうだ。もちろん、5200/9200には大きな差をつけてリードしている。ターゲットとした5600/9600クラスの性能は実現できていると言えよう。
 ただ、現在のビデオカードマーケットは、5900/9800系がハイエンド、その下は5700/9600XTであり、ノーマルの5600/9600はその下の、バリューゾーンの上のほうという存在だ。3Dパフォーマンスが最優先というユーザーには、S8の現在の性能ではちょっと物足りないかもしれない。このクラスの性能を求めるユーザー向けにはF1が必要だろう。

回転させても性能が落ちない

プロパティ設定画面でセカンドディスプレイだけを回転させる設定をしたところ

 次に、DeltaChromeの特徴機能をいくつか見てみることにしよう。
 DeltaChromeは、画面を回転させても性能が落ちず、機能的にも制約が生じない点を特徴に上げている。縦画面にした状態でより快適に使えるというわけだ。
 では他のチップはどうか。まずRADEONは、現在のドライバでは、画面の回転機能は標準ではサポートされない。レジストリをいじることで、コントロールパネルに回転メニューを出させることはできるが、この場合、ビデオオーバーレイができなくなるという制約がある。GeForceは回転機能を標準で持っており、ビデオオーバーレイも可能だ。

 各カードで90度回転させた状態で3DMark 03を計測してみたところ、RADEON、GeForceともに10%ほど数値が落ちたのに対し、DeltaChromeでは逆に数値が上がっている。これは、縦にしたほうが性能が高いというのではなく、画面が縦になったことで描画内容が変わり、3DMarkの場合縦長のほうが描画の負荷が少ないということなのだろう。逆に言うと、この数値が当たり前だとすると、RADEONやGeForceは縦画面にすると20%ほど性能が落ちたことになる。
 触れ込みどおり、性能ダウンのない縦表示機能を持っていることが確認できた。ただ、縦長の3D画面が必要なケースというのがあまり思いつかないのも事実だ。  縦長にしたい用途としてはやはり、Webの画面やDTPといった、オフィス的な用途のほうが普通だろう。DeltaChromeは、2台つないだディスプレイのうち、片方だけ縦表示、といった設定も可能なのは便利だ。GeForceでは、縦、または横に同じ解像度の画面を並べることしかできない。RADEONでは解像度は独立に設定できるが、回転機能はレジストリをいじらないと出てこない隠し機能である。DeltaChromeが最もフレキシブルなのは確かだろう。
 しかし、最近では回転可能な液晶ディスプレイがめっきり減ってしまった。VESAのフリーマウントを使えば回せなくもないが、追加の出費になるし面倒だ。ただ、液晶の低価格化にともない、便利なデュアル液晶環境がさほど無理をせずにも導入できるようになってきている。縦と横を併用できるDeltaChromeは、2画面 時代に本格的に対応した仕様ともいえる。低価格な15インチクラスの液晶に回転機能が再装備されることを期待したくなる。



今後の応用が楽しみなビデオエンジン

動画にリアルタイムでエフェクトをかけられる
動画にリアルタイムでエフェクトをかけられる。DVD再生ソフトでキャプチャを試みたが、常にノンエフェクトの状態で取り込まれてしまうため、結果をお見せできないのが残念(ビデオメモリからDACに渡す段階でエフェクトをかけていると思われる)

 DeltaChromeの目玉の一つに、リアルタイムに動画にエフェクトをかけられる「Chromotion」がある。Intervideo社のWinDVDは、DeltaChromeの機能を使い、プレーヤー画面から直接これらのエフェクトを利用可能になるという。今回の時点ではまだWinDVDにはこの機能は組み入れられていなかったが、画面のプロパティ上でこの機能をONにすることができた。
 現在プロパティで用意されているのは、エンボス、ネオン、ソフト、シャープの4種類。エンボスとネオンは、エンジンのパワーを見せつけるにはいいが、実際にどのようなメリットがあるかはむずかしいところだ。しかし、ソフトとシャープは、表示デバイスや好みによって映像をリアルタイムに調整できる便利な機能である。この機能は、オーバーレイ表示されるあらゆる画像──つまり、AVIやWMVをメディアプレーヤで再生する場合にも、WinDVDなどのDVD再生ソフトでDVDを鑑賞する場合にも機能する。この機能はプログラマブルだというので、将来的に有用な新機能の追加が期待できる。



片方だけ回転させた状態での利用例
片方だけ回転させた状態での利用例。Web画面などは縦表示だと見渡せる範囲が広くて便利だ

 なお、フォントのスムージングに関しては、今回2D系のベンチマークを取ってみたのだが、有効に機能している様子はなかった(スムージングをONにするとそれなりに性能が落ち、割合はRADEONやGeForceと同等)。同社によれば、RADEONやGeForceよりはるかに落ち方が少ないというベンチマークが出ているので、今回のサンプルのドライバにまだ組み込まれていないのだろう。



ビデオ&オフィス派に魅力

 3Dゲームの性能が最優先という方の場合には、この上の性能のカードがnVIDIAやATIから何種類も出ており、DeltaChrome S8では筆頭候補にはなりにくそうだ。S8ベースのボードは2万円台前半になると言われており、この価格帯だと性能の高いFX5700Ultraや9600XTが買えてしまう。ただ、DeltaChromeの性能はちょっと前のミドルレンジであり、DirectX9対応もあって、よほどヘビーな3Dゲームをヘビーな設定で楽しみたいというのでなければ、十分快適に遊べるものだ。
 それに加え、DeltaChromeは、フレキシブルな回転機能つき2画面サポートと、機能豊富で美しいDVD再生エンジン、D端子への出力という魅力がある。前者はWebページを参照しながらWordやExcelを操作、といったオフィスワークに重宝するし、後者はDVD鑑賞を強力にバックアップしてくれる。多画面表示でDVD再生が便利といえばMatrox製品もあるが、Matroxは3Dゲームをするには性能・機能面で難がある。その点DeltaChromeはオールマイティだ。
 ビデオカードのランクが、搭載されているビデオチップの3D性能で決まるようになって久しい。しかし、PCは事実上ゲームマシンというヘビーゲーマーを除き、多くのユーザーにとってビデオカードは、Webやオフィスツールなど2D画面の表示用であり、DVDやDivXなどのビデオの再生用デバイスではあるまいか。そんな、いわばメインストリームのPCユーザーには、DeltaChromeのようなカードこそが実はベストフィットするのではないだろうか。

【グラフ1】3DMark03の結果【グラフ2】Comanche4の結果【グラフ3】Final Fantasy XI Ver.2の結果
【グラフ4】Unreal Tournament 2003の結果【グラフ5】x2の結果【グラフ6】3DMark 2001の結果
※お詫びと訂正:文中G4、G5とありましたのはD4、D5の誤りでしたので記事を訂正しております。ここにお詫びいたします。

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