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【特別企画】IBMとレッドハットの提携が実現するRed Hat Enterprise Linuxサポート体制

2003年12月12日 22時38分更新

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Linuxをビジネスで利用する際に問題とされるのがサポート体制である。誰がどこまでサポートするのか明確でないという声も聞く。本当にオープンソースOSのサポートは他のソフトウェアのサポートに劣るのだろうか。その解答として、IBMはレッドハットと技術提携したLinuxの独自サポートを発表した。

 最近Linuxのビジネス利用が進んでいる。しかし、いまだに開発主体がわからないソフトウェアというイメージもあるようだ。Linuxを導入するにしてもサポートに誰が責任を持つのかという不安を抱く企業もまだある。
 IBMとレッドハットによるRed Hat Enterprise Linuxサポートについての提携は2002年9月16日からスタートしている。レッドハットではIBMのeServer zSeries、iSeries、pSeriesおよびxSeriesの各サーバにRed Hat Enterprise Linux ASを対応させている。IBMでは、Red Hat Enterprise Linuxを搭載した同社製品の障害は、すべてIBMのサポート窓口で対応すると発表している。
 しかし、ひと言でサポートと言っても、OSのバグフィックスから、ハードウェアへの対応まで幅は広い。Linuxの動作確認をしただけでLinuxサポートと言う場合もある。IBMによるLinuxサポートとは具体的に何をどこまでサポートするのか、その体制を調べてみた。

提携によるサポート窓口の一本化

【写真1】Red Hat Enterprise Linux AS 2.1。Red Hat Enterprise Linuxは、ユーザーの求める性能を出せるように設計されている点で従来のディストリビューションとは異なる。ビジネス本位の製品だ。
【写真1】Red Hat Enterprise Linux AS 2.1。Red Hat Enterprise Linuxは、ユーザーの求める性能を出せるように設計されている点で従来のディストリビューションとは異なる。ビジネス本位の製品だ。

 IBMによるサポート体制(図1)を簡単に説明すると、まずユーザーから受けた障害報告を分析して、その場で対応できるもの(Level 1)、なんらかの技術的な対策が必要なもの(Level 2)に切り分ける。
 さらにOSレベルでの根本的な対策が必要になる場合は、米IBMにおいてサポート(Level 3)を行う。こうして、自社製品で使用するRed Hat Enterprise Linuxに関してはIBMがサポートする体制になっている。レッドハットは今回の提携により、このLevel 3の段階で、IBMをサポートすることになる。
 提携によるサポート窓口の一本化のメリットは、ユーザーにわかりやすい点だ。導入したシステムがうまく動かない場合に、その問題の切り分けをユーザー側で行う必要がないからである。
 もちろんプロプラエタリなOSでもこのようなサポートが行われている。その意味ではLinuxも他のOSと同じサポートが受けられるようになったという程度にすぎない。しかしLinuxはソースコードの公開を前提に使用を認めるGPL(General Public License)に則っているため、ハードウェアメーカーでも、ライセンス上Linux OSの技術サポートが簡単にできる点が異なる。
 実際、IBMとレッドハットのサポート提携は、ソースが公開されているという特長を最大限に生かしている。プロプライエタリなOSではLevel 3クラスのサポートには、ハードウェアベンダーは関与しにくい。ソースコードが公開されていないからだ。OSの障害がIBMのハードウェアに特化して生じている場合などは、ソフトウェアベンダー側の対応のプライオリティは当然下がる。ソースコードさえ公開されていればIBM側で対処したほうが早い場合が当然あるのだ。次にこの点について見ていこう。



安かろう悪かろうではない

 Linuxシステムがもてはやされる理由のひとつに安さがある。もちろんその第一の理由は低価格なIAサーバに起因している。しかし、上述したように、サポートコストもLinuxのほうが安いことがわかる。ソースコードを公開しているので、サポート技術者は容易に企業の壁を乗り越えられるからだ。個別の問題がいくつあっても、関連企業間で協業して分担すれば1企業あたりのサポートコストを抑えられる。
 従来のプロプライエタリなOSでは、ユーザーを囲い込むために、ソースコードを非公開にしてすべての技術を抱え込む体制になっている。なかにはソースコードを公開する場合もあるが、基本は非公開だ。結果としてOSの障害にはソフトウェアベンダーが全責任を持つことにはなるが、サポート対応というものは本質的に企業にとってコストセンターである。その点オープンソースのLinuxならばIBMとレッドハットが協力してサポートを分担でき、コストを下げられる。窓口としてはIBMに統一されるので、ユーザーに対する責任の所在が明確になっているという点は、プロプライエタリなOSと遜色がない。

LVOXが実現するLinuxの未来

 オープンソースソフトウェアを中心に据えた協業体制がITビジネスで発展していく可能性がある。その良い例が最近のオラクルやベリタスソフトウェアのLinux対応とそれに伴う企業提携の発表である。
 オラクルでは、すでにOracle9i RACを発表してLinuxベースのデータベースクラスタを可能にした。
 また2003年、VERITAS Foundation SuiteがRed Hat Enterprise Linux AS 2.1に対応したことで、Linuxの弱点と言われていたI/Oまわりの問題が解消され、これまでWebサーバなどエッジコンピューティングに限られていたLinuxの用途を、一挙に基幹系まで押し広げつつある。IBMではLinux、VERITAS、Oracleと同社のxSeriesサーバの頭文字を取った「LVOX」と呼ぶデータベースサーバソリューションの提供を推進していくと発表している。

 このLVOXが実現するのは、Xeon MPプロセッサ最大8CPUによるSMP構成のハイエンドサーバを用いたデータベースシステムである。2002年ごろよりLinuxが本格的にエンタープライズに参入すると言われていたが、当時はまだ誰も半信半疑だったLinuxのビジネス利用が、たった1年ですでに本格稼動しているスピードの速さこそがオープンソースの実力を証明していると言って良いだろう。

【図1】IBMによるLinuxサポート体制。IBMでは同社のサーバに搭載するRed Hat Enterprise Linuxを全面的にサポートする体制を整えた。OSの技術的な問題についてはソースコードレベルでレッドハットと協力できる。情報のフィードバックが迅速になる点がオープンソースソフトウェアの利点と言える。
【図1】IBMによるLinuxサポート体制。IBMでは同社のサーバに搭載するRed Hat Enterprise Linuxを全面的にサポートする体制を整えた。OSの技術的な問題についてはソースコードレベルでレッドハットと協力できる。情報のフィードバックが迅速になる点がオープンソースソフトウェアの利点と言える。

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