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【最新パーツ性能チェック(Vol.13)】伝説の“3次キャッシュ”1MB搭載Xeon-3.06GHzの性能はいかに!?

2003年07月31日 19時32分更新

文● 週刊アスキープラス編集部 野口岳郎

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3.06GHzの2つの注目点

 さて、ここからはいよいよ実際の性能測定に入っていく。まずチェックしたいのは、3次キャッシュ搭載による、アプリケーションレベルの性能変化である。比較対象としては、本来は3次キャッシュなしのXeon-3.06GHzが望ましいが、残念ながら評価サンプルがないため、ここはPentium 4-3.06GHzで代用する。コア、クロック、FSBが同じであるし、メモリ環境はPC2100デュアルで統一したので、ほぼ同性能と見ていいはずである。

 もう一つの注目は、800MHz FSB版Pentium 4との性能の上下である。XeonはPentium 4より「高級」「高速」「高機能」な印象がある。実際、Xeon登場当時は、Xeonは「単体使用時はPentium 4と同性能、しかもデュアル構成が可能」という、Pentium 4の完全な「上位」モデルであった。ハイパースレッデュング機能がPentium 4の1年近くも前から組み込まれるなど、機能面でも最新の座にあった。
 しかし、現状ではXeonはFSB 533MHz止まりで、メモリーはPC2100デュアルまで。FSBとメモリの帯域は4.2GB/秒にとどまるのに対し、Pentium 4はXeonのお株だったハイパースレッディングのサポートに加え、FSBの800MHz化とデュアルPC3200のサポートで、FSBとメモリの帯域を6.4GB/秒にまで伸ばした。つまり、単体CPUとしてはXeonよりはるかに高性能になってしまっている。

 これが今回Xeonサイドに1MB3次キャッシュという援軍が加わったことで、FSBとメモリ性能のビハインドをどこまで縮められるか、ひょっとしたらひっくり返せるか、というのが見どころになる。Xeon-3.06GHzがPentium 4-3.06GHzを上回るのは確実だが、では、Pentium 4-3GHzは上回れるのか。3.2GHzに対してはどうかといった点が気になる。

単体ではFSB 800版P4に及ばず

3DMark2001 SEの結果 FinalFantasy XIの結果
3DMark2001 SEの結果FinalFantasy XIの結果
Comanche 4の結果 Unreal Tournament MatchBotの結果
Comanche 4の結果Unreal Tournament MatchBotの結果
Superπの結果 GCAの結果
Superπの結果GCAの結果
TMPGEncの結果 DivXの結果
TMPGEncの結果DivXの結果
Windows Media Video 9の結果

 さて、例によってCPUパワーが求められる処理の典型として、3D描画と動画エンコードを中心にベンチマークを行なってみた。グラフ中「×2」とあるのは、のちほど論評するデュアルXeon時の性能である。それ以外はシングルCPUで計測している。また、ビデオカードやハードディスクも、過去の他のCPUのデータと合わせるため、GeForce4 Ti4200とBarracuda ATA Vに変更している。
 3次キャッシュ以外は同スペックとなるPentium 4-3.06GHzとの比較では、多くのテストではっきりとリードを示している。CPU性能の差が出にくい3DMark2001SEで3%、Comanche 4やUnreal TournamentのBotMatchでは6%ほども改善している。さらにSuperπでは8%、DivXによる動画圧縮でも3.3%の向上が得られた。キャッシュが純粋に2倍に増えたわけではない割には、良好な成績と言える。

 ただ、TMPGEncやWindows Media Video 9においては、成績向上はほとんど見られなかった。両テストはメモリ上の必要なデータを、prefetchなどの命令を駆使して十分前もって読み取って1次キャッシュに取り入れてしまっていて、2次/3次キャッシュの効果が現われにくくなっているようだ。
 注目の対Pentium 4戦においては、残念ながら3次キャッシュの力を持ってしても、FSB 800MHzのPentium 4-3GHzに届かなかった。Xeonによる「シングル時の最高速CPU」の座の奪回はならず、したがって、シングルCPUでの動作が基本となる3Dゲームなどをメインの用途とする場合は、これまでどおり、Pentium 4やAthlon XPがベストの選択肢と言える。



Windows Mediaでは無敵の強さ

 シングルではPentium 4にかなわなくてもXeonが高価なのは、デュアルCPU構成が取れること。それによって、サーバのように複数のトランザクションを同時に処理する際に、複数のスレッドを立てることでスムーズな動作が行なえることだ。
 もっとも、個人のPCにおいては、複数のスレッド(あるいはアプリケーション)の同時実行というのは、確かにDVD-Rを焼きながらWebサーフィンとか、DVDを見ながらMP3エンコードといったことが考えられなくはないが、日常的にメリットを感じるかというとやや疑問符が付くだろう。現状、最もデュアルCPUのありがたみを感じられるのは、複数CPUの存在を前提に作られたエンコーダだと思われる。
 TMPGEncやWindows Media Video 9のテスト結果を見れば明らかだが、このような、複数スレッドを立てて活用するアプリでは、Xeon-3.06GHzデュアルの性能はまさにケタ外れだ。実はデュアルXeon-2.4GHz程度でも、Pentium 4-3.2GHzを圧倒する結果は出せる。時は金なり、圧縮が速く終わることで、貴重な睡眠時間が増やせたり、他の仕事に回せることを考えれば、Xeonデュアルのシステムが高価であっても元は取れるかもしれない。
 ただ、TMPGEncとWindows Media Videoで、Xeon-3.06GHzと(3次キャッシュを持たない)Pentium 4-3.06GHzが、シングル時の性能が大きく変わらないことを考えると、この2つのテストに関しては、3次キャッシュなしのXeon-3.06GHzを使っても同じような性能が得られる可能性はかなりある。
 とはいえこの2つは極端にキャッシュに依存しないようにチューニングされた、特殊な例である。サーバのように、その場その場でやってくるリクエストに応えなくてはならないケースでは、メモリの先読みは難しい。普通のマルチスレッド対応アプリの場合でも、もう少し差は出てくるものと思われる。

燃え上がるデュアルの夏!?

 1MBもの3次キャッシュを搭載することは、CPUの製造上はたいへんなことだ。現状ではトランジスタ数、ダイサイズとも公開されていないようだが、1bit=6トランジスタとすると、1MBだと4800万トランジスタ。これは、Pentium 4本体(5500万トランジスタ)にほぼ匹敵する。キャッシュの領域は論理回路ほど場所を取らないとはいえ、ダイサイズがかなり大きくなることは確実で、当然、歩留まりも落ちるはずだ。

 現時点での価格差(3次キャッシュなしのXeon-3.06GHzが455ドルに対し、3次搭載Xeon-3.06GHzが690ドル)は、インテルCPUの最上位モデルと2番手との差としては常識的な線だが、2倍近いトランジスタを使っていることを考えれば、インテルとしてはかなりがんばって安く提供しているに違いない。
 その理由は言うまでもなく、Opteronというプレッシャーだ。SPECのページによれば、SPECint2000、SPECfp2000ともに、Opteron 1.8GHzはXeon-3.06GHzの値をわずかに上回っている。8月には2GHzのOpteronも登場するとささやかれている。これに対抗するのに、Pentium 4同様Xeonも3.2GHz版を投入する手もあったのだろうが、今回は、すでにXeon MPで実績のある3次キャッシュの力を借りたわけだ。結果、intで153、fpで51の差をつけてOpteron 1.8GHzの逆転に成功している。

 Opteronの2GHz品の性能は、1.4、1.6GHz品の性能から予測すると、fpでは再逆転が濃厚だ。そうなる前に、intもfpもトップを取れる状況でリリースするというのは正解だろう。
 ただ、最上位モデルを追加したことで、3.06GHz以下のXeonの価格は大きく引き下げられた。Opteronも昨日、価格改定が行なわれており、どちらもローエンド品は200ドル台である。エンコードのような、デュアルCPUによる高速化の応用例が登場したことから、このところデュアルCPU環境がいつになく身近で魅力的なものになっている。なんとなく一服感のあるシングル用CPUとはずいぶん対照的だ。Xeonプラットフォームでは、ATX電源でATXフォームファクタ、メモリはアンバッファードという、PCの周辺機器をそのまま使えるものも出てきた。注目に比例して製品のバリエーションが増え、低価格化が進むという好循環に、そろそろ入りつつある気配だ。

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