写真1 初のスマートディスプレイ対応製品として発売された、NECの「SD10」。 |
「SD10」は、コードネーム「Mira」と呼ばれていた「Windows Powered Smart Display」(以下、スマートディスプレイ)対応の端末だ。スマートディスプレイは、Windows CE(Winodws CE for Smart Displays)にWindows XPの遠隔操作機能「リモートデスクトップ」のクライアント機能を搭載した端末である。つまり、Windows XP Professional搭載PCという「親機」にぶら下がって動作する「子機」というわけだ。
SD10のサイズは290(W)×220(D)×31(H)mmで、重さは1.5kg。ちょっと厚めのサブノートPCといった程度だ。そのため、持ち運ぶ分には問題のない重さである。ただし、スマートディスプレイの操作は基本的に付属のペンを使う。そのため、左手で本体を持って、右手でペン操作という使い方になるのだが、この重さでは長時間持つのはつらいだろう。
HDDを持たないため振動に強く、加えて防滴仕様のため水しぶきにも強い。家庭での利用を配慮した設計といえるだろう。
Webアクセスには便利
画面1 SD10の起動画面。バッテリや無線LANの状況も表示する。リモートデスクトップの親機に接続するには、画面左にアイコンをタップする。また、画面左下の設定をタップすると設定画面だ。 | 画面2 音量やスタイラスの調整画面。「新規接続」をタップすると、リモートデスクトップの親機の設定画面になる。 |
スマートディスプレイは基本的にはWebブラウザの利用を想定している端末だ。リモートデスクトップの環境で、Internet Explorer以外にメーラやエディタ、インスタントメッセンジャーなども使ってみたが、やはり文字入力が必要なアプリケーションは使いにくい。ソフトウェアキーボードがついているが、ペンでキーを1つずつタップしていくのは骨が折れる作業だ。スマートディスプレイで便利だと感じたのは、Webアクセスだった。Webの操作は、リンクをシングルクリックでたどっていけばよい。そのため、ディスプレイを見ながらマウスで操作するより、ディスプレイ上をタップして使う方が、直感的で分かりやすいのだ。
ソフトウェアキーボードは、本体右上に4つ並ぶボタンの一番右にある「入力パネルボタン」を押すと表示される。ダッシュボードには、英語表示のキーボードだけでなく、ひらがなとカタカナのキーボードもある。ただし、50音順にキーが並んでいるので、通常のキーボードで慣れた人には少々使い勝手が悪いだろう。英語表示は通常のキーボードとほぼ同じ配列だ。ほかに手書き認識モードもついており、漢字の手書き入力も可能だ。また、どうしてもキーボードを使いたければ、本体右側にあるUSBポートにキーボードを接続できる。持ち運びの利便性は低下するが、ノートPCのように机の上に置いて文書入力をするという使い方ができる。
画面3 無線LANの設定画面。Windows XPの無線LAN設定と同様の構成なのでわかりやすい。 | 画面4 Windows XP Professionalのデスクトップをスマートディスプレイに表示している。解像度が800×600とちょっと狭いのが気になるところだ。 |
SD10をワイヤレスTVとして使えるのではと期待する人も多いだろう。だが、残念ながら動画の再生はできない。MPEGファイルやストリーミングデータへのリンクをクリックすれば、Media Playerが立ち上がる。すると音声はSD10のスピーカーからきれいに流れてくるのだが、画像はコマ送りになってしまう。これはMedia Playerが動画の再生に使う「DirectX」がリモートデスクトップ環境ではうまく使えないからだ。簡単な問題ではないようだが、できることなら対応してほしい所である。
また、SD10はリモートデスクトップのクライアント機能だけでなく、単体で利用できるアプリケーションを搭載している。それは、Internet Explorer5.5と「Image Viewer V2.1」だ。ただ、IEはあくまでWindows CE用のバージョンであり、Windows用のIEほどの機能はない。例えば、フレームやアニメーションGIFはサポートするが、フラッシュの再生はできない。また、Media Playerを搭載しないので、動画の再生も未対応だ。
Image Viewerは、PCカードスロットに挿したメモリカード内の画像を表示するツールだ。スライドショー機能なども搭載しており、デジカメで撮影した画像を見る際には便利だろう。
ちょっと中途半端な
ハードウェア構成
写真2 SD10の右側面。左から順番に、電源コネクタ、USBコネクタ、スタイラスペン用スロット、電源ボタンとなる。 | 写真3 こちらは左側面。中央にあるのがメモリカード専用のPCカードスロット。右側は音声入出力端子だ。 |
SD10は意外に多くの外部インターフェイスを持っている。PCカードスロットとUSBポート、音声入出力端子、ディスプレイ出力端子だ。通常のサブノートPC程度のインターフェイスを持っている。ところが、各インターフェイスはかなり制限が多い。 まず、PCカードスロットはメモリカード専用で、Image Viewerで画像を見る用途にしか使えない。Windows用のリモートデスクトップクライアントでは、クライアントが搭載するストレージをリモートデスクトップ上で利用できる機能がある。だが、スマートディスプレイではこうした機能は使えないようだ。また、メモリカードからWindows CE用のドライバをインストールしたり、アプリケーションの起動もできない。試しに無線LANカードやSCSIカードを挿してみたが、反応はなかった。
写真4 SD10の上面。パネルをあけるとリセットボタン、設定専用のミニUSBコネクタ、ディスプレイ出力コネクタがある。 |
また、USBポートは2ポートついているが、1つは初期設定時に親機とつなぐためだけのポートだ。そして、もう1つのポートは、キーボードとマウス専用だ。これはハードウェア的な問題ではなく、デバイスドライバがないから使えないということだろう。また、仮にWindows CE対応のUSBデバイスがあっても、ドライバをインストールする方法がないので使うことは難しい。
ディスプレイ出力もSVGA止まり。デスクトップPCやノートPCがXGA以上が当たり前になっている中、SVGAは少々物足りない。外部ディスプレイへの出力はXGA対応でもよかったのではと思う。
こうしたハードウェア構成を見て感じるのは、SD10の位置づけの「あやふやさ」だ。PCカードスロットやディスプレイ出力は、スマートディスプレイに必須の機能ではない。そもそもディスプレイなのだからリモートデスクトップのクライアント機能以外は必要ないと割り切りる考え方もあったはずだ。よけいなインターフェイスを搭載せずに、もう少し軽量で低価格な製品を目指す方向性もあったと思う。
スマートディスプレイマシンの第一弾の製品ということで、最後に気になる点もいろいろと述べてみた。だが、うるさくて場所をとるデスクトップPCから離れて、家庭内で気軽に使えるデバイスというコンセプトは面白いと思う。これからもスマートディスプレイ製品が続々と出てくることを期待したい。
SD10の主なスペック | |
製品名 | SD10(PK-SD10) |
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CPU | Geode SC3200-266MHz(National Semiconductor) |
メモリ | SDRAM 64MB |
HDD | なし |
液晶画面 | 10.4インチTFTタッチパネル式(800×600ドット/6万色表示) |
通信 | IEEE802.11b準拠無線LAN |
スロット | TypeII PCカード(メモリカード用) |
インターフェイス | USB×2、外部RGB、ヘッドフォン出力、マイク入力 |
バッテリ | リチウムイオンタイプ(約2.5時間) |
OS | Windows CE for Smart Diaplays ※本機の利用には、別途Windows XP Professional搭載PCが必要 |
本体サイズ | 290(W)×220(D)×31(H)mm |
重量 | 約1.5kg |