撮影サンプル&総評
実際に撮影してみると、まずは撮影時の演出に驚く。光学ファインダを持たないので撮影は液晶モニタを見ながらということになるが、シャッターボタンを押すと画像の周囲から8枚の絞り羽根がアニメーション表示され、昔ながらのシャッター羽根式のカメラのように「シャッターが切れた」ことが見た目で分かる。起動や終了(沈胴動作)などは約3秒強と、少しもったりとした動きだが、それよりも気になったのはレンズ伸長/沈胴/ズーム動作の際にモーター音がややうるさいことだろう。せっかくのスタイリッシュボディなのに、起動やズーム時に「ジーーーッ」という音がしたのでは興ざめだろう。
ペイント機能そのものよりも、細かなメニュー操作などが使いやすく感じたタッチパネル操作だが、特に便利なのがズーム表示時のドラッグスクロールだ。これはPhotoshopの“手のひらアイコン”と同様に、ペンを画像上にタップしたまま任意の方向に動かせば画像がそれに合わせてスクロールするというものだ。大抵のデジタルカメラのズーム中の表示位置変更操作は十字カーソルだが、思いどおりに画像が動かせるこの機能はタッチパネルの使いやすさを強く実感できた。
撮影サンプル3。ペイント操作の元となった画像。元画像は1200×1600ドット。左側のサンプルには、やや暗部にノイズが目立つものの階調のとびは少なく色合いにも不自然な点はない。 |
撮影サンプル4。元画像は1200×1600ドットで、マクロモードで撮影。絞り値などを個々に設定するマニュアル露出系機能を持たないが、マクロだと背景がそれなりにぼけてくれる。 |
撮影サンプル5。元画像は1200×1600ドット。逆光に近い状況下だが空の青さも残ったまま建物のディテールも表現できた。やや暗部がノイジーとなった。 |
撮影画像に関しても、T10から大幅な改善が見られる。T10は逆光に極端に弱いなどAEが貧弱で、夕方頃の撮影では(補正されずに)強く赤みがかったり(補正しすぎて)青みがかるなどオートホワイトバランスも曖昧という印象だったが、T20ではこのあたりがかなり改善され、複雑な光源の状況でもきちんとした露出と色あいの補正がされている。ノイズにより、暗部などがざらつくところがあるほか、ハイコントラストな絵では白とびしやすい感があるが、200万画素の入門機としては満足できるレベルと言える。
カメラとしての使いやすさは?
T20を使っていて気になったのが、本記事の最初に挙げた縦型か横型かというデザイン上の矛盾や、レンズカバーと電源が連動していないといった操作性の問題である。さらに、スローシャッターモード(最長4秒)や10秒セルフタイマーを搭載しながらも三脚孔が用意されていない点や、グリップ部の反対側にストラップ取り付け金具がある点も不満に感じる。特にストラップ位置に関しては、ニコン「COOLPIX 2500」や松下電器「LUMIX DMC-F7」、リコー「Caprio RR10」についても同様だが、ポケットなどから取り出してストラップに手を通し、カメラを構えるという一連の動作のスムーズにするためには、ストラップはグリップ側にあるべきだ。また、デザイン上のポイントとなっているレンズカバー部をはじめとした鏡面仕上げ部は見た目的にはきれいだが、指紋が目立ちやすいのは少々問題だ。
価格はオープンプライスで、店頭での実売価格は4万円前後。特に「カメラらしくない」ことをアピールするための縦型ボディとストラップ位置といったデザイン上のポイントが、半面カメラとしての使いやすさを減じていると言わざるを得ない。
ただし、本機の最大の特徴であるタッチパネル付き液晶モニタは、ペイント機能のほかにもアイコン&タップ操作やドラッグ操作など、T10では「単に目新しい」だけだったインターフェイスが改良されて使いやすく進化している。デジタルカメラの中で特異な存在ではあるが、さらなる改良とユニークな進化には期待が持てる1台だ。
sora T20(PDR-T20)の主なスペック | |
製品名 | sora T20(PDR-T20) |
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撮像素子 | 1/2.7インチ有効201万(総214万画素)CCD |
レンズ | 光学2倍ズーム、f=5.8~11.6(35mmフィルムカメラ換算38~76mm)、F2.8~4 |
記録媒体 | SDカード(8MB付属) |
記録画素数 | 1600×1200/1024×768/640×480ドット |
液晶モニタ | 1.5インチ低温ポリシリコンTFT(約11.8万画素)、タッチパネル装備 |
インターフェイス | USB、DC入力 |
電源 | 専用リチウムイオン充電池 |
本体サイズ | 54(W)×29.5(D)×108(H)mm |
重量 | 約170g(本体のみ) |
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