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「フリーソフトウェアの目的は多くの人に使われることではない。使う人を自由にすることだ」─Internet Week 2001「リチャードストールマンと話そう」BOFレポート

2001年12月08日 19時41分更新

文● 編集部

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The Free Software Initiative of Japan

Stallman氏は途中から自分の仕事をするために「ここにいる新部さんが代わりに応えてくれるでしょう」として、自分のノートPCに向かって作業を始めてしまった。代役に指名された(独)産業技術情報研究所の新部裕氏は最初に、日本でのフリーソフトウェアNPO「The Free Software Initiative of Japan」(以下、FSIJ)が現在設立に向けて準備を行なっていることなどを紹介した。資料によると、2002年初頭をめどにNPO法人設立申請を行なうとしており、定款などの必要書類を作成しているという。具体的な活動は以下のようになる予定。

  • 「フリーソフトウェア」データベースの構築と公開
  • 「フリーソフトウェア」についての正しい理解を広める活動
  • 「フリーソフトウェア」開発者の国際交流

FSIJの詳細については、現在青山学院大学の井田昌之教授によるメールの窓口が開設されており、参加希望なども受け付けているそうだ。

日本の「フリーソフトウェア」開発問題

引き続き、実際にGNU GPLで開発案件を処理するなどの「フリーソフトウェア」ビジネスについて、参加者間で討論が行なわれた。

ソフトウェア開発とGNU GPLの関係でよく取り上げられる問題として、誰がそのソフトウェアに対してコストを負担するのかというのがある。現在のLinuxディストリビュータなどでは、サポートを提供することで収益を挙げるというモデルが多く行なわれているが、それによって完全に「フリーソフトウェア」開発のみで収入を得ている個人はほとんどいないのが現実だ。「フリーソフトウェア」開発で収入を得る手段としてはほかに、何らかの形で出資を受けることもあり、暗号化ソフトPGPはドイツ政府の支援を受けて開発が進められているという。プロプライエタリなソフトウェアのビジネスモデルと比べて直接的に大きな利益を上げることも難しく、「フリーソフトウェア」ビジネスはまだ試行段階であるようだ。

また、ソフトウェアのライセンスについても、GNU GPLのほかにも、BSDライセンスや完全なパブリックドメイン、既存のプロプライエタリなライセンスなどさまざまあるが、プログラマ、企業、ユーザーにとってもっとも使い安いものをその都度選ぶしかない。ソースコードを公開しないことを前提とするならばBSDライセンスなどのほうがよい場合もあり、プログラマ自身もこれらのライセンスや著作権についての知識が必要になるといった意見もあった。

ソフトウェアのセキュリティについても話題になり、ソースコードが公開されている「フリーソフトウェア」とプロプライエタリなソフトウェアの間でセキュリティに実は大きな差はないこと、違いはセキュリティホールやバグが発見された後の対応が早いか遅いかがという点だという。「フリーソフトウェア」の場合、多くの開発者によるソースレビューが可能で、より容易にバグを発見し修正することができる。

ほかにも、「フリーソフトウェア」概念の普及のために子供達の教育にプログラミングを取り入れるべきだという意見や、ユーザビリティの向上の重要性などの意見が出されていた。

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