スタイリッシュなデザインが人気の「hp jornada 500」シリーズに、最新OS「Pocket PC 2002 Software日本語版」を搭載した新機種が登場した。軽量化とともに、デザインも洗練された「hp jornada 568」は、Palmユーザーや女性からも注目を集めそうな製品だ。
バッテリ寿命とバックアップ機能を重視した実用性の高いPocket PC
日本HPのhp jornada 568は、同社のPocket PC、hp jornada 500シリーズの最新機種だ。従来機種(hp jornada 548)からの主な変更箇所は、
- 重量が約85g(約33%)軽量化され173gになった
- 液晶が従来のバックライト付の透過型STNからフロントライト付の反射型TFTに変更され6万色表示に対応した
- CPUが従来のSH3-133MHzからStrongARM 206MHzに高速化した
- 内蔵メモリが2倍の64MBになった
- Pocket PC 2002 Software日本語版(以下Pocket PC 2002)を搭載した
──という5点。
CFカードスロット部分。オプションのSD/MMCスロット付きバッテリなどは 、裏蓋をとってここに装着する。残念ながらマイクロドライブなどTypeII対応の周辺機器を挿すことはスペース的に不可能。 |
バッテリには、交換可能な脱着式のリチウムポリマ充電池とバックアップバッテリを持つ「ツインバッテリ方式」が採用されており、メインバッテリが切れてもデータが失われることはない。さらに、オプションで「長時間バッテリ」(価格未定)が用意される予定で、標準バッテリと併用すれば最大で42時間の連続使用が可能だ。CFタイプPHS通信カードを使ってメールの送受信やWebブラウズを行う際や、CPUに大きな負荷がかかるWMA/MP3ファイルの再生時にはバッテリの消費量が大幅に増えるため、この長時間バッテリを持っておくと安心だ。
以上はメーカー公称値での話だが、標準バッテリを使いAirH”の32kbpsパケット通信(使用したPHSはTDK製「AirH”Card Petit RH2000」)を行った際のバッテリ寿命に関しても計測してみた。これは、読み込みに時間のかかるWebサイトを2つ作り、60秒おきに自動リロードで両サイトを交互に読み込むもので、常にデータを受信している状態でのバッテリの持ちを計測するものだ。結果は連続通信開始から約92分で充電の警告(バッテリ残量表示は25%)がでたが、その後も安定した通信が行え、2時間を超えたあたり(約130分)でメインバッテリの残量が空になり、バックアップバッテリでの駆動に移行した。途中バッテリの供給電圧が低くなることで、通信が不安定になることはなかった。
なお、今回のテストはフロントライトを最大輝度の状態でオンにし、さらにデータが常にやり取りされているという最も過酷な条件でのテストのため、実際の使用ではさらに通信可能時間が伸びると考えられる。
また、hp jornada 568には従来からある「hpバックアップ」(メモリ内のデータ/アプリを外付けメモリカードにバックアップできるソフト)に加え「hp Safe Store」というバックアップソフトが新たに搭載されている。hp Safe Storeは本体内蔵のフラッシュROM(32MB)のうち、OSや標準アプリが使用しない部分をバックアップ用メモリに使う仕組みとなっており、外付けのメモリカードを用意しなくても重要なソフトやPIMデータのバックアップ(最大2MB)を取ることが可能。バッテリ切れなどでメインメモリ内のデータが消失しても、すぐにデータを復帰できるという安心感がある。データが消失してしまったらPDAはただの箱。PDAを活用すればするほど必須になるバックアップ環境が、標準装備されているのは心強い。
左側面には上下スクロールボタンと録音ボタンがある。実行ボタンに相当するものがないのが残念。ボタンの割り当てを変更し、録音ボタンにスタートメニューを割り当てるなど工夫するとより操作性が上がる。 |
拡張性と操作性にさらなる改善を
ただし、hp jornada 568にはほかのPocket PCに比べスペック的に見劣りする部分もある。SDカードスロットが無く拡張スロットが1つだけである点と、CFカードスロットがTypeI のみにしか対応してない点だ。だが、内蔵メモリが64MBに増えているので、よほど大きなデータを持ち歩かない限り、CFスロットだけでも不自由はしないし、TDK製の「Air H" petit」を使えばデータ通信もできるため、これらはさほど大きな欠点ではないだろう。また、SDカードスロットやPCカードスロットを装備したバッテリもオプションで用意されており、必要になった場合はそれらを購入するという手もある。
もう1つ使用感で気になったのが、本体の左側面に実行ボタンに相当するものがないため、左手だけで操作を完結できない点だ。上下ボタンもクリック感が無く、若干使いにくく感じた。少し中途半端な仕様で残念だ。ボタンの機能はカスタマイズできるので、ユーザーが使い方を工夫する必要があるだろう。
これらいくつかの不満点はあるが、全体的にはデザインと軽さ、性能のバランスがうまくとれた製品であると言えるだろう。専用キーボードなども用意されており、また既存のpocket cameraが使用できるなど、オプションも充実している。6万円台後半という実売価格は高く感じるが、Palm OSを搭載した「CLIE PEG-N750C」に同等の機能を持たせることを考えると(本体+通信アダプタで約6万2000円)、さほど高い買い物ではないだろう。
クレードルとACアダプタ。ACアダプタは比較的小さく、本体に直接挿して充電することも可能なので、出張や旅行する際の持ち歩きには便利だ。 |
製品名 | hp jornada 568 |
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CPU | StrongARM-206MHz |
メモリ | 64MB(SDRAM)+32MB(フラッシュROM) |
表示 | 3.6インチ反射型カラーTFT液晶(240×320ドット/6万色) |
スロット | コンパクトフラッシュ(TypeI)×1 |
電源 | 専用リチウムポリマバッテリ、ボタン電池(CR2032) |
バッテリ駆動時間 | 14時間(非通信時) |
本体サイズ | 76.5(W)×132(D)×17.2(H)mm |
重量 | 173g |