さて、rootでログインすることの危険性はコラムにも書いた。それに、ログイン時に毎回GNOMEから警告メッセージが出るのも煩わしいので、ここで、新規ユーザーを作成しておこう。
まずは、うっとうしい、Gnome Hintsと警告ウィンドウをそれぞれの[閉じる]ボタンをクリックして消しておく。
次に、GNOMEの足跡アイコンをクリックしてメニューを表示させ、[KDEメニュー]―[システム]―[ユーザーマネージャ]を選択しよう。するとユーザー管理ツール「KUser」が起動する(画面5)。
画面5 KUser |
ウィンドウ内には2つのリストが表示されているのがわかるだろう。上側のリストは、このシステムに登録されているユーザー名で、下側のリストは、同じく登録されているグループ名だ。
現在登録されているものは、いずれもシステムが必要とするもので、インストール時に設定されているものだ。このうち、あなたがユーザーとしてログインするのに使うユーザー名はrootぐらいで、あとはシステムが内部で使っていたりする。
グループとは、ユーザー管理上の分類で、ユーザーが所属するグループごとに権限を与えたり、制限したりが可能になる。たとえば、ユーザー名にもグループ名にもrootがある。rootというユーザーはrootグループに属しているのだ。新規ユーザーをrootグループに所属させれば、そのユーザーはrootグループに与えられた権限を獲得する。システムには一般ユーザー用にUsersというグループもすでに用意されているので、ここではそれを使うことにする。
それでは、あなたがこれからふだん使うユーザー名を登録してみよう。KUserのメニューから[ユーザ]―[追加]を選択するか、[ADD]ボタンをクリックしよう。すると、新規ユーザー名入力のための小さなダイアログボックスが表示される(画面6)。
画面6 新規ユーザー名の入力 |
ここに新規ユーザー名を入力して[確認ボタン]をクリックする。すでに、そのユーザー名が存在する場合は、警告メッセージが表示されるので、別のユーザー名を入力する(画面7)。
画面7 すでにユーザー名が使われている場合の警告メッセージ |
新規ユーザー名が受け入れられると、設定用のダイアログボックスが表示され、[ユーザ情報]タブが表示されているはずだ(画面8)。
画面8 ユーザー設定用のダイアログ |
順に設定していこう。[フルネーム]には、ユーザーのフルネームをアルファベットで入力しよう。必須というわけではないが、ユーザー名が本名とかけ離れている場合や、ユーザーが増えてきた場合に、管理上わかりやすい。次に[ログインシェル]だ。シェルとは、テキストベースの端末からLinuxを利用する時の、ユーザーインターフェイスである。ここでは、bashに設定しておこう(bashの使い方については98ページからの「シェルを使おう」を参照)。テキストボックスの右にある▼ボタンをクリックして、一覧から[/bin/bash]を選択する。[ホームディレクトリ]は、そのユーザーが自分用のデータファイルや設定ファイルを置いたり、作業に使うディレクトリのことだ。すでに「/home/ユーザー名」と表示されているはずなので、ここはそのままでOKだ。オフィス1、オフィス2、アドレスは、そのユーザーのオフィス(仕事をしている場所)や、連絡先を記入しておく。fingerコマンドなどで参照できるが、必須ではないのでここでは空欄でもかまわない。[ホームディレクトリを作成]をチェックすると、そのユーザー用のホームディレクトリが[ホームディレクトリ]で指定した場所に自動的に作成される。ここではチェックしておこう。[スケルトンをコピー]をチェックしておくと、各種設定ファイルの雛形がホームディレクトリに自動的にコピーされ、シェルやGNOME等の基本的な利用環境が整う。ここもチェックしておこう。[ユーザプライベートグループ]は、そのユーザーをほかのグループに所属させるのではなく、そのユーザー専用のグループに所属させるためのものだ。ここではチェックを外しておこう(画面9)。
画面9 入力後のKUserの[ユーザ情報]パネル |
入力が済んだら[パスワードを設定]ボタンをクリックして、このユーザーのパスワードを設定する。インストール時にrootのパスワードを登録したのと同じ要領で、確認のため2つのテキストボックスに同じパスワードを入力し、[確認]ボタンをクリックしよう(画面10)。
画面10 パスワードの設定 |
[ユーザ情報]の入力が済んだら、[グループ]タブをクリックする。そして[第一のグループ]テキストボックスの▼ボタンをクリックして、一覧からusersを選択する(画面11)。そうしたら[OK]ボタンをクリックしてダイアログボックスを閉じる。
画面11 グループの設定 |
KUserの上側のリストに登録したユーザー名があるのを確認したら、メニューから[ファイル]―[終了]を選択する。変更を保存するかどうか問い合わせてくるので、[保存]をクリックする。保存しないと作成したユーザーが登録されないので注意しよう。
これで新規ユーザーの登録ができた。ログアウトして、登録したユーザー名でログインし直してみよう。
Column:rootと一般ユーザー
インストール時に必ず作られるrootというユーザーは、システム管理用の特別なユーザーで、システムの重要な部分の変更や、ユーザーの管理など、一般ユーザーには禁じられている操作も行えるのだ。rootはLinuxシステムの中で全権を掌握しているといってもよい万能のユーザーなのである。これは、逆にいえば、rootとしてログインしていると、ちょっと間違えた操作をしただけで、システムに致命的なダメージを与えかねないということだ。ある意味危険なユーザーでもあるのだ。
そのため、たとえあなたが実際にシステムを管理する立場にあるとしても、Linuxのアプリケーションを利用するだけならば、ふだんは一般ユーザーとしてログインしよう。
あなたがrootとしてログインするのは、システムのメンテナンスや復旧をする、アプリケーションをインストール/アンインストールする、ユーザーを追加/削除する、など、システム管理上の実作業時のみにするよう心掛けたい。
ところで、Windows 95/98では、こうしたユーザーによる権限の切り分けがないため、ファイルを削除する方法さえ知ってれば、誰でも簡単にWindowsシステムに致命傷を与えられる。あなたが知らないうちに、誰かがちょっと間違っただけで、システムが起動しなくなってしまう可能性があるのだ。だが、Linuxではそうしたことはめったに起きない。たとえ初心者ユーザーがいたとしても、システムに支障をきたすようなことをする権限を与えはしないからだ。
最近では、家族がそれぞれのメールアドレスを持っていることも珍しくはないと聞く。家族内では、コンピュータスキルのバラつきがあるかもしれない。こういう時にも、システム管理者と一般ユーザーに分かれていることが意味を持ってくる。
家族みんなで1台のPCを使う場合などには、WindowsよりもLinuxのほうが都合がいいこともあるのだ。