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マザーボードのオーバークロック機能を徹底調査する(その1)

2001年05月10日 22時04分更新

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ASUSTeK A7A266(ボードリビジョンV1.03)

 まずは、A7A266を観察してみた。最大の特徴は、なんと言ってもDDR SDRAMだけでなく従来のSDRAMもサポートしている点だろう。これなら、DDR SDRAMメモリの動向が気になる方にも「つなぎのマザーボード」として悪くはない。オーバークロック機能としては、BIOSのバージョンを1003Bに更新すると最高166MHzまで操作範囲が拡大する。更にBIOSセットアップにおいてFSB設定クロックを1MHzステップでセットできる機能がありがたい。
 ただ、残念なことにCPUの倍率は、買ってきたままだと操作できない。倍率を操作する回路パターンがあるにも関わらず、DIPスイッチが実装されていないのだ。もし、ハンダごてを扱える方なら、改造を施せば済む話しだが、「そこまでは無理」と言う向きにはこちらの記事で紹介されているゲタ“PK-OCK7/EV6”で対処せざるを得ない。



 PK-OCK7/EV6の使用方法は、いたって簡単だ。写真のようにマザーボードのCPUソケットへPK-OCK7/EV6を装着しておき、メーカーが指定したパラメーター表に従って、DIPスイッチを希望する倍率にセットする。あとは、通常通りにCPUとCPUクーラーを取りつけて準備完了だ。なお、実際にA7A266に組み込んで倍率操作が反映されるのか実験してみたところ、L1クローズのAthlon1.2GHzは、筆者が指定した倍率で起動してきた。ここでふと疑問が浮かんだ(どうも最近は疑り深い筆者である)。厳密に言えばチップセットとCPUコアの距離がボードメーカーの設計から遠くなるわけで、高クロック動作時に何らかの影響が出ないのか? と気になったのだ。この点については、単純に起動テストを試した限りだが、FSB設定クロック148MHzであっても無難に動作した。どうやら、筆者の取り越し苦労に過ぎなかったようである。
 ただ、難があるとするならば、倍率を変更するとなるとCPUを取り外す必要性があるので面倒と言えば面倒である。とりあえず、倍率が決まってしまえば頻繁に変更することもないのでCPUクーラーの脱着時にコアを破壊しないよう注意して作業すればいいだろう。それと(まだあるのか? と言われそうだが)重量級のCPUクーラーを装着した場合でタワー型のケースに組み込むならば、マザーボードのCPUソケットからユニットごと外れ落ちないか少し気がかりな筆者であった。



DIPスイッチを装着してみた

 一方、PK-OCK7/EV6に頼らずA7A266に改造を施して倍率を操作する方法を調べてみた。
 まず、ボード上、AGPスロット脇にはCPUの倍率操作に関する表が印刷されており、SW6~SW10で設定するように印されている(SW5はメモリーの指定)。ところがFSB設定クロックを操作するDIPスイッチ(SW1~SW4)の横には、スルーホールとパターンがデザインされているだけで肝心のDIPスイッチが実装されていない。そこで、その回路を解析すると、SW6~SW10に該当するスルーホールの片側全てがGNDに落ちており、反対側のスルーホールからは“AS99127F”と言うカスタムチップに向けてラインが走っている。次にCPUソケットから倍率操作に関連する信号ライン(FID3:0と内緒の裏FID3:0)を追ってみると、これまた全て“AS99127F”に接続されていた。“AS99127F”の詳細は不明だが「もしかしてスイッチだけ?」と思えるデザインである。そこで、DIPスイッチ用のスルーホールに埋まったハンダを吸い取って写真のようにICソケットをハンダづけしDIPスイッチを装着してみた。早速、ボード上の設定表にしたがって特定の倍率をセット。なお、SW10は、ONにセットすることで指定した倍率設定が有効になる。CPUやメモリなどのデバイスを組み付けて起動させてみると、あっけなく指定した倍率で起動してきた。試しに他の倍率設定を操作してみたところ難なく変更が可能であった。
 過去これまでに同社から発売された製品でA7M266やA7V-WAなどは、CPUの倍率操作用回路がもともとパターン化されているものの実装パーツが省かれていた経歴がある。これらの倍率操作回路改造には、DIPスイッチの追加実装だけでなくチップ抵抗の交換やICなどの追加実装が必須だったが、A7A266の場合は、DIPスイッチの追加実装のみで倍率操作が可能になった。もし、FSB設定クロック設定用の4連DIPスイッチを摘出できるスキルがあるなら、10連のDIPスイッチを別途用意して交換すると見た目もスマートに収まるだろう。



マニュアルに説明のないジャンパーポスト

 それともう一点、マニュアルに記述されていないジャンパーポストを見つけた。ちょうどAGPスロットからボタン電池に向かう延長線上のAGPスロット寄りに位置するJP10と印された3ピンのポストだ。デフォルトは、1-2ピンにキャップしてあり、テスターで回路を追うとJP10-1ピンはR159B(素子実装無し)の片側パッド、JP10-2ピンはU25-6ピン(National Semiconductor製LMV358M)に直結、そしてJP10-3ピンはR159A(243KΩ)を経てGNDに落ちている。どうやら回路的にU25-6ピンのパラメータをR159Aの抵抗で操作できるようだ。この手は、電圧の変更によく使われていることから「もしかしてDDR電圧が動くのか?」と期待できた。
 通電後、その予測は見事に的中!ジャンパキャップを2-3ピンに移動するとDDRメモリに供給されている電圧(DDRメモリスロットの7ピン)が明らかに変化した。メモリを実装しない状態での実測値は、JP10の1-2ピンにキャップを装着(回路的にキャップなしでも同じ)すると2.50Vであり2-3ピンに変更すれば2.60Vであった。
 余談ではあるが、JP10の1ピンから延長されたR159Bの空きパッド間に300KΩほどの半固定抵抗を接続してJP10の1-2ピンにジャンパキャップとし抵抗値を調節すれば、自在にDDR電圧を操れるだろう(ただし筆者自身が試していないので数値など参考程度にしてほしい)。なお、以後のテストにおいては、JP10の2-3ピンにキャップを移動してDDR電圧を2.60Vに上昇させている。また、倍率変更の必要性が生じた場合には、ボード上に増設したDIPスイッチから設定操作した。さらにノースブリッジに取付られたヒートシンクは、ファン付のチップセットクーラーに変更して備えた。



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