ここ数年、インターネットは爆発的に普及している。電話が生活に密着したインフラであるのと同じように、インターネット抜きの生活やビジネスは考えられなくなっている。
現在のインターネットでは、20年前に設計(1981年のRFC791)されたプロトコルであるIPv4(Internet Protocol version 4)が使われている。IPv4は非常によく設計されたプロトコルであり、これによりインターネットが広く一般へ普及したが、この普及の速さが逆にIPv4の限界となってきている。
IPv4で使えるIPアドレスは、32bitで表現されている。その数は約43億個になるが、今のペースで使い続けると後数年もすればすべてのアドレスを使い切るところまで来てしまった。現在、約30%のIPアドレスが未割り当てで残っていると言われているが、それでもアドレス枯渇問題が叫ばれはじめた当初は、少なくとも2010年ごろまでは延命すると考えられていた。もちろん、枯渇を防ぐためにプライベートアドレスの利用などの回避策はとられてきた。しかし、常時接続環境の整備や、データセンターの普及などといったことによるIPアドレス消費量を考えると、もう少し早い時期にアドレスが枯渇するという意見もある。IPv6の実験サービスを提供しているNTTコミュニケーションズの荒野高志氏によると「このままの状況でいくと、2006年には現在のIPアドレスは枯渇するという計算になる」という。
IPv6(Internet Protocol version 6)は、このアドレス枯渇を根本的に解消するため、事実上無制限にIPアドレス数を拡張し、ノード間でエンドツーエンドの通信を可能にするという、インターネット創世記に目指した形態を実現するものだ(図)。IPv6ではIPアドレスを128bitで表現することにより、3.4×10の38乗(IPv4アドレスの7.9×10の28乗倍)の、文字どおり天文学的な数のアドレス数を確保している。なおバージョン番号が6である理由は、バージョン5がST-II(Internet Stream Protocol Version 2)という別のプロトコル(RFC1190および1819)に割り当てられていたからである。
本来、インターネットでIPアドレスが足りなくなるという議論は1992年ごろからあった。IETF(Internet Engineering Task Force)が1994年に次世代インターネットプロトコルとしてIPv6を策定し、RFC2460が1998年12月に出ている。これと平行して、1995年に、ルーティングテーブルの増大を抑え、IPアドレス空間を効率的に利用するためのCIDR(Classless InterDomain Routing)を導入したり、NATを普及させるなどの延命措置が取られてきた。しかしインターネットが予想を上回るペースで発展したため、これら延命措置による拡張も限界に達している。さらに、携帯電話や情報家電、自動車などといった新たな端末がインターネットに接続されようとしており、21世紀に入り端末の数が激増することが必至である。今まさに、IPv6を導入するべきときが来たのである。