同社のインクジェットプリンタのフラグシップモデルである「BJ F870」は、従来機であるF850/F860を継承しつつも細かな改良が施され、印刷速度や印刷品質を向上している。
2400×1200dpiの解像度や全色独立インクタンク&パーマネントヘッド採用の基本構成は従来機と共通だが、ヘッドの駆動周波数を1.5倍にしたことで印刷速度を従来機(F850/F860)の1.5倍としている。さらに紙送りの制御機構の改良により、給排紙時間を短縮するとともに用紙搬送音も低減をしている。具体的には、紙送りを従来機の1/4ステップにすることで紙送りの音が断続した大きな音から連続した小さな音に変わるというもの。スペック上では騒音レベル自体は従来機同様の37dbだが、体感的には確かに耳障りな感じが減少している。
解像度など印刷機構自体はF850/F860とほぼ同等で、4plのインクドロップや1/6濃度のフォトインク、印刷解像度などの仕様は同じ。ただし、より高い発色性と耐光性を持つインクが採用され、色合いが向上したほか耐光性も向上している。同社によれば、専用紙との組み合わせにより20年の耐光性(ガラスの下での保存)を持つという。
このほか、プリンタドライバにも手が入れられ、従来は自動的にガンマ補正をかける程度であったのに対し、新たに色調や露出、彩度などについても自動補正をかける「オートフォトパーフェクト」という機能が追加された。さらに、濃淡インク併用処理の改善により中間調部分の粒状感の減少が図られたほか、ガンマ補正値の変更で全体的に鮮やかになるようにチューンされている。また、ドラフトモードにも改良が図られている。従来ではドラフトモードで印刷するとノーマルモードに比べて文字の印刷が薄く、画像にかんしては間引きされた解像度の低いものになってしまい読みづらい印刷結果になっていたが、新ドライバではドラフトモードそのもの画像情報量が強化(従来比4倍)されたほか文字や図の処理も読みやすさの向上が図られており、普段からドラフトモードを使用していても差し支えない程度の印刷結果が得られるようになった。
今回、新たにミシン目付きの専用紙が提供され、A4用紙の4辺を切りとって六つ切りサイズに、もしくはA4用紙を4分割するふちなしの印刷結果が得られるようになった。 同社の6色機のフラグシップだけあって製品の完成度は高いプリンタだ。この冬の同社/他社の新製品群に比べればハードウェアに大きな変更がないため地味な印象を受けるものの、画質/速度ともに確実に性能が向上している。従来機から継承するスキャナカートリッジ(オプション:1万円)を装着しての600dpiスキャンなど、多彩な楽しみ方ができる製品と言えるだろう。姉妹機として、F870にPCカードスロットを装備し、PCなしでのデジタルカメラ画像の印刷を行える「BJ F870PD」(リンク)もラインナップに加わっている。
F870のインクシステム。キャリッジにセットされたパーマネントヘッドには6個のインクタンクが並ぶ。 |
F870のインクカートリッジの裏面。印刷ヘッド(画面上の部分)にインクノズルが並んでいるのが分かる。 |
F870とほぼ同一の印刷機能を持ち、パソコンなしでデジタルカメラ画像などを印刷できる「BJ F870PD」。 |
印刷サンプル。ハガキサイズに印刷したものからフラットベットスキャナにて400dpiでスキャンした結果。元画像サイズは82×82mm。クリックすると拡大画像(スキャンしたままの画像データ、963KB)が表示されます。 |
※ベンチマークテスト | |||
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モノクロ文書(A4、MicrosoftWord、10Page) | ノーマル(文書/標準) | 4分58秒 | |
ドラフト(速い) | 3分31秒 | ||
カラー画像(ハガキ) | フォト | 1分09秒 |