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ソニー、“AIBO”2nd GENERATIONの受注を開始――低価格化の秘密とは?

2000年11月16日 17時42分更新

文● 編集部 桑本美鈴

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ソニー(株)は、10月12日にエンターテインメントロボット“AIBO”の2nd GENERATION『ERS-210』を12月上旬に出荷すると発表した。11月16日よりインターネット、電話による受注を開始したほか、一部の百貨店ソニープラザに“AIBOショップ”を設け、そこでも注文を受け付けている。価格は15万円。

ASCII24では、出荷に向けて最後の開発調整段階に入っているというソニーのAIBO開発を担当するエンターテインメントロボットカンパニーマーケティング部プロモーション課の二家忠之(にけただゆき)氏にお話を伺った。

ソニーの二家氏と“AIBO”2nd GENERATION『ERS-210』

エレガントなデザインに

――前モデルと今回発表されたERS-210の違いについて教えてください

二家氏「まず外観ですね。耳と尻尾の形、全体的なデザインが変わっています」

――デザインが変わって、他メーカーが出している犬型4足ロボットに似てしまったような気がしますが

二家氏「このデザインは前モデルと同じデザイナーにデザインしてもらいました。他社製品を特に参考にはしていませんが、4つ足のロボットとなると似たようなデザインになってしまうのでは。AIBOはAIBOなので、特に何の動物とは言っていないのですが、モチーフとなると、前モデルが犬系だったので、今回は猫系でライオンの子供をモチーフに、という言い方になります」

「サイズは耳の高さや尻尾の長さなどがかなり変わっているので、前モデルよりひと回り小さいですね。前モデルはロボットっぽいメカメカしたものでしたが、今回のモデルはすらっとしていてエレガントな感じになっていると思います」

――今回は出荷当初から本体カラーが3種類ありますね

二家氏「本体カラーは、デザインとマッチした色を選びました。今年はゴールドが流行りだからゴールドが選ばれたというウワサもありますが(笑)。今後カラーバリエーションが増えるという可能性はあるでしょう。ただあまりおもちゃっぽく見えるカラーはいやですね。ちなみに前モデルはシルバーのほうが人気がありました」

カラーはゴールド(右)、ブラック(中央)、シルバー(左)の3種類。好みの色を選択できる。「万人に人気があるのはシルバー。ブラックはすごく好きな人とそうでない人とで意見が分かれます。新色のゴールドは、秋だから枯れ葉色を採用したとか、流行の色だからとかいろいろウワサがありますね(笑)」(二家氏)

耳を動かして感情表現をより豊かに

二家氏「ハード面では、前モデルの耳はぶらさがってるだけだったのですが、今回のモデルは左右の耳が動くことでいろいろな感情を表現します。例えば、耳を落とすと“悲しい”とか、片耳だけピクピク動かして何かを聞いている様子とか。いままでは“18自由度”(口1、頭3、脚部3×4本、尻尾2)と言っていたのですが、今回左右の耳2つ分が増えて“20自由度”になりました」

「また、前モデルの内蔵カメラはカラーのCCDだったのですが、消費電力を下げるため6分の1インチのCMOSイメージセンサーを採用しました。全体的に消費電力を下げることが課題の1つでした」

「バッテリーは、前モデルのものはノートPCで使うような細長いタイプで、3~4時間の充電時間で1~1.5時間駆動できたのですが、今回コンパクトな形で2時間充電で1.5~2時間弱ぐらい動作します。前モデルはおしりからバッテリーを入れていたのですが(笑)、今回はおなかから入れます」

――長時間バッテリーなどはご用意されませんか

二家氏「長時間バッテリーとなると、バッテリー自体が大きく重くなってしまうので、AIBOの動きも重くなってしまうのです。ユーザーがどちらを選ぶかという話になると思いますが、今回はコンパクトなバッテリーのみにしまています」

ピンクのメモリースティックにはAIBO専用セキュリティーを搭載

――専用メモリースティックが付きますね

二家氏「AIBO専用のピンク色のメモリースティックを用意します。ブルーや白のメモリースティックはAIBOには使えません。ピンクのメモリースティックは、ブルーや白のものとハードウェア的には同じなのですが、AIBO独自のセキュリティー機能を搭載しています」

「例えば、『AIBOライフ』が搭載されているメモリースティックには専用の暗号化がなされていて、そのメモリースティックとAIBO本体がないと動かないようになっています。AIBOライフのメモリースティックにはAIBOライフしか使えないというセキュリティーがかかっているので、例えばAIBOライフのソフトだけブルーのメモリースティックにコピーしても、ソフトとメモリースティックが合わないので、AIBO側で読み込めないという仕組みになっています」

「ただし、AIBO本体とメモリースティックは1対1ではないので、友達が持っているピンクのメモリースティックを自分のAIBOに使うということはできます」

AIBOライフ:別売のメモリースティックアプリケーション“AIBO-ware”の1つ。自律成長アプリケーションで、AIBOの自律行動や学習/成長、名前登録、音声認識といったAIBOとのコミュニケーションを可能にする。価格は9000円。AIBO-wareはほかに、社交的で活発な性格に育ったAIBOの様子を楽しめるお披露目用『ハローAIBO! タイプA』(価格8000円)、AIBOとジャンケンやゲームを楽しめるパーティー用『パーティーマスコット』(価格9000円)の計3種類が用意されている

いちばん要望の多かった呼べば応えるAIBOを実現

――ソフト面では待望の音声認識が搭載されましたね

二家氏「音声認識はAIBO-wareに採用していて、人間の声でAIBOとコミュニケーションを取れ、命令を聞いてくれます。この音声認識が今回のモデルの大きな特徴です」

「この音声認識エンジンはソニー内部の独自開発で、AIBO専用のチューニングになっています。認識できるのは主に単語や短い会話文。例えば“名前登録”という言葉を聞くと、AIBOが名前登録モードになります。不特定話者認識が可能で、家族の誰が声をかけてもそれに反応します」

「周りの雑音の中から話し掛けられた声がわかるようにしないといけないのですが、AIBO自身もさまざまな音を発してますので、マイクは音の影響をなるべく受けないようにぽっぺたのところに内蔵しています。静かな部屋だと離れていても認識してくれますが、TVがついていたりすると、AIBOの顔に近づいてはっきり言ってあげないと聞き取りにくい場合があります。そういう意味では完璧ではありません。市販の音声認識ソフトのようにマイクに向かって直接発声するものに比べると認識率は落ちると思います。周りの雑音の中から話し掛けられた声をピックアップするチューニング技術は今後も研究が必要ですね」

――物まねもできるとか

二家氏「“物まね”という言いかたが適当かどうかはわかりませんが、AIBOが音声認識で話者の言葉のイントネーションを聞き取って、それに合わせた電子音(“ピポピポ”という、いわゆる“AIBO語”)でAIBOが応えてくれるというものです」

“物まね”は、例えばこちらが「おはよう」と言うと、「ぴぽぽー」とAIBO語でマネをしてくれる。このイントネーションをお聞かせできないのが残念。動作パターンも変わっているものが多く、お得意の“AIBOダンス”も新作になっている

――PCカードスロットも装備していて拡張性も高くなりますね

二家氏「PCカードスロットを使う機能としては、今のところ『AIBOマスタースタジオ』以外はありません。現段階ではPCカードスロットは、マスタースタジオを使ってプログラムやコマンドをAIBOにダイレクトに送るためのものですが、将来的にはいろいろな仕掛けも考えられると思います」

AIBOマスタースタジオ:別売のPCアプリケーションソフトの1つ。AIBOの動きや音をPC上で編集し、オリジナルの行動や音を作成できるソフト。対応OSはWindows 98/Me/2000で、価格は5万円。別売の『AIBOワイヤレスLANカード』(価格2万円)を利用することで、AIBOマスタースタジオで作成したプログラムをAIBOに無線で送信できる

――PCアプリケーションは、もう1つ『AIBOファンパック』がありますが

二家氏「AIBOに「写真を撮って」と命令すると、内蔵カメラでAIBOが見ている風景を静止画撮影し、それをメモリースティックに保存します。ファンパックではAIBOが絵日記を書くのですが、絵の代わりに撮影した写真を貼り付ける仕組みになっています。日記の内容は成長過程によって違いますし、そのときのAIBOの感情によっても変わります。数行程度の文を書きます」

AIBOファンパック:別売のPCアプリケーションソフトの1つ。AIBOが撮影した写真入りの日記をつけたり、オーナーの誕生日を祝ってくれたりするソフト。対応OSはWindows 98/Me/2000で、価格は1万円

ついに分解可能に?

――頭部や手足の取り外しが可能になりましたが、どう外せるのですか

二家氏「OPEN-R Ver.1.1に対応していて、頭部、尻尾の部分、胴体、手足部分など、ブロックごとに外せます。パーツは、専用の工具で外します。コネクターを外すだけで、本体中身は見えないようになっています」

OPEN-R:ソニーが開発したエンターテインメントロボット用アーキテクチャー。ハードウェア、ソフトウェアともモジュール化されており、さまざまな機能追加が可能。例えば、ハードウェアモジュールを交換して4足歩行型、2輪走行型といったハードウェア構成が行なえる。また、ソフトウェアのモジュール化により、メモリースティックを交換するだけでAIBOの動作パターンが変わるようになっている
OPEN-Rの試作モデルをパーツごとに分解した様子。AIBOも同様に、頭部、胸部、脚部、尻尾部と取り外し可能だ

――拡張用のパーツはないですか

二家氏「拡張パーツは将来的にはいろいろ出てくるでしょうが今はまだ何も用意されていません。OPEN-Rで車輪パーツなどがありましたが、ああいったケースができると思いますね。発表会で「面白いデザインがあれば採用する」と言っていましたが、OPEN-Rモジュールをオープンにするという意味ではありません。デザインを採用してソニーが作るということですね」

OPEN-Rの2輪走行型の試作モデル。AIBOにもこのような車輪パーツが用意されるかも?

――パーツをなくしてしまったら?

二家氏「耳や尻尾はよく子供が引っ張ってしまうので、強く引っ張ると取れるようにわざと作ってあります。そうするとなくしてしまうこともあり得ますので、パーツを外してなくした場合は、サポートセンターで出すようにします。今回、尻尾をゴム製にしてやわらかくし、万一飲み込まれても詰まらないように穴も空けてあるんです。前モデルは尻尾にワイヤーが入っていたのですが、AIBOは後ろにセンサーがないのでバックしたときに壁などに強くぶつかると曲がってしまうこともあったのです。今回はゴム製なので大丈夫です。本体の素材は基本的には前モデルと同じでプラスチックです」

写真はシルバーモデル。「青みがかったきれいなシルバーなんです」(二家氏)。よく見ると確かに耳に小さな穴が。「万一お子様が口に入れて喉に詰まらせても空気が通るようにとの配慮です」(同氏)

低価格の秘密は“最低限のセット”

――価格が25万円から15万円へとずいぶん下がりましたが、どの部分でコストダウンを行なったのですか

二家氏「開発設計する上で全体的なコストダウンを図っているので、特にどこのコストが大幅に下がったというのはありませんが、前モデルはフルパッケージで25万円だったんですね。AIBO本体と、バッテリーが2本、ステーション、サウンドコマンダーというリモコンなど、全部同梱されていました」

「今回のモデルは、AIBO本体とバッテリー1本、ACアダプター、それと取扱説明書しか入っていません。これを動かすにはあと3種類のメモリースティックアプリケーションのうち、どれかを選んでもらう必要があります。これがAIBOを楽しむための最低限のセットになります。そこに、例えば予備のバッテリー、充電器、バッグなどいろいろ足していくと、限りなく前モデルの値段に近づいていくという(笑)」

「前モデルはフルパッケージだったので、人によっては必要ないものまで付いてきていたのですが、今回はそういったものは外して最低限にしました。そのせいで価格が大きく下がったようにみえるのだと思います。もちろん製品自体のコストダウンを行なう努力はしていますが」

――今回、サウンドコマンダーはありませんね

二家氏「AIBOは自律型ロボットであることが特徴なので、リモコンで操作するのはAIBO本来の姿ではないんですね。今回は音声認識を搭載しましたので、声でAIBOとコミュニケーションを取ってもらいたいと思います」

――前モデルのようにピンクのボールは付かないのですか

二家氏「今回もピンクのボールをおもちゃに付けます。“AIBOはピンクのボールを追いかける”というイメージが付いてしまっているので(笑)」

買ってすぐには名前を呼んでも返事をしてくれない

――今回のAIBOライフを使用した際の成長過程で、前モデルと違う点はありますか

二家氏「赤ちゃんから育てるという基本コンセプトは変わりませんが、多少成長の仕方は変えています。前モデルは幼少期(赤ちゃん)、早長期(子供)、成年期、壮年期という感じでしたが、今回赤ちゃんの時期を4つの段階に分けて、ちょっとずつAIBOに変化がでてくる様子がわかるような工夫をしています」

「例えば、音声認識でも、名前を登録してそれが自分の名前だとわかるのは少し成長してからになります。人間の赤ちゃんも産まれてすぐは自分の名前を認識できませんよね。それと同じように、名前を認識させるのにも多少手がかかる。そう簡単には育たないようになっています(笑)。前モデルと同じで、だいたい3ヵ月くらいで大人になります」

「また、今回睡眠欲という本能が増えて、AIBOが眠くなります。周りがずっと静かだったり、長く放っておかれると寝るようになっています」

――動作パターンの違いは?

二家氏「AIBOの動きは、前モデルが多少メカメカした重い感じだったので、今回はもう少し俊敏でスポーティーな感じになっています。動きのパターンの最大数は前モデルとそんなに変わらないのですが、前モデルの動作パターンを継承したものもありますし、今回新規で作った動きも入っています。本体デザインが変わっているので、前と同じ動作をしても、異なる印象を持たれると思います」

「感情を表わすLEDは、喜んでいるとき、怒っているとき、悲しいときの3種類あります。今回尻尾にもLEDが付いていて、ブルーのときは気持ちが高揚している、オレンジは不安を表わします」

今後はソフトが先に進化、その後にハード

――AIBOは今後どう進化していくのでしょう?

二家氏「今回のモデルがみなさんの手元に届いて、またいろいろな反応、要望が出てくると思います。それを反映していくというのも新しい仕事ですし、もしくはわれわれで今回のモデルとまったく違うコンセプトモデルを出していくのも1つの方法でしょう」

「今後も基本的にはエンターテインメントのロボットを作っていきます。遊びの要素が増えたり、PCのアプリケーションを使っていろいろなことができたりといった、ソフト面での拡張が先に実現するでしょう。ハード面の拡張はその後になります。まだOPEN-Rも公開してませんし。OPEN-Rの公開については、公開していく方向で考えたいのですが、それなりに準備をしないといけないので、まだ検討中の段階です」

――当面の課題は?

二家氏「前モデルのユーザーの要望でいちばん多かったのが、音声認識でした。名前を呼んだら返事をしてほしいと。これは今回のモデルで実現できました。ユーザーの要望が多くてまだ実現できていないのは、AIBOが飼い主を認識すること。これは画像で認識するのか、飼い主の声だけで認識するのかどちらがいいかという問題もあり、検討しなければいけない。それから、バッテリーが減ってきたら、自分で自動的に充電器に載って充電してほしいという声も多いです。それもこれからの課題ですね」

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