日本IDT(株)は12日、米シスコシステムズ社のマルチレイヤースイッチ製品“Catalystシリーズ”に向けて、『IP(Internet Protocol) co-processor』を出荷開始したと発表した。この製品は米IDT社とシスコの共同開発によるもので、シスコのみに出荷される。
IP co-processorは、IPパケットのヘッダー部分を解析してパケットの送り先を識別する役割を果たす。パケットは送り先識別後、送り先へのルート情報であるルーティングテーブルに従って送り出される。従来は、パケット送り先の識別からルーティングテーブルの参照までをマイクロプロセッサーとソフトウェアによって行なっていた。
IDTによると、この送り先の識別には多数の条件分岐検索が必要で、従来のマイクロプロセッサーとソフトウェアを使ったシーケンシャル検索では、パケットルートの決定までに、プロセッサーのクロック数で数百クロックがかかっていたという。これに対して、今回開発したIP co-processorでは、条件検索をハードウェアロジックによるパラレル検索で行ない、送りルート決定まで10クロック以下と、従来の数十倍の処理速度になったという。
日本IDTテクニカルマーケティングマネージャの神山渡氏 |
このIP co-processorの最高動作クロックは166MHzで、毎秒8300万パケットの識別が可能。スイッチ製品と直接比較はできないが、シスコのマルチプロトコルスイッチの上位モデル『Catalyst 8540』では、毎秒2400万パケット(40Gbps)のスループットを備えている。シスコの特許など知的財産を使っている関係で、シスコ以外には出荷できない。このためIDTではシスコの特許を使用しない、汎用のIP co-processorも開発中で、2001年中旬に出荷予定としている。なお、IP co-processorがどのCatalyst製品に搭載されているかは明らかにされなかった。
x86ビジネスへの再参入はない
日本IDT代表取締役社長の鎌田純一氏 |
日本IDT代表取締役社長の鎌田純一氏は、発表会の挨拶でx86互換プロセッサー事業から撤退したことに触れ、「撤退後、(米本社の)経営陣を刷新して、通信インフラ関連製品に資本を集中しており、売り上げは順調に伸びている。この動きは株式市場からも好意的にとられており、この1年間で株価は8倍になった」と、通信製品事業への選択と集中が正しかったことをアピールした。さらに、「VIAおよびインテルとクロスライセンスを結んでいることから、一部で再参入するのではという噂があるようだが、これは半導体製品製造に必要な特許を使用するためで、x86ビジネスに再参入する予定は全くない」と噂を否定した。