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【INTERVIEW】新生コンパックは、“小さなIBM”ではない~吉田雅彦コンパックコンピュータ営業企画統括本部長に訊く~

1998年11月10日 00時00分更新

文● 報道局 佐藤和彦

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 10月1日に、日本ディジタル・イクイップメント(株)と合併したコンパックコンピュータ(株)。いままでのコンパックには無かった新しい組織“営業企画統括本部”の吉田雅彦本部長に、新生コンパックの方向性を伺った。

吉田雅彦コンパックコンピュータ(株)営業企画統括本部本部長吉田雅彦コンパックコンピュータ(株)営業企画統括本部本部長



●“小さなIBM”とは、言われたくない。

----旧日本DEC(日本ディジタル・イクイップメント(株))との合併に関して、いろいろとマスコミに書かれていますが、その中で、納得できない論調はありましたか。

吉田「ワールドワイドでみても、日本だけでみても、概ね好意的だったと思います。しかし、納得できない論調が2つありました。1つは、“新生コンパックは、小さなIBMにすぎない”というもの。もう1つは、“コンパック、タンデム、DECと3つの会社が一緒になったものの、トータルなソリューションをうまく提供できないのではないか”というものです」

----“小さなIBM”という認識は間違っていますか。

吉田「いまのIBMは、売り上げに占めるハードの比率は下がり、売り上げの半分以上は、サービスやサポートで占められています。私は、旧タンデム出身で30年間営業の現場を歩いてきました。かつてのIBMは、日本アイ・ビー・エム(株)を含めてですが、常に新しい技術やビジョンを示して、コンピューター業界全体をリードしてきました。圧倒的な存在感があったと思います。それに比べると、ここ10年間のIBMは、そういった存在感が希薄になっています。新しいテクノロジーをマーケットにアピールするよりも、過去にハードを売ったユーザーを抱え込んで、サービスを提供するような方向へとシフトしています」

「新生コンパックは、旧タンデムの超並列コンピューター、旧DECのAlphaプロセッサー、そして、グローバルスタンダードを体現するコンパックの3つが統合された会社です。新生コンパックは現在では、かつてのIBMのように常に新しいテクノロジーのメッセージを発し続けられる唯一のコンピューターメーカーである、と自負しています。今のIBMの小型版という見方は、的確でないと思います」

----トータルなソリューションをうまく提供できないのではないか、という批判については、いかがですか。

吉田「米コンパックは、9月に米フロリダ州で、アナリスト向けのカンファレンスを開催しました。そこでは、新しいコンパックの方向性が示されましたが、その中でもっとも重要なものとしてあげられたのが“Interoperability(相互接続性)”です。3つの会社が提供してきた異なるソリューションをスムーズに統合することで、合併の相乗効果がえられるわけです。この“Interoperability”を実現する自信があったからこそ、米国本社は合併に踏み切ったのだと思っています」

●新しい組織“営業企画統括本部”を設立した狙い

----吉田さんが統括されている“営業企画統括本部”というのは、かつてのコンパックになかった新しい組織であると伺っていますが、これを新設した狙いは何ですか。

吉田「“営業企画統括本部”は、顧客のニーズを吸い上げて、製品やシステムに反映させるための組織です。私は、タンデム出身なので、遠慮なく言わせてもらいますが、かつてのコンパックでは、こうした組織の必要性をあまり感じてはいなかったようです。かつてのコンパックは、良い製品を、いいタイミングで出せば売れるはず、というメーカー本位の立場で、顧客の声を積極的には聞いてこなかったと思います」

「しかし、これからは、パソコンだけでなく、並列コンピューターやAlphaサーバーを核にしたシステム全体を売っていかなければなりません。特に企業ユーザーを中心にシステムを売っていくには、これまでのような作り手本位のスタイルは、改めなければならないでしょう。米国本社にも、“営業企画統括本部”と同じ組織があります。製品ごとではなく、マーケットごとに作られた営業部隊を支援するために作られた組織です」

「広報宣伝部も、“営業企画統括本部”の中におかれています。普通、広報宣伝部は、総務、経理などと同じように管理部門に設置されることが多いのですが、ユーザーにとってメリットのある広報宣伝活動を行なっていこう、という狙いから、“営業企画統括本部”の中に置いています」

●'99年春には、コンシューマー向けにA4薄型ノートパソコンを投入へ

----コンパックは、コンシューマー向けに弱いというイメージがありますが。

吉田「コンシューマー向けのビジネスでは、当社は確かに苦しんできました。ただ、今年1月に、キヤノン販売(株)と提携し、コンシューマー向けパソコンのマーケティングや製品開発を行なってきました。いままでは、コンシューマー向けパソコンの市場調査でも、“その他メーカー”といった扱いでしたが、'99年の春頃には、市場調査のデータにおいても、それなりの存在感を示せるようになるのではないかと思っています」

----来年春には、キヤノン販売との提携の成果が出てくる、ということですか。

吉田「コンシューマー向けのビジネスは、必ずしも儲かるわけではないのですが、企業の存在感をアピールするためにも、重要なビジネスの1つであると考えています。キヤノン販売との提携は、日本のユーザーに適した製品を提供していくために行なったもので、すでにいくつか発売されていますが、商品のラインナップが揃うのは、'99年の春になります」

----いま日本では、B5ファイルサイズのノートが1つのブームになっていますが。

吉田「まぁ、当社が『VAIO』のような、B5ファアイルサイズのノートパソコンを出すことはないでしょう。ただ、コンシューマー向けにA4薄型のノートパソコンを出すことを計画しています。すでに、企業向けには、A4ファイルサイズの薄型ノートとして、旧DECの『Digital HiNote』の後継モデルを出していますが、これとは違うものをコンシューマー向けに出す予定です」

●ライバルはデルコンピュータ

----コンパックにとってのライバルはどこですか。

吉田「ワールドワイドでみれば、やはりデルコンピュータですね。直販による低価格戦略で、アメリカでも、コンパックを追いあげています。日本でも、デルは脅威ですね。特にパソコンに関しては、法人向けの商談では、競合することも多いようです。ただ、個別の商談に関して、デルに対して勝った負けたと議論するのではなく、価格、製品のラインナップ、流通などを含めた総合的なサービスとして、デルに勝てるビジネスモデルを模索していきたい、と考えています」

----デルとコンパックを比較すると・・。

吉田「デルとコンパックは、正反対の会社だと思っています。コンパックは、間接販売を中心にしていますが、デルは、直接販売を中心にしています。デルは、コンパックのアンチテーゼとして生まれてきた会社です。コンパックとは正反対のビジネスモデルの会社です。コンピューター業界は、変化の激しい業界なので、あるビジネスモデルが、別のビジネスモデルへ置き換わってしまうということは、簡単に起きてしまいます。コンパックとしても、デルを重要な競争相手として注目しています」

----吉田統轄本部長が統括している組織のひとつに“インターネット・マーケティング部”というのがありますが、これは・・。

吉田「その組織は、営業を介さないビジネスモデルを検討するための組織です。米国本社にも、同じ組織が設置されまして、それにあわせて設置されたものです」

----“営業を介さないビジネスモデル”とは、つまり、直販のことですか。

吉田「直販といっても、完全な直販ではありません。ユーザーの要求をインターネットで受け付けて、販売は代理店を通して、というようなスタイルの販売を行ないます。すでに、昨年12月からオンラインの注文受付を行なっていますが、顧客ニーズの吸い上げといったノウハウを蓄積するために、この組織を統括しています。また、インターネットを使ってパソコンなどを販売している代理店のサポートも業務の1つとして行なっています」

----“インターネット・マーケティング部”は、やはりデルを意識した組織なのでしょうか。

吉田「まぁ、我々のイメージの中にデルは存在している、とだけ言っておきましょう」

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