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【INTERVIEW】JavaとITRONがひとつになったOS『JBlend』とは?アプリックス根本氏に聞く

1998年09月01日 00時00分更新

文● 報道局 浅野広明、小林久

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 (株)アプリックスは昨年来、JTRON仕様OS『JBlend』やインターネット小額決済システム『BitCash』など、新規事業へ積極的に取り組んでいる。今回は、JavaとITRONというふたつのOSを融合し、両者のメリットが享受できるという『JBlend』の話を中心として、今後同社で大きなウエイトを占めることになるJava関連ビジネスなどについて伺った。同社マーケティング本部副本部長の根本忍氏がインタビューに応じてくださった。



ITRON、Javaの抱える課題をJBlendが解決する

----まず、ITRONとJavaを融合させようとしたきっかけについてお伺いしたいのですが。

「アプリックスはもともと、組込み機器用のブラウザーを開発していました。ITRONは組込み機器用OSとして、かなりのシェアを占めていることもあり注目していました」

「一方で、われわれは、特別認可法人のIPA(情報処理振興事業協会)から助成を受け、ホームエージェントの研究を行なってきました。また、テレビや電話、エアコン、ゲーム機などの家電がインターネットへのアクセシビリティを備える次世代に、どのような製品、サービスが可能になってくるかを研究しており、その研究過程でJavaに出会ったのです。そして米サン・マイクロシステムズ社と密に連絡を取り、Javaの組込み機器への適用に関する研究を進めていたのです」

「そのうち、われわれはITRON、Javaそれぞれが抱える課題を知るようになりました。たとえば、ITRONにはネットワーク機能やGUI機能がありません。また、Javaに関して言えば、ハードウェアを直接制御できない、リアルタイム処理ができない、などの組み込み分野における問題がありました」

----それで、両者を融合させようとした。

「そうです。ITRONとJavaの実行環境を融合することにより、これらの課題を一挙に解決できるのではないか、ということです。つまり、リアルタイム処理機能はITRONで記述し、ネットワーク機能やGUI機能はJavaで実装するというわけです。そして、それが技術的に可能だという目処も立ちました」

「試作版を発表したのが、昨年の4月。正式発表を行なったのは昨年の6月ということになります」

----TRONプロジェクトの新しい仕様としてJTRONが登場するのはその後ということになりますね。

「はい。JBlendの発表以来、多くの反響をいただき、そのうちこれを1社で抱えていても駄目だ、ITRONとJavaの融合について標準規格化するのがベストだと考えたのです。それでわれわれが開発したものを坂村健先生にすべてお渡しし、ご指導をいただきながら規格化を進めました」

「そして、昨年の12月に坂村先生がJTRONを発表され、それを待ってわれわれもJTRON仕様OS第1号ということで、高速化などの改良を加えたJBlendを改めて発表した、という経緯になります」

JBlendの応用例

----JBlendはどのような機器への搭載を想定しているのですか。

「リアルタイム制御、ネットワーク接続、GUIなどを必要とする製品はすべて範疇に入ります。情報家電、カーナビ、PC、PDA、デジカメほか、きわめて広い分野に応用できます」

「JBlendは現在、標準仕様である『JBlend』のほかに、PCに搭載できる『JBlendPC』、PersonalJavaとITRONを融合させた、TVやカーナビなど向けの『PersonalJBlend』を用意しています。また、サンによるEmbeddedJavaの投入に合わせて、携帯電話やポケベルなどの小型端末向けOS『Embedded JBlend』のリリースも予定しています」

「現時点での採用例としては、松下電送(株)のインターネットFAXなどが挙げられますが、JBlend搭載製品が本格的に市場に出てくるのは秋以降になるでしょう」

同社のミーティングルームで、JBlendを搭載した試作品を見せていただいた。

(株)PFUと共同開発したJBlend搭載端末『BossaNova』。PFUで近く商品化する予定だという。写真はTVリモコン用のJavaアプレットをダウンロードした状態。TVチャンネルの切り替えや音量調節が可能で、操作はすべて片手で行なえる。このほか、ダウンロードするJavaアプレットにより、さまざまな家電機器のリモコンとしても利用できる
(株)PFUと共同開発したJBlend搭載端末『BossaNova』。PFUで近く商品化する予定だという。写真はTVリモコン用のJavaアプレットをダウンロードした状態。TVチャンネルの切り替えや音量調節が可能で、操作はすべて片手で行なえる。このほか、ダウンロードするJavaアプレットにより、さまざまな家電機器のリモコンとしても利用できる



ソニー(株)のノートPC『VAIO』にJBlendPCを搭載した図。JavaアプリケーションやITRONアプリケーションが動作するだけでなく、Webブラウジングやハードウェアの制御も行なえる。『JBlendPC』はパーソナルメディア(株)が近くパッケージ販売する予定だという
ソニー(株)のノートPC『VAIO』にJBlendPCを搭載した図。JavaアプリケーションやITRONアプリケーションが動作するだけでなく、Webブラウジングやハードウェアの制御も行なえる。『JBlendPC』はパーソナルメディア(株)が近くパッケージ販売する予定だという



「われわれはこのJBlendを、“Jaccas(Java Controllable Consumer Appliances System)”というアーキテクチャーの一環の技術として位置づけています」

Java家電を実現する“Jaccas”

----そのJaccasについて説明していただけますか。

「Jaccasは、Javaで家電やOA機器をコントロールするためのアーキテクチャーです。ここでは各機器は自分をコントロールするJavaアプレットだけを搭載し、各機器をコントロールする端末-家電で言えば主にTVになるでしょう-は、Javaアプレットの実行環境のみを持ちます。たとえば、TVが家電から受け取ったJavaアプレットを画面に表示し、ユーザーはTVを見ながら、風呂は沸いたか、御飯は炊けたか、エアコンの温度は何度かなどをチェックしたりコントロールしたりできるわけです。また、このような仕組みだと、各社が次々とリリースする家電機器をネットワーク化することも容易にできますし、家電機器にはチップを1個組み込めばいいわけですから、価格も低く抑えられます」

「家電機器をネットワーク化する方法としては、主に、AC電力線、IrDA、電波の3通りを考えています。たとえば、BossaNovaもJaccasにおいて重要な端末ですが、IrDAを利用しています」

----このJaccasをどのように展開していこうとお考えですか。

「Jaccasの要となるOSとしてJBlendもありますし、技術的には問題ありません。ですから、現在マーケティング面で、家電メーカーやPCメーカーとどのようなサービスが可能かを検討しているところです。また、家電にとって放送メディアは欠かせないので、いくつかのTV局ともJBlendを絡めたサービスについて話を進めています」

「現在は、PCからインターネットに接続するのが一般的なため、PC市場はメジャーですが、Jaccasのように身の回りの家電がすべてネットワーク化されることで、一般においてはPCはニッチに展開していくだろうと見ています。われわれのメインの市場はあくまでもノンPC。日常生活の中で、誰でもが容易に使えるような製品を開発していきたいと思っています」

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