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日本学術会議、ヒューマンインタフェースについてのシンポジウムを開催

1998年06月12日 00時00分更新

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 科学者の代表機関の日本学術会議は“ヒューマンインタフェースの未来 -人とコンピュータが織りなす創発社会の実現に向けて-”と題した学術会議シンポジウムを開催し、東京大学の坂村健教授が“ヒューマンインタフェースの未来”と題して基調講演を行なった。また、“人間とコンピュータの間”と題して、ノンフィクション作家の立花隆氏が特別講演を行なった。

坂村健氏坂村健氏



 坂村氏は、「人と機械の接点となるユーザー(ヒューマン)インターフェースは、原子力発電所や新幹線などの基幹産業でヒューマンエラーをなくすことを主な目的として研究されてきた。しかし、コンピューターやゲーム機、携帯電話などの普及により、ユーザーインターフェースは一般化してきたので、今後は、一般の人々を対象にすることが重要」と語り、より使いやすいインターフェースを社会全体に対して提供することが重要という考えを示した。

 しかし、駅の券売機などの一般向けヒューマンインターフェースは「まだまだ、使いにくい」ので、いかに良くしていくかが問題となる。坂村氏は解決策の糸口として、“技術力”と“デザイン”を挙げている。「ユーザーインターフェースは個々の技術力の組み合わせ」であり、出力メディアとして“文字”、“音声”、“動画”など、入力メディアとして、“キーボード”、“ポインティングデバイス”、“音声入力”などがある。ポインティングデバイスとして、電子ペン、タッチパッドなどの開発をはじめ、未来のインターフェースとして、入出力にバーチャルリアリティーを活用したり、人工知能などを利用したエージェントなどが考えられているが、「どれも決定打的なものとは言えない」という。

 デザインについては、例えば、スイッチを上に入れるとオンになるといった取り決めは「いっけん地味だが重要」なファクターだという。坂村氏は、誰もが使える理想的なコンピューターのアーキテクチャーの構築を目指しているTRONプロジェプトを推進しており、この中で、誰もが使える電子機器の基本的なデザインのガイドラインとして“TRONヒューマンインタフェース仕様”というものを定めている。

 しかし、この仕様は「おだやかな標準化」であり、「技術力のアップで、デザインを変えていく」ことが、より良いヒューマンインターフェースに繋がることになるという。そのためには、データを元にした“評価重視型”だけでなく、瞬間芸的な“アイデア一発型”も重要だとしている。

立花隆氏立花隆氏



 また、“人間とコンピュータの間”と題して、ノンフィクション作家の立花隆氏が特別講演を行なった。立花氏は、現在のヒューマンインターフェースの例として、開発中の最新鋭戦闘機F22を挙げ、「F22は、操縦はほとんどコンピューターが行ない、人間はここぞという時の攻撃に集中する。人間も意識して自分の肉体をコントロールしていないが、ここぞという所では、意識して動かす」と語り「インターフェースを考えるには、そもそも人間とはどうなっているかがわからなければならない」という考えを示した。F22には、米シリコングラフィックス・クレイ社のスーパーコンピューター2台ぶんの性能のCPUが搭載してあり、4機が編隊を組んで、地上の管制センターや衛星などと共に、「イントラネットを構築する」という。(報道局 中山実)

http://www.nichigaku.go.jp/

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