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“SurfingPrizes.com”は会員10万人、1日の売上げ2万5000ドル。15歳のCEOキャメロン・ジョンソン君から学べ!! 

2000年08月10日 22時37分更新

文● 野々下裕子

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8月6日にデジタルハリウッド大阪校で“21世紀の未来教育をデザインする”というタイトルのシンポジウムが行なわれた。1部のトークショー“ティーントレプレナー(Teentrepreneur/10代起業家を意味する造語)になるために”では、話題の15歳CEO、キャメロン・ジョンソン君がゲストとして登場した。

9歳で事業を始め、すでに4つの会社立ち上げているキャメロン君は、今春に初来日した際にも数多くのマスコミから注目を集めていた。普段はバージニア州の全寮制高校、ウッドベリー・フォレストの1年生。今回は、著書『15歳のCEO』の出版記念会や、今年の4月にスタートしたばかりの4つ目の新会社“SurfingPrizes.com”の日本法人立ち上げ準備の合間をぬってのゲスト出演である。

なお、イベントの主催は、キャメロン君とアドバイザリーボードメンバーの契約を結んだフューチャーインスティテュート(株)が行なっており、トークショーの通訳も同社の鶴谷武親社長が担当した。

7月に発売されたばかりの著書『15歳のCEO(PHP出版)』を紹介する鶴谷氏。「キャメロン君の活躍する姿が日本の学生達の刺激になれば」と語る

パソコンは9歳から、現在4つ目の会社を設立

キャメロン君のビジネス経歴は、9歳のクリスマスに父親のウィリアムさんからパソコンをプレゼントされた時に始まる。そのパソコンを使ってカードをデザインしたり、プリントアウトする“商売”を成功させたキャメロン君は、その2年後にアメリカで流行っていた“ビニー・ビー”というぬいぐるみのネット販売を始め、こちらも大成功を納める。そして、去年の2月にその会社を売却した資金で、ティーン向けのスパムメールを防止するフィルタリングサービス“MyEZmail.com”設立。こちらは1ヵ月で黒字、6ヵ月で1万人の会員を集め、その後も成長を続けている。

サイトを経由して広告を見たユーザーにキャッシュバックやフリーサービスなどを提供する“SurfingPrizes.com”は10万人もの会員登録があり、1日2万5000ドルを売上げている。もうすぐ日本法人も立ち上がるようだ

「どのビジネスも僕の身近な経験から思いついたものばかり」と語るように、確かにビジネスの内容そのものは目新しいものではない。しかし、彼のマーケティングセンスと提案するサービスの内容が優れていることは、これまでの成功歴を見ればわかるだろう。事実、キャメロン君はアメリカで行なわれたティーントレプレナーのコンテストにも入賞している。

「ネットビジネスでは年齢や経歴に関係なく、実力だけが評価されるシンプルな世界。アメリカはもともと簡単に会社がつくれるんだけど、ネットビジネスは始めるためのコストがほとんどかからないから、ティーンは参入しやすいんだ。これからはもっと多くのティーントレプレナーが登場してくると思うよ」

これまで行なってきた数々の事業について淡々と語るキャメロン君。横にいる父親はマネージャーではなく、15歳の男の子の親としてキャメロン君に付いて来ただけだという。ラフなスタイルで普通の15歳にしか見えない、本人も普通の15歳の学生だと言い切る

会社経営のほか、自ら株式投資にも

「学業と両立できるかって? 僕の場合、学校にパソコンを持っていって、朝の時間や昼休み、放課後なんかを使ってビジネスのやりとりをしてきたけど、学校生活も普通にやってるし、特に問題はないねネットビジネスの場合、仕事の指示や打合せはメールでできるし、スタッフはそれこそ全米各地にいるからどこにいても関係ないからね。逆に時差をうまく利用して仕事をしたりもしてるよ」

学校生活とビジネスを両立しているだけでも驚きだが、キャメロン君が実力を発揮しているのは会社経営だけではない。株式投資も自ら行なっているというのだ。

「株を持ってる同級生は他にもいるけど、さすがに自分で売買しているのは僕ぐらいかな。情報を手に入れるのも売買もネットですべてできるからやれることなんだけどね」

小さい頃から株の存在を知っていたキャメロン君。だが最初に父親に買ってもらったトイざラスの株はさっさと売って、デルの株を買っていそうだ。情報を使いこなすセンスは、日頃の生活感覚の中から生まれたもののようだ

父親の考えは……教育は大切

こうしたキャメロン君の生活スタイルは、父親の教育の賜物と思いきや、話を聞くとこれまでのビジネスもすべてキャメロン君が自分の力でやってきたものだという。

「息子にパソコンを与えたのは、これからの時代にマルチメディアを知っておくのが大切だからで、ビジネスを始めるなんて想像もしてなかった。小さい頃から、田舎の親の農園で野菜を売る手伝いはしてたから多少、商才はあったんだろうけど、具体的なビジネスノウハウを教えた記憶はない。あるとすれば、金銭感覚を磨くようにと、ディズニーやトイざラスの株を買って、そのバランス管理(収益管理)をする小切手帳を一緒に渡したぐらいかな。アメリカではそうやって小さい頃から自分でお金を管理させるのは珍しいことじゃないけどね。でも、本人の好きにするようにってほっといたら、すぐにデルの株に買い替えてたよ(笑)」

とはいいつつも、息子の教育の話になると、表情はすこし厳しいものになる。

「会社でもネットセクションが出来るなど、ビジネスの流れそのものが変わってきている」と父親のウィリアムさんは語る

「子供の幸福を願うのは親として当然だけど、そのための協力はいろいろするけれど、財産を与えればいいというものではない。そうしたものはまた別のこと」と、普通の父親らしい一面も見せる。

「金銭的な財産や人間関係というものは、何かのきっかけで失ってしまうかもしれないけれど、教育だけはその人にとって失われることのない財産になる。だから、教育だけはきちんと受けてほしいと思っている」

ごまんと存在するアメリカのティーントレプレナー予備軍

では、キャメロン君自信に将来の話を聞くと、正直に「分からない」と答える。「今はビジネスに興味があるけど、起業家としてどうなっていくかは分からない。物質主義者でもないから、買いたい物も特別ないし……今ある目標は最年少でのIPOぐらいかな」とあっさりしている。

笑うと口にはめたブレス(歯を矯正する器具)がのぞくあどけない顔で「ビジネスをやってるのはお金が儲かるから」とストレートに言ってはばからないキャメロン君だが、決してお金だけが最終目的でないことは話を聞いているとよく分かる。手に入れたお金は次に投資するだけでなく、地域やボランティア活動にも寄付しているし、日本の教育企業のアドバイザリーボードメンバーとなったのは、ビジネスの楽しみをもっと拡げたいと思ったからだ。

「学校にも行って、ビジネスもする。それは僕がやりたくて選んだ道なんだ」という彼らの発想が、これからのビジネスだけでなく、社会をも変えていくのだろう。

それにキャメロン君には、マイクロソフトのゲイツ会長やアップルのジョブス会長のような、成功者が持つ、ある種オタク的なカリスマ性は全く感じられない。この“ごく普通”であることが、キャメロン君に対して、最も驚くべきことなのかもしれない。彼のように学業とビジネスを両立させているティーントレプレナー予備軍が、アメリカにはもうすでにごまんといるのだ。

村上龍氏の最新作『希望の国のエグソダス』では、学校に見切りをつけた中学生らが国際的なネットビジネスを成功させ、経済的な危機に陥っていた日本を救うという話が描かれていた。日本もIT革命を叫ぶだけではなく、本質から変わっていかなければ、小説以上に大変なことになってしまうことになりそうだ。

会場に集まった人たちの半分はティーンではなく、大人の人たちだった

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