2000年3月8日~12日(現地時間)、San Jose Convention Centerにおいて、ゲーム開発者を対象にした“GDC
2000”が開催された。10日には、米マイクロソフト社のビル・ゲイツ(Bill
Gates)会長が基調講演でゲーム専用機『X-Box』(仮称)の全容が明らかとなった。
X-Boxは、ソニーの『PlayStation 2』、任天堂の『Dolphin』(コードネーム)、セガの『Dreamcast』との戦いを強いられることになる。本稿では、上記各社のGDC
2000における新しい動きをお伝えする。
X-Boxとの戦いを避けたPlayStation 2
3月11日、米ソニーアメリカ社のフィル・ハリソン(Phil Harrison)氏が“PlayStationの未来”をテーマに基調講演を行なった。しかし展示会場の『PlayStatin 2』のブースには、目新しい動きはない。ソニー『Play Station』のブース。実機の展示すらもなかった |
ブースの担当者によると、今回のGDC 2000ではX-Boxとの戦いを避け、5月11~13日にロサンジェルスで開催する“E3(Electronic
Entertainment Expo) 2000”(http://www.e3expo.com/flash.html)に力を入れるとのことだ。
Dolphin発売後もNintendo 64は出荷を継続
任天堂(株)は松下電器産業(株)と開発中のゲーム専用機『Dolphin』(コードネーム)を今年発売すると発表しているが、GDC 2000においてもその発売日は明らかにならなかった。現在発表されているDolphinの仕様は、米IBM社が開発するPower PCアーキテクチャーのCPU『Gekko』(コードネーム)、米ArtX社が設計するグラフィックスチップ、三菱電機(株)のDVD-ROMドライブの搭載などだ。GekkoはIBMのPowerPCアーキテクチャーを拡張したCPUで、動作周波数は400MHz。銅配線技術を使用する。ArtXが開発するグラフィックスチップは、動作周波数が200MHz。製造は日本電気(株)が行なう。システムメモリーにはDRAMが使用され、メモリーバスのバンド幅は毎秒3.2GB。米ニンテンドー・オブ・アメリカ社のサム・ロナルド氏 |
米ニンテンドー・オブ・アメリカ社のサム・ロナルド(Tham Leonard)氏によると、Dolphin発売後も任天堂は『Nintendo
64』を出荷し続けるという。「Nintendo 64はゲームソフトの供給にROMカードリッジを採用している。このため、DVDメディアを搭載するDolphinよりもゲームデータへのアクセスが高速だというメリットがある。任天堂がNintendo
64を切り捨てることはない」と、ロナルド氏はコメントしている。
DreamcastがDVD-ROMドライブを搭載しない理由
米セガ オブ アメリカ ドリームキャスト社のブース |
DVD-ROMドライブを搭載したPlayStation 2は、3月4日に日本で発売になって以来、数日で100万台弱が出荷されるなど、爆発的な売れ行きを見せている。また今後発売が予定されているX-Box、Dolphinでも、DVD-ROMドライブが採用されている。Dreamcastの現行製品では12倍速のCD-ROMドライブを搭載し、約1GBのデータを記録できるGD-ROMを採用している。しかし、今後、上記の機種と競合するのにDVD-ROMドライブを採用する計画はないのだろうか。米セガ
オブ アメリカ ドリームキャスト社のDirector, Marketing Communicationsを勤めるチャールズ・ベルフィールド(Charles
Bellfield)氏にお話を伺った。
セガ オブ アメリカ ドリームキャストのチャールズ・ベルフィールド氏。「ソニーがキャデラックだとしたら、セガはアウディを目指したい」 |
――PlayStation 2での日本市場での成功や、X-BoxやDolphinの仕様を見て、DreamcastにDVD-ROMドライブを搭載する計画はないのでしょうか。
ベルフィールド氏(以下同)「ありません。これには、3つの理由があります。1つは、Dreamcastにはすでに約1GBのデータを記録できるGD-ROMを採用しているためです。なるほどメディアは大容量であるに越したことはありませんが、当面は1GBで十分だろうと考えています」
「そして2番目の、もっとも大きな理由が、コストです。現在、米国内においてDreamcastは199ドル(約2万1000円)で提供させていただいています。この価格は、Dreamcastがコンシューマー向けのゲーム機であることを考えると、ぎりぎりの価格なのです。しかし、DreamcastにDVD-ROMドライブを搭載するとなると、おそらく200ドル近く上乗せしなければならなくなるはずです」
――つまり、399ドル(約4万2000円)になってしまうわけですね?
「そうです。PlayStation 2と同じ価格帯になってしまうのです。X-Boxもそれ以上の価格になるのではないでしょうか。PlayStation
2は、FireWireやUSBなどのポートを搭載し、単なるゲーム機器ではなく、コンピュータ端末や家電製品と接続して使用する機器としての販売戦略がありますので、399ドルでもよいのです。しかし、われわれのビジネスはエンドユーザーをターゲットにしたゲーム機の販売ですので、199ドルでなければいけないわけです。また、本体価格ばかりではなく、CDメディアの方がDVDメディアよりも安価であるといった事情もあります」
――3番目の理由というのは何でしょう?
「PlayStation 2を日本で購入したユーザーの多くは、DVDプレーヤーとしての利用を目当てにしています。これには、日本市場においてDVDプレーヤーの関心は集まっていたものの、販売台数はそれほどでもなかったという事情があります。ところが、米国ではDVDプレーヤーはすでに一般家庭に普及しています。つまり、ゲーム機器にDVD-ROMドライブを搭載していても、DVDムービーを再生するのが目的で購入してくれるユーザーは米国にはいないのです」
――では、今後、DreamcastがDVD-ROMドライブを搭載する可能性はまったくないのですか?
「可能性はあります。今後、Dreamcastの安価な価格設定を維持できる程度にDVD-ROMドライブの価格が下がったとき、採用を検討することになります。しかし、現状ではそれがいつのことになるのかは、わかりません」
販促品として配っていた“got modem”のロゴが入ったT-シャツ |
――しかし新技術や新製品はどうしても話題を集めやすいものだと思います。現在、PlayStation
2やX-Boxへの対抗策を講じているのではないですか?
「そのとおりです。詳しいことはまだお話しできないのですが、Dreamcastの特徴の1つにモデムの標準装備があげられます。また、拡張スロットを使い、Ethernet、ISDN、DSL機器への接続が可能です。今年は、インターネットを使った新しいゲームの世界をみなさんに紹介したいと思っています」