日進ソフトウェア(株)は10日、米Lynx Real-Time Systems社の組み込み用途向けLinux『BlueCat』の国内発売を発表、都内で発表会を開いた。開発ツールを購入すればランタイムを無償で利用でき、機器の数量が多い場合にコスト面で有利になるという。9日(現地時間)には米国で組み込み向けLinuxのコンソーシアム“Embedded
Linux Consortium(ELC)”が発足しており、ネットワーク分野のみならず産業分野でもLinuxの浸透が本格的に始まりそうだ。
BlueCat Linux開発キット |
Lynx社は、UNIX互換のリアルタイムOS『LynxOS』を'88年から販売しており、同OSは通信や航空宇宙、防衛分野などで大手メーカーが採用している。日進ソフトは'91年から同OSの国内販売とサポートを行なっている。
BlueCatは、Lynx社が開発した組み込みシステム向けのLinux。米レッドハット社のディストリビューション『Red
Hat Linux 6.1』をベースとし、組み込みシステムに不必要なモジュールを省き、LynxOSで培った技術をもとに機能強化を施しているという。米国内では今年2月末に出荷を開始した。
国内で発売されたのは『BlueCat Linux開発キットR 1.0.0』で、価格は4万9000円。日進ソフトウェアが日本語化したもので、組み込みシステム向け開発ツールやカーネルソースなどが含まれている。開発環境はLynxOSのものと完全互換で、LynxOSで使用した開発ソフトをBlueCatでも利用できるという。当初はx86対応版のみのリリースとなるが、6月にはPowerPC対応版を発売する予定。今後はMIPSやSH-4にも対応していくとしている。
Lynx社副社長のエド・マッカーテイン(Ed McCurtain)氏は、「BlueCatを出荷することで、顧客は基幹部分にLynxOS、その他の部分にローコストなBlueCatを利用するといった選択肢が生まれる」と述べ、BlueCatを利用するメリットを強調した。
Lynx社副社長のエド・マッカーテイン氏 |
また日進ソフトウェア社長の中川秀人氏は、「LynxOSが高い実績を上げている通信や計測機分野のほか、ITS(Intelligent
Transport Systems:高度道路交通システム)などを重要ターゲットにして売り込んでいきたい」と意気込んだ。またLynx社と共同で、日本にBlueCatサポートセンターを設置したことを明らかにし、東南アジア各国にも積極的に販売を展開していくとした。
日進ソフトウェア社長の中川秀人氏 |
組み込みシステム向けLinuxをめぐっては、米国で9日(現地時間)にEmbedded
Linux Consortiumが発足している。Lynx社やLINEO社といった組み込みLinuxベンダーのほか、組み込み系の開発環境を発表したレッドハット社らベンダー約50社が参加し、組み込みシステムへのLinux利用促進を目的としている。
同コンソーシアムでは、「Linuxを組み込み系へ応用する機運が高まっていることに反応した」としている。ネットワークサーバーで注目を集めるLinuxだが、今年は産業分野でも応用の動きが加速しそうだ。