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ASPに関する日本初のカンファレンス“ASP SUMMIT Tokyo Preview”開催

2000年01月20日 00時00分更新

文● 編集部 鹿毛正之

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ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)に関するカンファレンスとしては日本で始めてのイベントとなる“ASP SUMMIT Tokyo Preview”が、東京・目白のフォーシーズンスホテルで開催された。

ASP SUMMITには、'99年10月に設立された業界団体のASPインダストリアル・コンソーシアム・ジャパン(ASPICジャパン)が、全面的なバックアップを行なっている。ASPICジャパンでは、アジアで始めてのASP国際会議となる今回のASP SUMMITを、アジア地区におけるASP展開に向けたキックオフイベントと位置付けているという。

ASPICジャパンには現在、115社が加盟している。今回のASP SUMMITでは約600人の来場者を数え、ASPに対する関心の高さを伺うことができたた。

日本はASPにおけるアジアのハブを目指す

オープニングセッションの冒頭では、ASPICジャパン会長の河合輝欣氏が登壇。「IT革命の中で、ASPがどう位置付けられるのかに、皆さんが注目している」とASPに関心が集まっている現状を指摘。また、米国に次いで日本でもASPに普及の兆しが見られることを挙げ、「アジアのなかのハブを目指す」との意気込みを口にした。

ASPICジャパンの会長で、(株)NTTデータ代表取締役副社長の河合輝欣氏、「ASP SUMMITで、皆さんがアライアンスを組んで進めていくための場を提供したい」
ASPICジャパンの会長で、(株)NTTデータ代表取締役副社長の河合輝欣氏、「ASP SUMMITで、皆さんがアライアンスを組んで進めていくための場を提供したい」



ASPの今後については、「米国から3~5年遅れていると言われる状況をキャッチアップしていく」という。また、「アプリケーションは日本においてインフラになっていくと思う。そのうち、アプリケーションとネットワークは区別が付かなくなっていく」と語り、ASPの普及が旧来のビジネスモデルに変化をもたらすとの見通しを披露した。

ASPICジャパンでは今後、6月と11月に予定されているASP SUMMITなどを通じてASPの周知を図っていく予定。また、長期的にはガイドラインの設定と標準化の作業を行なっていきたいとしている。

使った分だけ支払うのは水道や電話と同じ

続いて、ASPICジャパンの専務理事を務める田中正利氏が、“ASPは2000年代のIT革命”と題し、講演を行なった。

田中氏は、「ASPは時代の流れ」と断言。これからのビジネスシーンでは、ビジネスの変化速度よりもITシステムを改善する速度のほうが上回っていないと、企業は勝ち残っていけないと指摘。そのため、「自社だけでのIT展開は不可能」な状況になっており、ASPの導入が不可避であると説明した。

ASPICジャパンの専務理事で、シトリックス・システムズ・ジャパン(株)代表取締役の田中正利氏、「ASPICは現在のところ、提供者だけの団体。ぜひユーザーにも加入してもらいたい」
ASPICジャパンの専務理事で、シトリックス・システムズ・ジャパン(株)代表取締役の田中正利氏、「ASPICは現在のところ、提供者だけの団体。ぜひユーザーにも加入してもらいたい」



ASPのビジネスモデルについては、「使っただけ、使う人数の分だけ支払うということは、水道や電話と同様の仕組み」と説明し、ASPがサービス・コンテンツ重視のビジネスであることを強調した。

また、インターネットにベースをおくため地域性が存在しないASPが普及することで、流通モデルにも変革が迫られると指摘。「サーバーの所在地が東京や国内である必要はない」と語り、地域や国境を越えたサービスが求められるという厳しさの面についても言及した。

ASPが持つ課題については、“ASP間の相互接続性と互換性”など、普及に伴って発生が予想される問題を挙げた。将来的にはユーザーがASP業者を乗り換えるケースも増えると予想されるが、その際に「データの受け渡しがスムーズに行なわなければならない」とし、ASPICジャパンによる啓蒙活動などを推進していくと語った。

「ASPは新しいパラダイムをもたらす」と強調する田中氏
「ASPは新しいパラダイムをもたらす」と強調する田中氏



信頼性が高いシステムを導入できるのがメリット

基調講演では、コンピュータ・アソシエイツ(株)の吉田武央ディレクターが、ASPを実際に導入するメリットなどについて説明を行なった。

吉田氏によると、米国では“ASP=インターネット+ERP”という捉え方がされているという。また、変革が激しいITに関しては、米国でも“あまりに変化が急激過ぎる”という認識が広まっているとのことだ。

続いて吉田氏は、「実はユーザーのニーズは保守的」と指摘。求められているニーズとしては、堅牢なシステムとセキュリティ、安価な開発と保守、短期間での立ち上げ、などを挙げた。もっとも、これらの保守的なニーズを満たすのにASPは絶好の解答であり、おもにCRM/ERP/SCMといった分野でASPが求められていると語った。

一般に、“遠くの場所にあるサーバーを利用する”と考えられがちのASPだが、吉田氏はその見方を否定し、「ASPでは、オンサイトによる運用代行もあり得る」との考えを示した。また、ASPの定義として挙げられるのは「賃貸(レンタル)契約で、“使用権”を提供する」ことであるとし、契約の際に交わす取り決めであるSLA(Servise Level Agreement)の重要性を強調した。

ASPの導入によるメリットとしては、TCOの削減を期待する向きが多いが、むしろ、信頼性の高いシステムを導入できることのメリットが大きいと指摘。ASP事業者が持つ人工知能(AI)などの先進技術も容易に導入でき、納期も短縮できるという。

コンピュータ・アソシエイツ(株)の吉田武央ディレクター、「単にTCO削減が目的では導入する価値がない、いかにしてキャッシュフローとROI(投下資本利益率)を改善できるかが重要」
コンピュータ・アソシエイツ(株)の吉田武央ディレクター、「単にTCO削減が目的では導入する価値がない、いかにしてキャッシュフローとROI(投下資本利益率)を改善できるかが重要」



最後に吉田氏は、これから伸び行くASPを成功させる鍵として、6つの要件を挙げた。それらは、クロスプラットフォーム/セキュリティ/パフォーマンス/信頼性/可用性/拡張性だという。

今回のASP SUMMIT Tokyo Previewでは、来場者のほとんどがASP事業の提供者側であったため、実際にASPを提供する側である吉田氏の講演は、興味深いものに映ったようだ。ASPICの田中専務理事が指摘したように、現在はまだ提供者側が先行している状況で、ユーザー側からの声や意見はあまり聞かれず、また、反映されうるレベルにまでも達していないと言える。

標準化やガイドラインの策定といった枠組み作りの重要性が指摘される一方、すでに多くの業者がASPに参入し始めており、オンゴーイングの混沌とした状況でサービスが提供され始めている。今回のASP SUMMITでも、講演のテーマ自体がASP事業者に向けたもので、まだ啓蒙の段階に過ぎないことは明白だ。

ASPICジャパンでは今後、6月と11月にASP SUMMITの開催を予定している。今回のイベントはあくまで“Preview”ということもあり、次回以降のASP SUMMITでは、よりユーザーに顔が向いたカンファレンスになることが期待される。

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