“デジタルアーカイブ・ビッグバン京都'98”が12月8日より10日まで、国立京都国際会館で開催されている。主催は、今年8月に京都府などが中心となり設立した“デジタルアーカイブ推進機構”。この団体の主な目的は京都の文化的資産をデジタル化してデータベースを作成すること(デジタル・アーカイブ)と、それを活かした新産業の創出にある。今回のイベントは、同団体や地元京都の企業などが行なった、デジタル・アーカイブプロジェクトの動きを集大成したもの。テーマパークや、知識人による講演会が設けられている。
“デジネットエキスポ京都”
イベントホールでは、デジタルアーカイブに関する技術を集めた“デジネットエキスポ京都”を開催。各メーカーが、電子透かしシステムや、プラズマディスプレー、デジタルコンテンツ制作用のデジタルVTRシステムを展示している。京都デジタルアーカイブ推進コンソーシアムは、寺社仏閣や伝統芸能など京都特有の文化をデータベース化した『THE MIYAKO』を出品するなど、地域色豊かになった。松下電器産業のブース、デジタルコンテンツ制作機器『DVCPRO』などを展示 |
“バーチャルデジタル京都”
また、別室では公共団体や企業を中心に、京都府内のデジタルアーカイブ・プロジェクトを紹介。京都府立総合資料館の所蔵品をデジタルベース化し、モニター内で工房体験ができる“陶磁器バーチャル美術館”や、京都府織物指導所が開発した素材で丹後の伝統的な絹製品に化学加工を加えたハイパーシルクを使ったTシャツなどを展示している。京セラの技術によってデジタルデータから作られた陶器。器の下に置かれたセラミック板は、友禅の模様を厚みをつけてあしらったもの |
丹後のハイパーシルクを使った洋服。洗濯も可能 |
“デジタルアーカイブ産業化フォーラム~KYOTO BORN AGAIN”
デジタルアーカイブ・ビッグバン京都'98の会期中には5つの講演会が開催される。“デジタルアーカイブ産業化フォーラム~KYOTO BORN AGAIN”は、スタンフォード大学教授の今井賢一氏と編集工学研究所所長の松岡正剛氏をモデレーターに、衣装デザイナーのワダエミ氏、能の金剛流26世宗家の金剛永謹氏、陶芸家の樂家15代当主樂吉左衛門氏、京都造形芸術大学メディア美学研究センター所長の武邑光裕氏、建築デザイナーの黒竹節人氏を招き、前述の『THE MIYAKO』システムの紹介や、京都文化の紹介とデジタル化の可能性を語った。今井賢一スタンフォード大学教授(左)と松岡正剛編集工学研究所所長(右) |
中央が金剛氏。手にしているのは、豊臣秀吉が求めたという“雪月花”シリーズのひとつ“雪の小面” |
『THE MIYAKO』の紹介にあたり、今井氏は「はじめに、コンテンツありきです。コンテンツをメディアでつつみ、メディアの部品を考えるのがデジタル・アーカイブの本意です」と述べた。現在、『THE MIYAKO』は2000以上のデータを収録、一般公開に向けその数を増やしている。システムの大きな特徴は、京都の市民がデータの書きこみをできる点。松岡氏は、「公開後は、例えば自分の家の床の間や町の漬物屋さんの店先様子の写真といった具合に、京都市民の方にもどんどん情報を加えていって欲しい」と呼びかけた。
松岡氏が『THE MIYAKO』システムを実演。一般への公開は未定 |
テーマパークはやや人手が少なかったもの、講演会は200人のシートが満杯になり立ち見がでるほどの人気。『THE
MIYAKO』システムの公開が待ち遠しいところだ。