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【INTERVIEW】「Linuxは進化が激しいからWindowsにどんどん追いつく、並んだ時点でWindowsには勝ち目はない」--レーザーファイブ窪田敏之社長(後編)

1999年09月09日 00時00分更新

文● 文:編集部 桑本美鈴

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8月24日に米Red Hat Software社とパートナー契約を打ち切った五橋研究所(株)は、レーザーファイブ(株)を設立し、独自ブランドの『LASER5 Linux』を発売する。渦中の人となったレーザーファイブ代表取締役の窪田敏之氏に、Red Hatとの決裂までの経緯や、今後のレーザーファイブの事業展開について伺った。聞き手は日刊アスキー編集部の植山類。

(中編からの続き)

Linuxは地域ごとにあっていい

--Red Hatの将来についてはどう思われますか

窪田「未来がないとは言わないけど、暗雲が立ち込めてて、それを払うには若干の努力が必要でしょうということですね。このままボヤッとしてたんじゃあ、やられちゃう。ちょっと頑張ったほうがいいんじゃないのという感じですね。それを日本のお客さんを待たせるわけにいかないんで、僕らがやるということだよね。やっぱりね、赤い帽子で世界を統一しようというのが間違ってるよね。バザールなんだから、さっき植山さんがおっしゃったように、各国にそういうものがあっていいんだよね」

植山「堂々とパクれるっていうのがいいところですよね」

窪田「そこなんですよ」

植山「ちょっとフレーバーを足して、それで売ってという感じで」

窪田「日刊アスキーLinuxにも書いたんだけど、お料理屋さんが最後にあさつきを散らさないと美味しくないっていうのがあるんだよね。やっぱり。豚汁にネギが入ってなかったらどんな味になると思います? ケモノくさくてまずいでしょ、きっと。あれはネギがあるから美味いんですよね。でもネギなんて栄養価はあまりないんですよ、実をいうと」

「コンシューマーのお客さんからしてみれば、見た目でLinuxなのかBSDなのかわからない人もいるんだから、Red Hatにこだわってもしょうがないのかなって思う。要はよりよいプラットフォームを提供しさえすればいいわけだよね。そういう意味では、Corelは無茶苦茶怖いわけよ。あれはdebだからって言うけどね、お客さんにとっては、要は動けばいいんだからね」

植山「逆にdebはパッケージがたくさんあるだけ簡単だって言うこともできますよね。初期インストールが面倒くさいだけで」

窪田「そういうこと。ただdebの場合は1つしかディストリビューションがないもんだから、RPMと違って方言がないでしょう。だから作っても必ず再利用できるという意味でdebの強さってあるんだよね。だからStormixとかCorelってめちゃくちゃ怖くて。ただCorelに関してはビジネスで利益を出せるかどうかが問題で、出せないと崩れる可能性があるんだよ。たくさんお金をかけてるから。でも次はStormixが控えてるしね。世の中には強いやつはいっぱいいるからね。戦国時代だし(笑)」

レーザーファイブ代表取締役の窪田敏之氏。日刊アスキーLinuxにて、コラム『窪田 敏之の「Linux 山物語」』を連載中
レーザーファイブ代表取締役の窪田敏之氏。日刊アスキーLinuxにて、コラム『窪田 敏之の「Linux 山物語」』を連載中



Linuxが追いつき並んだ時点で、Windowsには勝ち目はない

窪田「今、カーネル自体の進化がすごいじゃない。僕ちょっと心配してるのはね、3.0くらいでリーナスが飽きるんじゃないかと思うんだよね」

植山「飽きたら誰かが引き継いでくれるでしょう。アラン・コックスあたりが(笑)」

窪田「まあね、Red Hatが生きてればね。なぜ僕が心配してるかというとね、欲しい機能はもうみんなあるんだよね、ほとんど」

植山「あとは自分とは関係ないハイエンドの世界の話ですよね」

窪田「それもそうだし、実はLinuxだけじゃなくて、すべてのパソコンOSが同じ問題に苦しんでいる。Windows 98なんか、そりゃあ青くならないでほしいとかいろいろあるけどさ(笑)、そういう本質的でない問題が解決すれば、もう基本的な機能としてはこれ以上いらない。質的にはもう満たされたから、あとは量だけだよというようになりつつあるじゃない」

植山「昔ほど、速いマシンが欲しいとか思わなくなりましたしね」

窪田「そうなんだよね。それってやっぱり文化のひとつの飽和だよね」

植山「そろそろパソコンじゃないデバイスが出てきて世界が変わるのでは?」

窪田「僕はそうは思ってなくて、やっぱりパソコンは結構長いと思うのね。今は専用機の時代だと言う人がいるね。専用機は確かに便利なんだよ。メールが読めて、小さくて、乾電池1本で1ヵ月もちますと。でも、便利なことは便利なんだけど、わがままができないじゃない」

「人間は本質的にわがままなものだと思うのね。例えば自動車の運転席って、大抵すごくわがまま放題になってるんだ。手が届く範囲にすべての機能があって、何でこんなにお金をかけるのかっていうくらい金かけるよね。30万円のステレオを買うのに躊躇する人が、40万円くらいのカーナビを平気で買うでしょう」

「クルマの運転席というのは、誰にも侵されない神聖な空間なんだね。それに例えばクルマをかすられたときの怒りかたって、普通じゃないよね。塗装料数千円で済むところでも、まるで自分のペットに怪我させられたかのように怒るからね」

植山「物じゃないかのように(笑)」

窪田「そうそう、物じゃない扱いだよね。僕はパソコンてそれだと思うんですよ。つまり、その中では自分はわがまま放題できるということ」

植山「僕もそういうタイプですけどね。Mobile Gearとかも、絶対PocketLinux入れてやるぞとか、何でこういう使いにくいPIMを使わなきゃいけないんだとか思う」

窪田「それはすごく健全なの。それが本来の人間の姿と僕は思うよ。だからそういう意味で、パソコンというのは生き残り続けると思うんだ。ただ、機能が増えるかというと、もう、とりあえずわがまま放題を実現させてくれるようになったから、あとはモバイルやウェアラブルといったサイバーな方向に進化していくでしょう」

「それまでは、さすがに今のパソコンと言えども、もうちょっと進化を続けなければいけない。次のステップにいくのは結構大変だよ。ウェアラブルということは、それこそわがまま放題。洋服なんて軽いでしょ。身に付けるものが重量1kgなんてとんでもないよ。それに女の子だったら、『電池熱いわよ、汗かいちゃうじゃない』ってなるよ(笑)。『もっと涼しくならないの? それに消費電力が10分の1でパワーが10倍にならなくちゃダメよ』とか言い出すから。おしゃれじゃないとかね(笑)」

「そうするとものすごい技術的な進化が必要なわけだよね。でも今のが100倍パフォーマンスが上がって、消費電力が10分の1になれば、女の子も身に付けてくれるようになるはずだよ。でも実現には相当時間がかかるよね。次の進化までには、たぶん10年くらいかかっちゃうんじゃないかな」

「そういう意味で、LinuxもほかのOSも、すべてプラトーに達してきてるのかなと思う。特にLinuxは進化が激しいから、Windowsにどんどん追いついて、追い越すところでほぼ並ぶ。それから先は仲良くいくのかなって感じだよね。そうなると、わがままを認めてくれる点、価格が安い点、安定性の点なんかで、Windowsには多分勝ち目はなくて、Windowsは徐々にフェードアウトしていくと僕は思ってる。特に被害がきついのはNTだよね。僕はマイクロソフトを目の敵にはしてないけど、それは時代の流れだからしょうがないよね」

最後に、ユーザーとRed Hatへメッセージ

窪田「僕らとしてはRed Hatは今でも技術的には優れてると思い続けている。だけど経営的にはちょっと不安定な面があるので、わが社で独自にRed Hat系、およびRed Hatをサポートしていく。世界にもほかに成功している例がいっぱいあるけれども、わが社もbetter Red Hatを目指す。昔のコンパックになるべく努力をするということですね。お客さんによりよいLinuxを提供するというのが抱負です」

「まあ、ぼくも口が悪くて良くないんだけど、Red Hatが金を独占するのが目的だったら、別にかつての仲間を切っても法に違反している訳じゃないしね。気持ちは判らないでもない。しかしあまりに彼らの取り扱いが悪く、さすがに腹に据えかねたのでちょっと言わせてもらった。お客様に迷惑のかからないように、と考えていたのだけれど、そのへんも彼らには理解してもらえなかったのが残念だったね。まあ、とりあえず喧嘩はこれで終わり。もとより、Red Hatの経営陣には個人的には何の恨みも無いし。これからはどちらがより良い日本のディストリビューションを日本人のお客様に提供できるのか、フェアプレイで勝負ってとこでしょう(^o^)」

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