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時事ニュースを読み解く “津田大介に聞け!!” 第29回

法律が現実に追いつかない──津田氏、私的録音録画小委を総括

2008年12月27日 12時00分更新

文● トレンド編集部、語り●津田大介(ジャーナリスト)

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民間の努力で「黒」や「グレー」を「白」に

── 3年間見てきて、小委員会という場についてはどう評価 されますか?

津田 ネットやデジタルコンテンツのあり方がめまぐるしく変わっていく中、文化庁で数年かけて出した議論だけで現実に即した著作権の運用ができるのかというと、難しいだろうなというのが正直なところです。

 現に小委員会が開かれていた3年の間、「YouTube」や「ニコニコ動画」といった動画共有サービスは大きく成長してしまった。そして、彼ら自身で著作権者と直接交渉し、今まで「グレー」だったり「黒」だった行為を「白」にする努力をしてきています(関連記事)。

 ネットに合わせて法律が変わったわけではありません。法律で間に合わないことを、現場がビジネススキームをを工夫したり、契約制度を変えることで、何とか法律に合わせてきたわけです。

 逆に言えば、著作権は契約でオーバーライドしてしまえばどうとでも対応できるということでもあるのですが、著作権がもう少し現実に即した形になっていればそういうオーバーライドも楽になるわけです。

オーバーライド 法律とは違う取り決めを作ってそれを優先させること。

 改正まで数年かかる今のやり方は、一回どこかのタイミングで大々的に変えなければいけないと思います。ひとつのきっかけになるのは「フェアユース」でしょうね。フェアユースは、米国の著作権法で定められている、利用目的が公正なら、著作者の許諾なしに著作物を使えるという規定です。

 フェアユースをどういう形で日本に取り入れるのか、それはまだ政府や文化庁の中でも議論している途中です。しかし導入されれば、「ダウンロード違法化」の実施で生じるいくつかの懸念点を和らげてくれる部分もあるでしょうし、そういう意味でも期待しています。

 あと個人的に重要だと思っているのは、狭いところで議論をするのではなくて、話し合いの場を広げる必要があるということですね。


── といわれますと?

津田 昨今のネット上の著作権侵害における本質的な問題は、著作物を不正にアップロードするユーザーが多すぎて、権利者が処理しきれないという点にあります。それを解決するには、まず「プロバイダー責任法」の最適化が必要です。ただ、これは文化庁ではなく、総務省の管轄なんです。

 今、行政における著作権やコンテンツの議論は、文化庁のほかに、総務省、経産省、知財戦略本部など、さまざまな場で開かれています。問題は、それぞれの役所が連携していないところです。その「縦割り行政」を変えて、大きな話し合いの場を設けないと、今回著作権者とJEITAとの間に起こったような衝突がまた発生するんじゃないですかね(関連記事)。

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