マイルドな音調は、ボーカルに最適
今回は、SA8003と同時に発表されたプリメインアンプ「PM8003」と、B&Wの「CM7」を組み合わせて試聴した。出音に関しては、ボーカルを担う中音域が豊かに広がる。一方で、トライアングルのような金属的な音もひずみなく澄んで前に出てくる。
低域の締りなどを比較すると、PM-17S1のほうがハッキリしている。ワイドレンジで全体的な情報量も多いが、若干分析的な印象もある。ポップスなどボーカル中心の曲なら、SA8003は聞きやすく好印象だ。iPodとの接続時でもこのあたりの持ち味は変わらない。PM8003との組み合わせのせいかもしれないが、全体にソフトで柔らかい。VSA-LX51の明晰で透明感のある音と対照的だ。
もうひとつ忘れてはいけないのがヘッドホン端子である。マランツ製のSACDプレーヤーはその品質の高さに定評がある。SA8003でも、ハイスピード/ローノイズの高品質なオペアンプに高速電流バッファー付加したものとなっている。
こちらは、ゼンハイザーの「HD25-1:2」、SHUREの「E4c」を使って試聴してみた。まず、iPod Classic 160GBのヘッドホン端子との比較だが、実は傾向が似ている。iPod Classicは、iPod 5Gまでのウォルフソン製DACに対し、シーラスロジック製DACを採用している。このあたりの共通点が利いているのだろうか。
もちろん品質に関しては、SA8003が勝っており、音の分離や情報量に差がある。ただし、印象としては、意外に近いなと思わせる。iPod Classicのヘッドホン出力の品質は、ポータブル機として比較的優れているということなのかもしれない。
なお、SA-17S1との比較では傾向は明らかに異なる。誤解を恐れず、誇張気味に書くと、SA-17S1はワイドレンジで多少ドンシャリ気味、SA8003は中域重視のカマボコバランスといった感じである。実際に聞こえる音の数はSA-17S1のほうが多く、Hi-Fiという観点ではSA-17S1に軍配が上がる。聞きやすさという点では好みの差が出そうだ。いずれにしても結構な差があるように感じる。