魅力
ではオタクは、それまで恐怖対象でしかなかったヤンデレの何に萌えているのだろうか。
まずヤンデレには、狂ってしまうほどに自分を愛してくれるという嘘偽りのない一途な愛が感じとれる。そこには純粋に美少女が自分だけを見てくれているという盲愛が存在し、裏切られることはないという確証にもなっている。
それならば「やきもち」程度で十分という気もするのだが、大量に生み出され消費される美少女コンテンツではその程度の描写はさんざんに見飽きてしまい、「本気で自分が求められている」というもっとも過激な恋愛の確認手段として台頭・認知されてきたのである。
また、残酷なシーンを楽しむという背徳的な楽しみも確かに存在する。2メートルを超える筋骨隆々な男と、虫も殺さないような顔の制服に身を包んだ可憐なお嬢様。両者がチェーンソーを持って暴れたとき、どちらの方がよりスリリングだろうか。後者の方がギャップが激しく、異常性が極まっているとは感じないだろうか。
普段のギャルゲーや美少女アニメでは、当然ながら女の子たちは優しさに溢れた慈愛の象徴として、暴力とは真逆の存在である。しかし、そんな安全・安心の萌え系美少女が刃物を持って猟奇行為を行うことが生み出す意外性とインパクトを、ホラー映画を楽しむような観点から堪能しているのである。
そして矛盾するようだが、上記とはまったく正反対の感情からヤンデレが支持されることもある。それは病んでいくヒロインへの同情だ。虐げられ、捨てられることで、どんどん心が壊れていく美少女に感情移入していく憐憫の気持ちは人としてごく自然の感情だろう。
さらに、そのような不遇なヒロインが爆発して反撃に転じる時のカタルシスにも注目したい。前述のゲーム「School Days」のヒロイン・桂 言葉はクラスメイトからイジメに遭い、親友に彼氏を奪われるという絶望から一転! 狂気に身を委ねることで寝取った西園寺世界の殺害に至るという過激な逆襲劇が喝采を呼んだ。
医学的に見たヤンデレとは?
ざっとヤンデレについて振り返ってみたがいかがだっただろうか。次のページからは、精神科医の吉田 眞氏にヤンデレに関するインタビューを行なった。医学的に見たヤンデレとはどういうものなのだろうか!?
(次のページへ続く)