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呑んでるだけじゃ気づかない

ビール缶が知らぬ間にエコ仕様に

2008年08月01日 19時19分更新

文● 熊谷朋哉(スローガン)

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月刊アスキー 2008年9月号掲載記事

年々小さくなっているビール缶

缶の材料であるアルミニウムの節約のために、ビール缶のフタと底は実は昔より小さくなっている。

 暑い季節には毎日口にするビールの缶の形状が、以前とは微妙に異なることにお気づきだろうか?

 上の写真をご覧いただければわかるとおり、ビールのアルミ缶の形状は、シンプルな円筒形から上ぶたと底面が小さい形へと、実は年を追うごとに変更されている。

 近年主流の缶は「204缶」と呼ばれる、上ぶたの直径が62.25ミリのもの。以前は上ぶた部分の面積がより大きな缶が一般的だったが、すでに多くのメーカーが204缶へと転換している。早かったのはキリンビールで、'94年時点から204缶を市場に投入し、ビール業界の容器軽量化やリサイクル促進の動きをリードしてきた。

 一方、サッポロビールは2009年前半までにはすべての缶製造ラインを204缶へと切り替える予定だという。切り替え完了後には、2006年比で年間約540トンのアルミニウムを削減できる。

 そしてアサヒビールは、上ぶたの半径はもちろん、円筒部分との貼り付け部の形状を変更することでさらなる軽量化を図っている。ビール充填時に窒素ガスを封入し、内部から圧力を加えることで強度を維持しつつ、円筒部分の肉 厚も減らした。これによって、1缶あたりの重量は約4割も軽減されたという。

 各社が204缶へ移行する理由は、コストの削減と環境への配慮だ。ビール缶の構造上、上ぶたと底にはある程度厚みが必要であり、この面積の縮小はそのまま原材料と重量の軽減へと直結する。アルミニウムの原料であるボーキ サイトは99%を輸入に頼っており、原油価格の高騰による輸送コストの上昇と併せ、缶の軽量化によるメリットは小さくないだろう。

 環境面では、アルミニウムを製錬するエネルギーの大きさが問題になる。アルミニウムの性質上、ボーキサイトからアルミニウムを製錬する際には、大きな電力を必要とするからだ(なお、一度アルミニウムに製錬されれば、ボーキサイトから製錬するときのわずか3%のエネルギーでリサイクル可能)。アルミニウムの使用量を減らすことは、電力消費の面からも意義は大きい。

 普段何気なく目にしている身近なビール缶の形状の中にも、環境への配慮と企業としての収益確保とをうまく重ねた無数のノウハウが込められている。

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