大手家電メーカーが抱える数々の“障壁”
ネットと家電の相性は“品質管理”という面でもよくない。家電は0.1%以下など非常に低い故障率を目指して開発されているのに対して、ネットは定期メンテナンスで一時停止ということが当たり前のようにある。
「ネットにあまり触れない家電ユーザにとっては、家電は毎日動いていて当然のもの。サーバメンテナンスなどが起こるインターネット文化は理解されにくいはずです。そうなると、家電メーカーはネット家電を作る際にも品質管理の基準を家電に合わせざるを得なくなります。しかし、ネットでその品質基準を確保しようとすると、莫大なコストがかかることになってしまうのです」
そもそも家電が売り切り型のビジネスモデルになっているのは、家電量販店との関係の深さが影響しているという。
例えば昔、とあるメーカーがハイエンドモデルとスタンダードモデルをほぼ同時期に出した。その後、ハイエンドとスタンダードの機能差を埋める有償バージョンアップをネット経由で配信・実施することになったところ、家電量販店からネガティブな反応があったという。
「通常ハイエンド機とスタンダード機の差額は量販店とメーカーでシェアされますが、ネット経由ダウンロードには量販店が関与しないため、上位モデルとの差額分の利益がメーカーにだけ入る仕組みだったのではないかと推測できます」
このように、大手家電メーカーが抱える数々の障壁は、逆に岩佐さんのようなベンチャー企業にとっては有利なものとなる。大手メーカーが埋められないユーザのニーズに応えられる可能性が出てくるのだ。
「これまで述べてきたように、家電業界というのは製造から管理、販売、マーケティング、流通とすべて売り切りを前提に作られているのです。そこに、大手家電メーカーが専用性の高いネット家電を作れない側面がある。一言で言ってしまえば、『先進的なネット家電を大手家電メーカーで作るのは非常に難しい』のです」
こうして、その先進的なネット家電を作るために、岩佐さんはベンチャーを立ち上げた。しかし、家電でベンチャーというのは、日本であまり聞かない話だ。家電を作るのには、費用が何十億もかかるのではないだろうか? そして、経営上の問題はないのだろうか。
(次回、明日7月9日公開予定・後編に続く)
- ■取材協力
(株)Cerevo
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