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パソコンを載せるだけでネットにつながるシート登場

無線LANの次は2Dの「面LAN」!?

2008年06月04日 08時00分更新

文● 森山和道 写真●吉田 武

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月刊アスキー 2008年7月号掲載記事

通信シートと近接カプラ

シートのカットされた部分は中身のメッシュ構造が見えているが、実際の製品の外見は普通の黒いデスクマット。これを机に敷き、近接カプラを置くだけ(シート上のどこに置いても構わない)で「面LAN」環境になる。通信速度は通常の無線LANと変わらない。

 パソコンをネットに接続するのに、1次元(つまり線)のケーブルでつなぐ有線LANは、物理的に拘束されて煩わしい。その点、3次元(空間)の無線LANは自由度が高くて便利だが、想定範囲以上に電波が飛ぶため、盗聴の危険性など、セキュリティ面で不安がある。ならば、その間をとって2次元、すなわち面ならどうだろう

 繊維メーカーの帝人ファイバーと東大発ベンチャーのセルクロスが共同開発した、2次元通信用媒体「セルフォーム」は、まさに“面で通信できるシート”だ。机上に敷いたシートの上にパソコン等の端末を置けばネットにつなげられるが、シートの外ではつながらなくなる。パソコンは、現行の無線LAN機能を装備したものでかまわない。無線LANの電波をセルフォームに閉じ込めることで、いわば「面LAN」を簡単に構築できる。シートといっても、見た目や手触りは普通のデスクマットだ。もちろん、この上でのデスク作業が可能な耐久性も持っており、今夏にはイトーキから、オフィス向けにシートとカプラが販売予定である。

 セルフォームは、セルクロス独自の基本技術に、帝人の持つ導電性の布の技術および生産技術を応用して製品化された。2枚の導電体と絶縁層を重ねた構造になっていて、薄いシートの中に電磁波を閉じ込める。シートへはセルクロスが開発した「近接カプラ」という専用コネクタを介して電磁波を流す。このコネクタから伝わった電磁波は、シート内に閉じ込められたまま波紋のように伝播する。このとき、シートの表面には「エバネッセント波」と呼ばれる電磁波が染み出る。この電磁波を、パソコンの無線LANアンテナがとらえて通信するかたちになる。面白いことに、このシートは原理的には電力も供給できる。電力のほうはまだまだ試験的な段階で、また大きな電力供給は難しいが、将来はワイヤレス給電の媒体としても使えるかもしれない。

 もともとはロボットの皮膚センサを目指して開発されたこの技術。フレキシブルな布状に加工することも可能という。病院や飛行機の中といった電波の利用が制限されている場所での応用など、いくらでも用途は考えられそうだ。帝人では3年後の事業規模を10億円と予想している。

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