Airのスペックは妥協なのか? 進化なのか?
石坂 MacBook Airだけど、アップルはAirの機能面を一切妥協していないと説明しているようだね。Airはサブノートといっていいのかな? サブノートだとB5サイズというイメージがあるけれど、それとも新しいジャンルの製品なんだろうか?
小林 サブノートはメインマシンが必要だから1台だけでは完結しない。だからサブノートは機能をいくらか削っても許されるところがある。アップルも中途半端な製品だと思われたくないので、サブノートとあえて言わないのかもしれません。
柴田 光学式ドライブが非搭載のノートは、サブノートといってもいいよね。だけど、Airの重量は1kgを切っていないからサブノートじゃないという人もいるかもしれない。
石坂 これまでのWindowsのサブノートを見ると、1kgを切るのは技術的にもハードルが高いよ。例えばLet'snoteとかね。
中筋 でもジョブズは、キロじゃなくてポンドの単位で考えていると思うんです。米国のアップルのサイトを見ると、Airの重量は3ポンド(1.36kg)と書いてある。ポンドの単位で見るとAirの重量はとてもキリがいいんですよ。
石坂 それは気がつかなかった(笑)。
柴田 これはAirを分解すればわかるけれど、バッテリーを除けばいちばん重いパーツは液晶部分。13.3インチの液晶ディスプレーを採用することを決めた時点で、重量を極限まで落とすことは最重要じゃなくなったと思う。
野末 そうですね。ディスプレーとキーボードをより小さくして使い勝手を妥協すれば、1kg未満のノートを作ることはできたかもしれない。だけどアップルはその選択をしなかった。
柴田 つまり、Macとしてのユーザビリティーを大切にしたわけだ。でも、光学式ドライブを搭載しなかったことは妥協と見られるかもしれない。薄さを追求したからね。アップルとしては「ドライブはもはや必要ない、ネットからダウンロードすればいい」というメッセージなのかも。その割り切りのよさがアップルらしいよね。
中筋 あとはFireWireポートとEthernetも搭載しなかったです。
石坂 データの受け渡しは全部無線でやればいいということなんだろうね。
小林 最近はCD-ROMからソフトをインストールする機会が以前よりも減った。だから光学式ドライブがなくても意外とOKなんじゃないかと思う。DVDを見たり、音楽CDのリッピングはiTunes Storeからコンテンツをダウンロードすればいいということですよね。
中筋 アップルはiMacやiPod、iPhoneなどの成功でパソコン業界のトレンドセッターとして期待されているようなところがあるから、大胆な展開ができるのかもしれません。
柴田 アップルは、昔からなくなると困るんじゃないかと思うアーキテクチャーをスパッとやめるのがうまいよね。光学式ドライブも以前から早くやめたかったんじゃないかな。アップルは何らかの外部的な記憶メディアに依存したくないというか、そもそもMacそのものがメディアなんだと考えている。だから、余計なものはできるだけ付けたくないと思っているのかもしれない。
野末 日本のパソコンは家電メーカーが作っていることがほとんどだから、VAIOにはメモリースティックスロット、Let'snoteにはSDメモリーカードスロットといったものを付けないと出せないところがある。アップルはそういったメーカーのしがらみがないのが強みだよね。とはいえ、CD-ROMドライブを初めて搭載したパソコンメーカーはアップルだったりする。
柴田 そのときはジョブズがCEOじゃないから(笑)。
野末 SuperDriveを搭載したPower Mac G4を発表したときのジョブズは誇らしげでしたよ(笑)。
小林 でも、どうしてアップルはVAIOと比較するんですかね?
中筋 いろいろな話を聞くと、米国でデザインが優れているノートはVAIOくらいしかないんですよ。
柴田 そうかもしれない。レノボやデルなどのノートPCはビジネス向けで、カタログスペックが優れていても見た目が地味だし、洗練されたデザインとは言えない。
小林 ジョブズの審美眼で見て、ぎりぎり許されるノートPCがVAIOだったのかもしれないですね。
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