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世界のあらゆる液晶は“倉敷産”か“西条産”!?

“ミラバケ(ッ)ソ。”のクラレはすでに世界の8割を握っている

2008年02月29日 23時30分更新

文● 中西祥智(編集部) イラスト●永野雅子

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月刊アスキー 2008年3月号掲載記事

あらゆる方式の液晶に必ず2枚必要な偏光フィルム

液晶パネル構造

液晶分子で光の偏光(振動する方向)を変えて明滅を制御する液晶パネルにとって、偏光フィルムは欠かせない部品だ。

謎の「ミラバケッソ」という言葉をさまざまな人々が唱える、俳優の成海璃子さん出演の不思議なCMを目にされた方も多いだろう。これは、化学・合成繊維メーカーであるクラレのCMだ。ミラバケッソとは「ミラいにバケる新ソ材。」を略したもので、同社による造語だ。

2006年度の売上げ比率

2006年度の売上げ比率。創業事業は繊維だが、現在はアクリル樹脂やポバール、壁紙・包装材用の「エバール」等の化成品・樹脂事業が主力。

1926年に岡山・倉敷で倉敷絹織(のち倉敷レイヨン)として創業したクラレは、関西での知名度は高いが、関東では馴染みが薄い。優秀な人材の確保を主目的として、若年層に「クラレという会社に気づいてもらう」(同社広報)施策のひとつがこのCMだという。

もっとも、クラレは未来だけでなく現在においても、人工皮革「クラリーノ」や「ビニロン」繊維など、すでに大化けした繊維や樹脂、化成品を数多く開発・製造している。

その中でも注目したいのは、「ポバール」という水溶性の樹脂。文具のりや接着剤のほか、インクジェット用紙のコーティングにも使われる。そして、このポバールはいま、携帯電話から大画面テレビに至るまで、あらゆる液晶パネルに欠かせない材料になっている。

ポバールフィルム

ポバールフィルム。このフィルムをさらに薄く引き延ばし、ヨウ素で着色すれば偏光フィルムとなる。

液晶パネルは基本的に、液晶分子を2枚の「偏光フィルム」で挟んだかたちになっている。この偏光フィルムの材料として、ポバールを薄く伸ばした「ポバールフィルム」が適しているのだが、光学用ポバールフィルムを製造しているのは世界でもたった2社しかない。そのうちの1社がクラレで、しかも実に8割の世界シェアを握っている。

クラレのポバールフィルムは、その全量を岡山県倉敷市と愛媛県西条市の同社工場で製造する。シャープの液晶は“亀山産”だが、韓国・台湾メーカー製も含め、世にある液晶のほとんどは“倉敷産”と“西条産”の部材でできているのだ。

株式会社クラレ
本社:東京都千代田区大手町1-1-3
創業:1926年
代表者:代表取締役社長 和久井康明
資本金:約889億円
従業員数:6812名(2007年3月末時点)

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