クチコミデータベースを武器にリアルに切り込む
ここまで紹介した機能や運営方針はクチコミレビューサイトとして必ずしも特別ではない。たとえば家電製品、飲食店などで同様のサービスは多い。ただアットコスメの成功のベースとなるのは化粧品という商品の特性にある。「化粧品である理由は3つあります。1つはマーケティング費用の比率が1番高い業界だったんです」。日本の全広告費6兆円のうち、1位は食品で広告費4000億円。それに続くのが化粧品で広告費が3400億円である。しかも全体の売上が1.5兆円なので、売上に対する広告マーケティング費用の比率が20%以上もあり、ビジネスチャンスが多かったのだ(食品は5.7%)。
「2点目は再販制度で価格競争が少ないこと。3点目は流通構造に問題があること。マスプロモーションされ、リベートが多く払われる商品が店頭に並び、それを買わざるを得ない」。創業者で代表取締役CEOの吉松徹郎氏は、特に3点目の流通改革に意欲を燃やしているという。消費者に支持される本当に良い商品がきちんと売れるようプロモーションしていくという姿勢が、ユーザーとメーカー両方に支持されたようだ。そして、そこに“人”と“情報”が集まる場ができた。「アットコスメはインターネットで化粧品を専門にした“道”です。その道を通る人向けに看板=広告事業をしたり、店舗=EC事業をしたり、アンケートをしたり、サンプルを配ったり、いろんな事業をしています」。
アットコスメの現在の収入の7割はバナー広告やタイアップ企画だが、蓄積したクチコミDBの活用も図っている。化粧品メーカー各社のCRM(Customer Relationship Management)では、どうしても自社製品購入ユーザーのデータしか見えないが、むしろ本来リーチしたいのは、ライバル社製品のユーザーのはずだ。アットコスメのクチコミDBはすべてのブランドの製品とユーザーが横並びで存在している。これを利用すれば、各社がお互いのユーザーについて知ったり、プロモーションできる。これを「CmRM=Community Relationship Management」と呼んでいる。
さらにリアル店舗開拓支援にも乗り出した。従来の化粧品店ではどうしてもメーカー別の縦割り展示になり、またBA(ビューティーアドバイザー)と呼ばれる販売員も、メーカーから派遣されたBAの場合、自社製品以外の知識を持たない例も少なくなかった。そこで今年3月に新宿ルミネにオープンした「アットコスメストア」では、サイト上のクチコミランキングを元にブランド横断で商品を展示。またクチコミを素早く検索できる端末を店内に置き、ネットの情報をリアル店舗に繋げている。今後はさらに多くの店舗へのコンサルティング事業や店頭での携帯電話によるクチコミ検索、BA向けの 情報支援など、クチコミデータベースを核にした事業を目指している。
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