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IPA SECが設立3年の成果を報告、「ベストプラクティス賞」の発表も

2007年11月20日 21時17分更新

文● アスキービジネス編集部

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独立行政法人情報処理推進機構(IPA)のソフトウェア・エンジニアリング・センター(SEC)は、11月20日、東京都内で記者会見を開き、これまでの活動内容について報告した。併せて、SECの成果物を実際に活用している企業・団体をベストプラクティス賞として発表している。


23冊の出版物と3つのツール、今後は開発現場への普及がカギに


 ソフトウェア・エンジニアリング・センター(SEC)は、ソフトウェア開発におけるプロジェクトの失敗や品質トラブル解決のため、2004年10月、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)内に設立された組織である。エンタープライズ系プロジェクト、組み込み系プロジェクト、先進プロジェクトの3つのプロジェクトからなり、計49名のスタッフと369名のタスクフォースメンバーで活動。「産学官連携の“要”の役割を果たす」(SEC)として、産業界と学界とのマッチングにも取り組む。

IPA SECが設立3年の成果を 報告、「ベストプラクティス賞...

IPA SEC所長 鶴保征城氏

 具体的な活動内容は、ソフトウェア開発の手法・技術に関する基準の作成、関連ツールの開発およびこれらの普及啓蒙活動が中心。たとえば出版物では、54社1700件の開発事例を収集・分析し、定量データとしてまとめた「ソフトウェア開発データ白書」など、計23冊をこの3年間に刊行した。

 また、ツールでは、「プロジェクト可視化(EPM)」「定量データに基づくプロジェクト診断」「組み込みコーディング作法ガイド準拠テストツール」の3つを開発。EPMツールはすでに公開中で、プロジェクト診断ツールは来年1月、テストツールは今年12月の公開を予定している。このうちプロジェクト診断ツールは、先述の「ソフトウェア開発データ白書」のデータベースをもとに、自社のプロジェクトの相対的なレベルを把握できるようにするもの。開発プロジェクトの改善や効率化に大きな効果が期待される。

 だがいくらこうした優れたツールを開発しても、重要なのは、いかにして企業に使ってもらえるか、つまりは普及させるかだろう。現在、ツール類の実証実験に参加しているのは95社。SEC所長の鶴保征城氏は、「たとえばEPMツールの必要性は認識していても、全社標準として採用している企業はまだわずか。大半は従来のやり方に慣れ親しんだ技術者を大勢抱えており、意図は伝わっていても踏み切れない状況が続いている」と指摘する。

 SECでは、「じわりじわりと共通認識として広まりつつある。着実に業界内に広めていきたい」(鶴保氏)と、今後も成果物の普及活動に力を入れる方針。同日には、SECの成果物を活用している企業として、グローリー、東海大学、トヨタ自動車など8社が「ソフトウェアエンジニアリングベストプラクティス賞」として発表された。

「ベンダーよりもむしろ、リスクマネジメントの観点でプロジェクト管理をきちんとしたいという意向がユーザー側で高まっている。ユーザーが背中を押しながら、躊躇しているベンダーがついてくる構図になるのではないか」。鶴保氏は今後の動向についてこう期待を込める。

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