ITの世界では日々新しい技術が現れ、それらを用いた開発も行なわれています。エンジニアにとって、それらをキャッチアップしていくことは大変なことではありますが、しかしそれだからこそ、この仕事は面白くもあるはずです。
最近の技術でいうと、Ajaxなどもその1つでしょう。一昔前(と言っても数年前くらいでしょうか)にJavaScriptを少しかじった人の中には、Ajaxが流行したことによって勉強をしなおした人も多いはずです。このようにコンピュータ言語1つとっても、その時々の“はやり”があり、忙しい中でもクライアントの要望にできるだけ応えられるように、最新の技術は身につけておきたいものです。
そこで、必ずしも1つ1つの言語を1から覚えていく必要はないと考えてみてはどうでしょうか。“1から”というのがポイントです。たとえばAjaxは、JavaScriptとXMLを梯子とした技術なので、JavaScriptとXMLさえ知っていれば、あとは「応用のされ方」を身につければいいのです。AjaxにとってのJavaScriptのように、ベース(核)となりうるものの1つが、今回紹介する「ECMAScript」です。
ECMAScriptは、ヨーロッパ電子計算機工業会(ECMA)によって作成されたスクリプト言語です。JavaScript(JScript)の初期におけるInternet Explorer(以下、IE)とネットスケープなどのブラウザにおける実装の違いによる混乱を収拾すべく作成されました。現在、FirefoxのJavaScriptやIEで使用されるJScriptなどとして実装されています。さらにECMAScriptはブラウザだけではなく、AdobeのflashにおけるActionScriptや、DreamWeaverのエクステンション、Mac OS XのDashboard、.NETやVistaのガジェットなどを書くためにも使われています。
このようにECMAScriptは広く利用されており、ベースとしてECMAScriptを知っておけば、さまざまな場で応用できます。しかも、flashなどAdobeの各製品、FirefoxやIE、GadgetやWidgetとして動いている場合はその環境を理解する上でも非常に有益です。ECMAScriptを理解することで、それぞれの環境で利用されているJavaScriptやActionScriptに横串を入れることができるからです。また、そうすることで、それぞれの違いを際立たせたり、より適切な利用ができるでしょう。
確かに、同じECMAScriptをベースにした言語でも、たとえば細かな違いが存在します。しかしベースとなるECMAScriptを学んでおくことで、個々の実装された言語に対して、メタ言語的な位置づけをもたらすことができるのです。つまり、C言語を学ぶことがJavaやPHPなどのさまざまな言語で役立つように、ECMAScriptをはじめ、ベースとなる技術を基礎として学んでおくことが大切なのです。
またさらに、ECMAScriptは技術者と技術者以外との境界が不明瞭になっている領域で利用されていることが多く、身につけておくことで、デザイナーなどの専門家と協調的に仕事をする機会が増えます。活躍できるフィールドを広げるという意味合いにおいても、「ECMAScript」を身につけておいて損はありません。
Illustration:Aiko Yamamoto
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