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エンジニア進化論 第13回

最終回 オフショア時代を生き残るエンジニア

2008年02月15日 16時10分更新

文● 中山康照

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 「オフショア」という言葉は、エンジニアに「自分の仕事が将来なくなりかねない」と戦々恐々とさせ、IT業界を目指している人には業界の将来性に対する懐疑的な見解を持たせる要因になっています。確かに労働市場における競争が世界的なものになった現在、海外では特にインドや中国、ロシアの伸びが顕著であり、国内においても、依然言葉の壁があるとはいえ、オフショア開発の影響が私たちのもとにないとは言えません。

 では、もしこのオフショアが進む現状を考慮し、一人のエンジニアとして個人的な視野に立ったとき、どのように将来のキャリアを築くことができ、どのような自身の進化のありようが、将来の自分の生存率を高める方策になるのでしょうか。

 著者は「移したくないもの」の発想を大事にすることをおすすめします。そもそも「オフショアが可能である」ということは、「業務を物理的に離れた場所に移転できる」ことが条件です。であるなら、この単純な事実は、逆に言えば「移せない」「移したくない」ものに関しては“手元に残る業務”と考えられます。

 まず、高いレベルのコミュニケーションが必要な業務や、オフショアとの窓口としての業務など、文化的なバックグラウンドを要請される業務などが「移せない」業務と言えるでしょう。例えば筆者の業務の中では、ITに不慣れなクライアントとのやり取りがそれにあたると考えています。言語的な行間を読み取ることや、業界に関する暗黙知的な理解が常に問われる業務、要件を定義する仕事もオフショアしづらい業務です。このように個々のケースバイケースで対応する必要がある業務や、人や現場への粘着性の高い業務は、なかなかオフショアには回しにくいでしょう。またオフショアの窓口となる仕事も当然ですが増えることはあっても減ることは考えづらいと言えます。ITの開発においても、開発するモジュールなどを指示がなければ、いくらオフショア先が優秀でも、作るということはできないからです。

 もう一つ、このような状況下で著者が大切に思うことがあります。それは自分のやっている仕事が好きなこと、真剣に打ち込んでいることこそが大事なのだということです。かつて若きエンジニアたちは、国内外の素晴らしい先人たちが築いてきた歩みに憧憬の念を抱きながら、「いつか少しでも近づきたい」と日々ハックに勤しんだものです。IT業界も「仕事」としての安定性が高まるにつれて、ときめく機会が少なくなってきているかもしれません。ですが、よく目を凝らしてみれば、国内にも後進の鑑になるような素晴らしい技術者や、ソフトウェア、事例が数多くあります。そういう高みを目指すには、やはり彼らと同じような情熱が必要になります。ですから、まずは今一度自分の仕事を好きになり、楽しんでやることを、エンジニアとしての進化の一歩としてみて下さい。

Illustration:Aiko Yamamoto

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