超人たちの握力技に興奮
「私たちが目指すのはストロングマン級の握力だ。潰したり、握ったり、保持したりする“手の力”を極限まで伸ばしたいのである」
「握力王」裏表紙にある一文だが、もうのっけからアツイのだ! 握力王というくらいだから、この本の目指すのは生半可な強さではない。それこそ超人クラスの握力なのだ!
世界最高クラスの握力保持者の中には、MAX150kgの握力計を振り切ってしまう者もいる。そんな超人たちであれば、「りんご潰し」くらいは当たり前。「両手で直径2cmの鉄の棒を捻じ曲げる」、「蹄鉄*を捻じ曲げる」、「生のジャガイモを握りつぶす」(生のジャガイモはリンゴよりもめちゃくちゃ硬い)、あげくの果てには、片方の手で54枚重ねたトランプをしっかりと持ち、その一部をもう片方の手でつまんでちぎり取るという荒業をやってのけるというのだ。
トランプちぎりといえば、漫画「グラップラー刃牙」のキャラクター「花山薫」でお馴染みだが、実際にやってのける人物がいるというのだから驚きだろう。
*馬のひづめに付ける、鉄でできたU字型の製具
マッチョ文体に引き込まれる
この本は、超人的な握力を身に付けるためのトレーニング方法がぎっしり詰まっている。バーベルのプレートをつまみ上げるやり方や、柄の長いハンマーや斧を使うといった独創的な方法から、ポピュラーなトレーニング器具「ハンドグリッパー」の正しい使い方まで幅広い。
一般的な「柔らかいハンドグリッパーを何十回もこなす」というやり方は、実は間違った方法であるなど、なかなかためになる内容だ。
トレーニング解説はもちろんだが、この本にはさらなる魅力がある。全編において文体がマッチョで最高なのだ!
「缶ビールが目の前にある。普通ならみんな缶のふたを開けて飲もうとするわけだが、私たちはそれをどうやって握り潰すかを考えてしまう」(「握力王 vol.II」より)
といったものから、
「200kgのベンチプレスを上げることができるのに、握力は大したことがなかったりする人たちがいる。まるで排気量は大きいが、牽引できないトラックのようなものだ。そこで生まれたのが、車で言えば四輪駆動車、すなわちグリッパーである」(「握力王 vol.II」より)
「すなわちグリッパーである」ってどうゆう理屈?? と思わず突っ込みたくなるようなマッスル節全開の文章が繰り広げられているのだ! さらに、強い握力を身に付ける利点として、
「物騒な昨今の世の中で、強い握力を持っているがために、命を守ることができたりするのだ」(「握力王 vol.II」より)
なんて文章も飛び出したりする。これは、「どんな年寄りでも並外れた握力があれば、血の気の多い若者にも一目置かれるだろう」というもの。ある悪ガキだらけの高校では、強力な握力を持っているがゆえに、決して生徒たちに喧嘩を売られなかった教師がいたというエピソードがあったそうだ。
このように、「握力王」シリーズは、トレーニング本としてだけでなく、読み物としてもかなり面白い。ぜひ一読をお勧めする。
次回は、実際のトレーニング方法をお伝えしよう。「握力王vol.II」で語られている世界最強のグリッパー、「キャプテンズ・オブ・クラッシュグリッパー」の話だ。