レンズのズーム機能を積極的に活用して画角を調整する
絶景地における撮影では、鉄道列車以上に背景こそが重要な被写体だ。だから、適度に離れた撮影位置から、背景をできるかぎり無理のない描写でフレーム内に収めたい。しかし、撮影者が撮影位置を自由に選べるほどに広い絶景撮影地というのは少ない。だから、多少パースが変わってしまっても、撮影位置を足で調節する代わりにレンズのズームで画角を調節することになる。
タム・グラセー橋の撮影では、手前を流れる小クウェー川、木製の鉄道橋、削り取られた絶壁の山肌、空という全景をフレーム内に自然な描写で納められるには、実効焦点距離が24~28mmあれば十分だ。
鉄道と絶景地という組み合わせというのは、世界のどこへ行なっても撮影条件は似たような物だ。ボクの経験では、日本、タイ、カンボジア、インド、ネパール、アメリカのどこでも、標準ズームの使用率が異常に高い(だからこそ標準なのだろうけれど)。言い換えれば、筆者が好む国々では望遠系レンズを使用できるほどに撮影条件に恵まれることはほとんどなかったということだ(画角、撮影位置、気象、政治などの総合的な条件によって)。
雨季と乾期を見極めて訪問するのが大事
ところで、機材選び以上に大切なのは海外への訪問時期選びだ。滞在期限内に撮影を成功させるのは、タイでなら11から3月までの乾季が最適だろう。河川の水量はやや減少するが、青空を期待するならこの時期に訪れるべきだ。
それ以外の季節はどん曇りの天候が多いだけでなく、激しい雷雨にみまわれて撮影どころか移動すらおぼつかないこともある。雨季空け前の9月下旬にタイにやって来るのには、何か明確な目的がなければオススメできない! 明確な目的とやらは次回に判明する予定だ。
最後に、何の役にも立たない生活タイ語講座。タイ語でバイクは「モーターサイ」、 ガソソリン満タンは「ナム・マン、テムッ」。
筆者紹介─斉藤博貴(さいとう ひろたか)
執筆から編集までこなす鉄道系カメラマン。タイとカンボジアの鉄道を調査するために1996年より約5年間バンコクに滞在した。特技は英語とタイ語で、ライフワークは海外鉄道の撮影。最近では世界遺産として登録されたインドの「ダージリン・ヒマラヤン鉄道」と「ニルギリ登山鉄道」に通うようになった。著書に「技術のしくみからデザインまですべて分かる鉄道 (雑学を超えた教養シリーズ) 」(誠文堂新光社)がある。
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