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コロンブスの卵「思い切ってシリコンHDDという名前にしました」

2007年03月30日 22時30分更新

文● 編集部

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 ちょっとしたファイルの持ち運びに便利なUSBフラッシュメモリー。最近では価格が下がり、3~6千円で売られている1~2GBのモデルが人気だ。もう少し大きな容量が欲しいという方には、8GBを超す製品もあるが、実売価格がはね上がってしまい、少々手を出しづらい面もあった。

 そんな中、(株)バッファローが発売した『SHD-U16G』は、容量が国内メーカーでは最大の16GBにもかかわらず、価格は2万171円。実売価格では15000円台で販売してる店もあり、大容量かつ低価格を実現した製品だとして話題を集めている。

SHD-U16G写真

本体サイズは幅19×奥行き91×高さ13.5mm、重さ20g



USBメモリーだが、HDDとして認識


 バッファローは、このSHD-U16Gを“シリコンHDD”というブランドで販売している。実際にパソコンにつなぐとリムーバブルディスクではなく、ハードディスクとして認識されるという。

 実はこの製品、構造的には従来のUSBフラッシュメモリーと同じだ。それではなぜ、フラッシュメモリーにしか見えないこの商品がハードディスクとして認識されるのだろうか? 同社広報によると、仕掛けはUSBコントローラーの中にあるデバイスIDにあるそうだ。

「WindowsはデバイスIDを元に接続されたUSB機器を判別します。実は同製品は意図的にデバイスIDをリムーバブルディスクではなく、ハードディスクとして設定しています。これによって、OS側からは“ハードディスク”として見える仕組みになっています」(バッファロー広報)

 では、なぜ擬似的にハードディスクに見えるようにしたのか? その理由は「NTFS形式のフォーマットを可能にし、1ファイルあたり4GBを超える大容量ファイルを扱えるようにするため」だと同社広報は答える。

 Windows XPではリムーバブルディスクをFAT(またはFAT32)形式でフォーマットすることができるが、NTFS形式のフォーマットはできない。そこで、擬似ハードディスク化することでNTFS形式のフォーマットもサポートしたというわけだ。

 大容量化かつ、4GB超えのファイルが扱えるようになると、フラッシュメディアの新しい活用法が生まれてくる。例えば、パソコンで録画したテレビ番組のデータや、子供の運動会を撮影した動画などの大きなファイルを気軽に持ち歩き、外出先のパソコンで鑑賞するといったことが可能だ。ほかにも、自宅でデスクトップ、仕事用にノートパソコンを持ってるようなユーザーは、iTunesのライブラリーをSHD-U16Gに保存しておくことで、お気に入りの曲をこっそり仕事用のノートパソコンで聞くといった使い方もできるだろう。



USBメモリーからのブートに対応しないのは少々残念だが


 さらにOSをインストールしてブートデバイスとして使用できると便利……とも考えたが、これは残念ながらサポートしていないそうだ。

 同製品にはバックアップソフトの『Acronis True Image LE』が同梱されている。システムドライブを丸ごと1つのファイルに圧縮してバックアップする場合、ファイルサイズが4GBを超えてしまう場合も多いが、NTFSを基本フォーマットとしたSHD-U16Gならそういうケースにも問題なく対応できる。

 ただし、バックアップ用途を考えると、容量が少し小さい気もする。同社広報は

「今後は容量を増やしたシリコンHDDを順次発売していく予定です。現時点ではハードディスクとして比較してコストが高いですが、フラッシュメモリーの単価はどんどん下がっています。近い将来には、40GBくらいの外付けハードディスクをシリコンHDDに移し変えていきたいと思います」と抱負を語る。

 大容量化が進めば、サイズが小さく衝撃にも強いフラッシュメモリーは、バックアップ用としてかなり便利なメディアになる。そう考えるとNTFSのサポートは先を見据えたものであるとも考えられる。

 ひとつ残った疑問はなぜこんなに安いのか? という点だ。この疑問に対し、同社広報は以下のように答えた。

「大容量化しやすいMLC(マルチレベルセル)というチップを使っていますが、コストを下げるために、特別に新しい技術や素材を導入したわけではありません。SHD-U16Gは、弊社ではフラッシュ“メモリー”ではなく、ストレージとしての位置づけです。どんなものか分かりやすいように、思い切って“シリコンHDD”という名称をつけました。そこで、まずはシリコンHDDというものを認知してもらうために、戦略的な価格設定にしています」

 編集部で調べたところ、中国では16GBのフラッシュメモリーが999元(約15000円)で売られているケースもあるようだが、物価の違う中国市場ともほとんど価格差はない印象だ。SHD-U16Gはかなり原価に近い価格設定になっていると推測される。

 SHD-U16Gは技術的な新しさはないが、デバイスIDを変えるというちょっとした発想の転換で、フラッシュメモリーの手軽さとハードディスクの利便性の両方を取り入れたユニークな製品と言える。16GBで2万円以下という、価格破壊のインパクトはもちろんだが、この点にも注目したい。

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