11adは近距離高速通信を実現する60GHz帯を使う新規格
高速な無線LANといえば、2.4GHz帯を使う11nや5GHz帯を使う11acが主流だが、新しく登場した11adは、60GHzという非常に高い周波数帯を使うのが特徴だ。
速度を比較してみると、主流の高速ルーターで11nが800Mbps、11acが1733Mbpsというのに対し、11adはこれらを大きく上回る4600Mbps。実速度は一般的に半分程度だが、それを考慮しても、有線ギガビットLANの2倍以上も速いことになる。
また、無線LANは接続機器が増えるほど速度が遅くなっていくが、11adが併用できれば機器を分散できるため、速度低下が防げるというメリットもある。
もちろんいいことばかりではない。一般的に周波数が高いと指向性が高まり、減衰しやすくなるため、近距離でしか使えないという制限がある。従来の無線LANのように「家中どこでもインターネットに接続できる」といった広範囲で使う用途には向いていないわけだ。
こう聞くと使いにくく感じてしまうが、裏を返せば、近隣のルーターから届く電波のせいで速度が遅くなるとか、電子レンジの使用で速度が低下するといった悩みなしに使えるということ。
例えばある部屋で11adを使っていても、壁を隔てた隣室には届かないため、隣室でも11adが高速で利用できるのだ。つまり、近距離に限っていえば、むしろ有利なシーンも多くなっている。
11adがいままでの規格と少し違う点は、無線LANにかぎらず、周辺機器などとの接続にも使いやすい規格となっていることだ。実際、11adを使ったワイヤレスドックなどがすでに発売されている。
ちなみに「WiGig」と呼ばれている60GHz帯を使う無線通信規格があるが、これは11adと同じもの。元々WiGigとして開発されていたものがWi-Fiアライアンスへ合流し、11adとなった経緯があるため、この名称が残っている。ドックとの接続ではWiGig、無線LANの場合は11adと呼ばれることが多いようだ。
無線LANを高速化している4つの重要技術
新規格であれば高速化するのはわかるが、従来の11nや11acは登場後にも少しずつ高速化してきている。例えば11nの場合、当初は72Mbpsだったのが150Mbpsに高速化し、さらに600Mbpsや800Mbpsにまで高速化してきている。こういった高速化はどうやって実現されているのだろうか。
重要な技術は数多くあるが、とくに速度に影響があるのが、チャネルを束ねて使う「チャネルボンディング」、複数の通信を同時にできる「MIMO」、1度に運べるデータ量を増やす「変調方式」、通信効率を上げる「フレーム多重」の4つの技術だ。11adにも活かされているこれらの技術がどういうものなのか、もう少し解説していこう。
重要な高速化技術
・チャネルボンディング
・MIMO
・変調方式
・フレーム多重