このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

生成AI実装の“選択肢”を用意する三層のサービス群を拡充

「Amazon Q」をはじめとする生成AIサービスのアップデートをAWSが説明

2024年05月20日 07時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 アマゾン ウェブ サービス ジャパンは、2024年5月16日、生成AIサービスのアップデートに関する説明会を開催した。

 同説明会では、4月30日(米国時間)に一般提供が開始された生成AIアシスタント「Amazon Q」シリーズおよび、4月23日(米国時間)に発表された生成AIアプリケーションの構築基盤である「Amazon Bedrock」の拡張について紹介された。

 同社のサービス&テクノロジー事業統括本部 技術本部長である小林正人氏は、「現状、生成AIは『モデル』に注目が集まりがちだが、消費者が直接触れる『アプリケーション』が大切。生成AIを組み込んだアプリケーションが、新しい体験や生産性向上、新たな洞察などの価値を生み出すことが、生成AI活用の構図」と述べた。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン サービス&テクノロジー事業統括本部 技術本部長 小林正人氏

生成AI実装の各アプローチに対応した三層の生成AIサービス

 小林氏は、生成AI活用における“データ”の重要性を強調する。大量のデータが基盤モデルの構築に必要なだけではなく、企業の高度な課題を解決するためのアプリケーションにおいては、業務、業界に特化した独自のデータを、標準的な基盤モデルに付け足す必要がある。

 Amazonも社内のデータと生成AI技術を重ね合わせたイノベーションを進めており、Amazon.comでは、カスタマーレビューに最適化された要約機能を展開、買い物アドバイザーの「Rufus」では、蓄積されたデータに基づき、対話形式で商品を勧めてくれる。またAlexaも、単に応答するだけではなく、ユーザーの買い物履歴などに基づいて指示をこなすようになっている。

Amazonの生成AIとデータによるイノベーション

 独自データを生成AIと組み合わせる手法としては、与えるデータや目的に応じて、「RAG」の実装や、基盤モデルの「ファインチューニング」、「事前トレーニング」など、複数のアプローチがある。「AWSは、各アプローチを必要とした際に、すぐに実装できるようサービスの拡充を進めている」と小林氏。

 AWSの生成AIサービスは、三層構造で展開されている。一番下のレイヤーは、基盤モデルを一から構築するためのインフラストラクチャーのサービス群。真ん中のレイヤーは、Amazon Bedrockを中核とした、既存モデルのまま、もしくはカスタマイズしてアプリケーションを構築するためのサービス群。そして、一番上のレイヤーが、生成AIを組み込んだ完成されたアプリケーションであり、「Amazon Q」シリーズが該当する。

AWSの生成AIのテクノロジースタック

 小林氏は、「重要なのは、消費者に対して何を提供するかを見据えること。ゴールが定まると現実な方法論も定まり、既に完成しているソリューションを利用する、基盤モデルをカスタマイズするなど、どのアプローチを選択するかが判断できる。AWSでは、その選択肢を用意することを重視している」と説明する。

生成AIアシスタント「Amazon Q」は、ビジネス・開発者・データ担当者向けに展開

 ここからは生成AIアシスタントであるAmazon Qシリーズについて説明された。一般提供が開始されたAmazon Qだが、現時点では英語のみの対応となっている。

 「Amazon Q Business」は、社内に蓄積されたデータや情報を基に、タスクを実行する生成AIアシスタントだ。40を超えるビジネスツールと接続し、統合されたデータソースを横断的に処理、アクセス権限に応じたパーソナライズされた応答を返す。

 Amazon Q Business Lite(月額ユーザーあたり3ドル)と、Amazon Q Business Pro(月額ユーザーあたり20ドル)の2種類のサブスクリプションが用意される。

 また、Amazon Q Business Proの一部として、「Amazon Q Apps」のプレビュー版を開始した。独自データを利用する生成AIアプリケーションを、コーディング不要で構築できる機能だ。Amazon Q Businessによって解決に至った会話を基にして、課題解決を“再現”するアプリケーションを作成できる。

Amazon Q Business

Amazon Q Apps

 統合BIサービスである「Amazon QuickSight」においても、Amazon Qを連携させた「Amazon Q in QuickSight」が提供される。自然言語を介してBIダッシュボードを作成でき、データに基づくインサイトやサマリーまで自動生成してくれる。

 開発者向けには「Amazon Q Developer」が提供される。開発ライフサイクル全体を支援する生成AIアシスタントとなり、コーディングレコメンド機能や、機能実装やソフトウェアバージョンアップなどを自律的に実行するエージェント、脆弱性を検知して改善案を提案してくれる機能などによって、負荷の高い、煩雑な作業を削減できる。

 無償版の「Amazon Q Developer Free Tier」と月額ユーザーあたり19ドルとなる「Amazon Q Developer Pro Tier」の2種類のライセンスが用意され、無償版では主に月間利用回数に制限がかかる。

Amazon Q in QuickSight

Amazon Q Developer

 その他、AWS Glueで実行できるデータ統合パイプラインを、自然言語を介して構築できる「Amazon Q Data Integration in AWS Glue」も一般提供を開始している。

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード