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モーダル小嶋の「これを食べたくなったので」 第16回

ポーランド大使館の売り込みから生まれたメニュー:

松屋「ミエロニィハンバーグ」って、どこがポーランド風なの?

2024年04月22日 16時00分更新

文● モーダル小嶋(アスキーグルメ) 編集●ASCII

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松屋のシュクメルリ鍋定食

「ポーランド風ミエロニィハンバーグ定食」
松屋
4月23日午前10時発売
930円
https://www.matsuyafoods.co.jp/matsuya/whatsnew/menu/61306.html

ポーランドの人たちが命名したんです

 どこがポーランド風なのか気になりませんか? 確かめてみましょう。

 松屋は、「ポーランド風ミエロニィハンバーグ」を4月23日の午前10時から販売します。一部店舗で先行販売されていたことで、知っている人もいるかもしれません。

 「ポーランド風ミエロニィハンバーグ」はライス、みそ汁付きで830円。ライス、みそ汁、生野菜付きの「ポーランド風ミエロニィハンバーグ定食」は930円。

ポーランド風ミエロニィハンバーグ定食。見てください、ポーランド風でしょう

 ポーランドには「Kotlet mielony(コトレット ミエロニィ)」というメンチカツのような料理があるようで、ミエロニィはひき肉といった意味です。

 とはいえ、ポーランド料理に「ミエロニィハンバーグ」というものがあるわけではないそう。どういった経緯で生まれたのでしょうか。

 こちらはなんと、ポーランド大使館から「ポーランドの食文化を日本で広めたい」という売り込みから開発がスタートしたとのこと。

 ポーランド大使館の声に心が動かされた松屋。レシピ本の分析やリサーチから開発がスタートし、商品開発チームが試食を重ねていったとのこと。もちろん、ポーランド料理も食べたそうです。

 ポーランドにはさまざまな料理があります。餃子のような「ピエロギ」、ライ麦のスープ「ジュレック」、オープンサンドイッチをトーストした「ザピエカンカ」など……。とはいえ、松屋で出す以上は、日本のごはんに合わないといけません。

「ポーランド人も認めた! 懐かしさを感じる家庭の味」だそう

 たとえば、ポーランドには「ビゴス」という煮込み料理があります。これを定食にしてみては……というアイデアがあったものの、松屋のメニューとしてはちょっとむずかしそうということで、断念したそうな。

 しかし、そこからソースをポーランド料理の味わいに寄せていき、松屋のハンバーグと組み合わせるという技に行き着きました。牛・豚・鶏、3種の肉の旨味が溶け込むきのこソースが生まれたのです。

ソースにマッシュルームが入っているのがわかるでしょうか

 とはいえ、松屋側からすると、「これは本当にポーランド料理なのか?」と不安になるものです。そこで、ポーランド大使館のスタッフから試食してもらったところ、お墨付きが出たそう。さらに、「ミエロニィハンバーグ」という商品名も提案されたのだとか。

 強引に例えると、海外のチェーン店が“和風のハンバーグ”を開発。試作段階のものを日本人が食べて、「和風だ!」と認めた。そしてその名前を「ヒキニクハンバーグ」にした……みたいな感じかと思います。この例え、伝わりやすいかなあ。

 先行販売の際、この定食を食べた人による「コトレット ミエロニィとはぜんぜん違う」という感想もSNSで見られました。それも当然。ポーランド料理ではなく、ポーランド風の味付けを目指したメニューなのです。

欧風ではあるんだけど、味付けがありそうでない感じ

見た目としては「煮込みハンバーグ」みたいになっています

 それでは、具体的にどのような味になっているのでしょうか。まず、日本のごはんに合うということが松屋のコンセプトです。これが大前提。

 こだわりとしては、ラードを使用して牛、豚、鶏の旨味を引き出したほか、ヨーグルトのクリーミーさをプラス。また、ごはんとの相性を考え、醤油、ほんのわずかなカレー粉なども入っているのだとか。

ハンバーグそのものはいつもの松屋と同じ

 ハンバーグ自体はいつもの松屋と同じなので、ソースの味わいがポイントになります。確かに“脂”の旨味を感じますし、ほのかなクリーミーさ、きのこの食感、醤油とカレー粉による味の濃さなど、ありそうでない感じになっています。

 洋風なのですが、今までの松屋のハンバーグソースと比べると「ほのかにクリーミーな感じ」と、「スパイスによるちょっとエッジの効いた感じ」が独特。なるほど、これがポーランドの味……。

ソースの味わいがポーランドっぽいはず。たぶん……

 突拍子もない味わいではない。でも、デミグラスやトマトソースとは明らかに違う。欧風ではあるんだけど、ありそうでない感じ。

 このあたりの味わいが、ポーランドの方々が認めたテイストなのだろうと。ちなみに、ごはんのおかずとしてはかなり良い出来です。なにしろ味が濃いので。このあたりは松屋らしいですね。

味が濃いのでごはんには合う

ソーセージがうれしいですね

 ソーセージも添えてあり、このあたりもうれしいですね。ソーセージ自体はポーランド風ではないと思いますが(ポーランドはソーセージがよく食べられる国ではあります)、ソースには合います。いいチョイスではないでしょうか。

ごはんはバターライス

 ごはんにも注目。バターライスになっています。バターで炒めてじっくり作ったというわけではなさそうで、ごはんにバターとコショウを添えただけといえばそうなんですが、これもハンバーグのソースに合うんですよ。

みそ汁には……合うような合わないような。いつものことです

これからも世界各国の料理を紹介する気があるみたいですよ

 価格としては、ライス、みそ汁付きで830円。ライス、みそ汁、生野菜付きで930円。すこしお高めかな、とは思います。なんでも値上げの時代とはいえ、さすがに800円や900円を超えると躊躇するかもしれません。

 とはいえ、日本ではあまり食べる機会のないポーランド風のテイストが楽しめるのは、ここにしかない価値といえるでしょう。ポーランド料理そのものではなく、ポーランドの味わいを模したもの……という点には注意が必要ですが。

 松屋の世界の料理を紹介するシリーズは、これまで8ヵ国(ジョージア、フランス、イタリア、タイ、台湾、韓国、ペルー、マレーシア)。ポーランドで9ヵ国目となります。

 さらに現在、リトアニア大使館、オーストリア政府観光局からも提案をもらっているとのこと。一方、松屋からはアルゼンチン大使館にオファーしているそう。何が登場するのか、楽しみではないですか。

 これからも世界進出(?)を目指し続ける、松屋の新展開に注目です。まずは、ポーランドの味わいを体験してみましょう。

モーダル小嶋

モーダル小嶋

1986年生まれ。「アスキーグルメ」担当だが、それ以外も担当することがそれなりにある。編集部では若手ともベテランともいえない微妙な位置。よろしくお願いします。

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