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「Microsoft AI Tour」で登壇、デジタル庁や地方自治体、金融機関などでの実証採用事例も紹介

エンタープライズ向けマルチLLM基盤「GaiXer」とは? FIXER松岡社長が語る

2024年02月27日 08時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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マイクロソフトがグローバルで展開するイベント「Microsoft AI Tour」が東京で開催された

 2024年2月20日、東京ビッグサイトで開催された「Microsoft AI Tour」。ブレイクアウトセッション「【Azure×生成AI】GaiXer革命:次世代DXを牽引するマルチLLMプラットフォーム」では、FIXER 代表取締役社長の松岡清一氏が登壇し、エンタープライズ向け生成AIプラットフォーム「GaiXer(ガイザー)」が持つ“マルチLLM(大規模言語モデル)対応”などの特徴、金融/公共/ヘルスケア分野を中心とする採用事例などを紹介した。

FIXER 代表取締役社長の松岡清一氏(左)、聞き手を務めた日本マイクロソフト パートナー事業本部 副本部長 エンタープライズパートナー統括本部 統括本部長の木村靖氏(右)

FIXERの「GaiXer」は、日本語LLM「Swallow」など、GPT-3.5/4以外にも多様なLLMがメニュー選択だけで使える“マルチLLM”環境を実現したプラットフォーム

“生成AIブーム”以前から取り組んできた、AIによる業務支援

 2009年創業のFIXERは、Microsoft Azureクラウドの草創期から、金融/公共分野を中心にエンタープライズシステムのクラウド化を手がけてきた“クラウドネイティブ・カンパニー”である。2015年にはマイクロソフトから日本初の「Microsoft Cloud Solution Provider(Microsoft CSP)」認定を受け、また2021年には米国マイクロソフトの「Partner of the Year Cloud Native App Development Award」を受賞するなど、マイクロソフトやAzureとの縁は深い。

 現在の“生成AIブーム”は2022年11月の「ChatGPT」登場が大きなきっかけとなっているが、FIXERではそれ以前から、「Azure Machine Learning」や「Microsoft Cognitive Services」を活用したシステムのインテグレーションを手がけてきた。たとえば、2016年にはAIによるコールセンターの高度化システムを、2019年にはAIによる法務部門支援システムや、議会答弁作成支援システムの設計や開発を手がけている。

 「こうした事例で苦労していたので、ChatGPTが登場したときの衝撃はすごく大きく、FIXERの中でも『これだ!』という機運が一気に高まった」(松岡氏)

“生成AIブーム”以前から、FIXERではAzureが提供するAIサービスを活用した業務支援システムを開発してきた

マルチLLM、最適なプロンプトの自動生成、独自文書の追加学習といった特徴

 FIXERがGaiXerをリリースしたのは2023年4月のことだ。当初は、Azure Open AI Serviceが提供するGPTモデルをベースとした“GPTプラットフォーム”としてリリースされた。ChatGPTとは異なり、Azure上に用意した顧客専用環境で処理を行うため、顧客企業が機密情報やプライバシー情報を入力しても安心して使える点がアピールポイントだ。

GaiXerは、Azure OpenAI Serviceを活用して顧客専用環境を提供する。そのため機密情報やプライバシー情報なども安心して扱える

 しかしその後、OpenAI以外のベンダーからも多様なLLMが提供されるようになり、「GPTだけ対応していたのではなかなか戦えない」(松岡氏)状況になってきたため、GaiXerは“Unlock Major LLMs Instantly”、つまり主要なLLMを手軽に使えるプラットフォームへと進化していった。

 現在ではOpenAIが提供する「GPT-3.5/4」のほか、AWSの「Amazon Bedrock」を介してMetaの「Llama 2」、Anthropicの「Claude 2」、Llama 2の日本語能力を強化した東工大/産総研の「Swallow」など、11種類のLLMが利用できるようになっている。もちろん、どのLLMを使う場合でもその処理はAzure上の顧客専用環境で行われる。

GaiXerの特徴として「複数LLMの“いいとこ取り”ができる」とアピール

 もうひとつ、GaiXerの大きな特徴として、LLMに与えるプロンプト(指示文)の作成を自動化する機能もある。松岡氏は「もしかしたら(自動化ではなく)プロンプトエンジニアリングの研修を提供して1日15万円、というビジネスのほうが儲かったかもしれない」と笑いながら、次のように説明する。

 「プロンプトはLLMごとに“方言”があり、またLLMの進化に沿ってどんどん変化していく。そのたびにプロンプトエンジニアリングをしないと生成AIが使えないというのでは面倒で、普及しないと考えた。そこでGaiXerでは、LLMごとに最適なプロンプトを自動生成する機能を作り、提供している」(松岡氏)

プロンプトエンジニアリングのノウハウがなくとも、自動生成やテンプレートの機能を使って簡単に求める回答が得られる仕組み

 なおGaiXerでは、FIXERがあらかじめ作成したプロンプトのテンプレートも用意されており、それをそのまま使うこともできる。ユーザー企業が作成した独自のプロンプトを、テンプレートとして社内で共有することも可能だ。

 さらに、特定のWebサイトやドキュメントファイルの内容を生成AIに学習させて、それに基づいて回答させることもできる。

 これらの特徴説明を受けて、マイクロソフト 木村氏は「LLMを使ううえでユーザーが『ちょっと面倒くさいな』と感じるところを、GaiXerが補ってくれるイメージですね」とまとめた。

外部のWebサイトやドキュメントを学習させることで、回答内容を最適化させることも簡単にできると紹介した

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