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最新パーツ性能チェック 第423回

AMDはWQHD向けGPU「Radeon RX 7700 XT/ RX 7800 XT」で優勢を取れるか?【前編】

2023年09月06日 22時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●ジサトラハッチ/ASCII

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新旧あわせ10GPUで性能を比較する

 では今回の検証環境を紹介しよう。RX 7700 XTおよびRX 7800 XTと比較するために用意したGPUは8種類。RX 7700 XTとRX 7800 XTの上と下であるRX 7900 XTとRX 7600、旧世代でスペックが近いRadeon RX 6700 XT(RX 6700 XT)とRadeon RX 6800(RX 6800)および型番が近いRadeon RX 6800 XT(RX 6800 XT)、さらにAMDが買い換えターゲットとしているRadeon RX 5700 XT(RX 5700 XT)を準備。

 ライバルとして同じWQHD向けのGeForce RTX 4070 Ti(RTX 4070 Ti)とGeForce RTX 4070(RTX 4070)を用意したが、GeForce RTX 4060 Ti 16GB(RTX 4060 Ti)は製品によりRTX 4070の方が安い場合(あえてRTX 4060 Ti 16GBを選ぶ意味がない!)もあること、さらにフルHDゲーミング向けであることを考慮し除外した。

 またRTX 30シリーズでメモリーバス幅256bit(RX 7800 XTも同じ256bit)の最上位であるGeForce RTX 3070 Ti(RTX 3070 Ti)を準備した。注目はRTX 4070 Tiと4070との力比べだが、RTX 4070 Tiは最安でも11万円中盤、RTX 4070も8万円台中盤と高価であることを考えるとコストパフォーマンス把握の手がかりになるだろう。

 ドライバーはRX 7700 XTおよびRX 7800 XTが検証用β、それ以外のRadeonは「Starfield」に最適化されたAdrenalin 23.8.2、GeForceも同様にGameReady 537.13を使用している。また、検証にあたってはコア分離やSecure Boot、Windows HD Colorを有効化している。

【検証環境】
CPU AMD「Ryzen 7 7800X3D」
(8コア/16スレッド、最大5GHz)
CPUクーラー ASUS「ROG RYUJIN II 360」
(AIO水冷、360mmラジエーター)
マザーボード ASUS「ROG STRIX X670E-F GAMING WIFI」
(AMD X670E、BIOS 1602)
メモリー Micron「CP2K16G56C46U5」
(16GB×2、DDR5-5200動作)
ビデオカード AMD「Radeon RX 7800 XTリファレンスカード」、
ASRock「Radeon RX 7700 XT Challenger 12GB OC」(Radeon RX 7700 XT)、
AMD「Radeon RX 7600リファレンスカード」、
AMD「Radeon RX 6800 XTリファレンスカード」、
AMD「Radeon RX 6800リファレンスカード」、
AMD「Radeon RX 6700 XTリファレンスカード」、
AMD「Radeon RX 5700 XTリファレンスカード」、
ZOTAC「ZOTAC GAMING GeForce RTX 4070 Ti Trinity OC」(GeForce RTX 4070 Ti)、
NVIDIA「GeForce RTX 4070 Founders Edition」、
NVIDIA「GeForce RTX 3070 Ti Founders Edition」
ストレージ Micron「CT2000T700SSD3」
(2TB M.2 SSD、PCIe 5.0、システム用)
電源ユニット Super Flower「LEADEX PLATINUM SE 1000W-BK」(1000W、80PLUS Platinum)
OS Microsoft「Windows 11 Pro」(22H2)

レイトレーシングは強いが、既視感のある結果に

 では定番「3DMark」のスコアー比較から始めよう。RX 7800 XTとRX 6800 XT/ RX 6800/ RX 5700 XT、RX 7700 XTとRX 6700 XT/ RTX 4070の組に注目するとよいだろう。

Radeon RX 7700 XT/ RX 7800 XT

3DMark:ラスタライズ系テストのスコアー

 まずラスタライズ系テストで一番スコアーが出ているのは足回りも太く4Kゲーミング向けのRX 7900 XTだが、RX 7800 XTは今回の検証ではRTX 4070 TiやRX 6800 XTに次ぐ4番目となった。RX 7800 XTはRX 6800 XTにFire Strikeで明確に負けているものの、Time SpyやTime Spy Extremeでは良い勝負をしている。

 RX 7800 XTとRX 6800 XTはCU数こそ同じだが、RX 7800 XTの方がより高クロックかつ設計も進んでいるのでRX 6800 XTと大差ないというのが腑に落ちない。ドライバーの出来という可能性もあるが、筆者はInfinity Cacheの搭載量を減らしすぎたためキャッシュのヒット率が低下し、結果としてスコアーが伸び悩んだのではないかと推測している。

 ただInfinity Cacheを増やすとメモリーコントローラーも増えてしまう(両者はMCD:Memory Cache Die内で一体化されている)ので、Infinity Cacheを増やして調整したくても叶わぬ話である。チップレットデザインはRadeonに価格的なアドバンテージをもたらしたが、微調整が効かないという負の側面があるようだ。

 一方、RX 7700 XTはRX 6700 XTを大きく上回っているが、こちらはRX 7700 XTの方がCUが多い。Infinity Cacheの少なさはCUの多さ(計算力)で突破したと言うべきか。

Radeon RX 7700 XT/ RX 7800 XT

3DMark:レイトレーシング系テストのスコアー

 ラスタライズ系テストではパッとしなかったRX 7800 XTだが、レイトレーシング系テストではRX 6800 XTをしっかり上回った。レイトレーシング性能の向上というRDNA 3世代のGPUの持ち味をしっかりスコアーに反映させている。

 絶対的なスコアーではライバルRTX 4070 TiやRTX 4070には及ばないものの、RTX 3070 Tiに対してはRX 7700 XTでもスコアーで上回ることができているので、実ゲームでのレイトレーシングのパフォーマンスはそこそこ期待できるそうだ。

前世代の同格GPUは越えることができた「Overwatch 2」

 これより実ゲームを利用したベンチマークが続くが、画質は基本的に最高設定、レイトレーシング(RTと表記)があるならそれも使用した(例外あり)。解像度はフルHD(1920×1080)/WQHD(2560×1440)/4K(3840×2160)の3通りとするが、ゲーム側でFSR 2やDLSS SR(Super Resolution:DLSS 2)やDLSS FG(Frame Generation:DLSS 3)に対応している場合はWQHD以上でのみFSR 2/ DLSS使用時の検証も行う。その際FSR 2/ DLSSの画質設定は“バランス”とした。また、動的解像度変更系の機能は一律オフとしている。

 また、ゲームのフレームレートは全て「CapFrameX」を利用して測定するほか、ベンチマーク中のGPUのTBP(Total Board Power:実消費電力)やそれを元にしたワットパフォーマンス、さらにシステム全体の消費電力を「Powenetics v2」を経由して取得している。

 まずは「Overwatch 2」から始めよう。画質“エピック”を選択しレンダースケール100%、フレームレート上限600fps、さらにFSR 1/2はオフに設定。マップ“Eichenwalde”におけるBotマッチを観戦中のフレームレートを計測した。このゲームはFSR 2に対応しているが、元より負荷が軽めのため例外的にFSR 2の検証は行っていない。

Radeon RX 7700 XT/ RX 7800 XT

Overwatch 2:1920x1080ドット時のフレームレート

Radeon RX 7700 XT/ RX 7800 XT

Overwatch 2:2560x1440ドット時のフレームレート

Radeon RX 7700 XT/ RX 7800 XT

Overwatch 2:3840x2160ドット時のフレームレート

 フルHDではRTX 4070 Tiが突出しているが、解像度が高くなると徐々に減速し、WQHDでは足回り(メモリーバス幅)の太いRX 7900 XTに逆転を許してしまう。同様にフルHDではRX 7800 XTはRX 6800 XTに対しわずかに勝っているが、4Kになると逆転されてしまう。

 ただWQHDゲーミング向けのGPUという点を考えると、RX 6800 XTの設計を今風にしたのがRX 7800 XTという印象を受ける。RX 7700 XTはWQHDで平均138fpsとそこそこのフレームレートを示しているが、同セグメントのRTX 4070を上回れていない。

 では、これらのフレームレートのデータを計測した際に、各GPU(ビデオカード)が実際に消費した消費電力(TBP:Total Board Power)の平均値と、このTBPと平均フレームレートを利用し、TBP 10Wあたりのフレームレート、即ちワットパフォーマンスを比較してみよう。下表ではTBPは低いほど良く、逆にワットパフォーマンスは高いほど良い。

Radeon RX 7700 XT/ RX 7800 XT

Overwatch 2:ベンチマーク中におけるTBPの平均値(単位W)、および10Wあたりのワットパフォーマンス(単位fps)

 今回の検証環境では、RX 7700 XTとRX 7800 XTのTBPはほぼ同じだった。前掲のスペック表の上ではRX 7800 XTの方がTBPが高くなるはずだが、今回テストしたRX 7700 XTはファクトリーOCモデルであることもあり、差がないどころかRX 7700 XTの方がわずかにTBPが高くなった。

 RTX 4070のTBPが200Wをわずかに超える程度なのはさすがAda Lovelace世代のGeForceという感じだが、RTX 4070 Tiはパワーもある分消費電力も相応に大きくなり、結果としてRX 7800 XTを上回っている。

 そしてフレームレートを勘案したワットパフォーマンスについては、GeForce勢、特にRTX 4070 TiとRTX 4070は強いが、RX 7800 XTはRX 7700 XTよりワットパフォーマンスが高く、前世代や前々世代のRadeonも圧倒(特にフレームレートの出やすいフルHDで強い)している。

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