AIとIoTを組み合わせると何ができる? 活用方法とその注意点

文●ユーザックシステム 編集●ASCII編集部

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本記事はユーザックシステムが提供する「DX GO 日本企業にデジトラを!」に掲載された「AIとIoTを組み合わせると何ができる?活用方法とその注意点」を再編集したものです。

 AIとIoT、このふたつを組み合わせることでさまざまな応用が可能になり、活用の幅が広がります。業務や生活に密着した活用法も多いので、目にする機会も多いでしょう。普段あたりまえに使っているものに、実はAIやIoTが使われていたということも少なくありません。

 ここでは、AIとIoTとは何か、ふたつを組み合わせることで何ができるのかを、事例を交えて紹介します。組み合わせて使うときの注意点もあわせて説明しますので、ぜひ参考にしてください。

AIやIoTとは何か

 AIやIoTとはどういうもので、どういった違いがあるのでしょうか。

■AIとは
 AI(Artificial Intelligence)は人工知能と呼ばれます。しかし、 AI の定義は実ははっきりとは定まっていません。現在は、次のようなさまざまな段階のものがまとめてAIと呼ばれていますが、これらもまだ本物のAIではないという見解もあります。

・人間の思考や知的な振る舞いを模倣して再現するようなシステム
・機械学習によりパターンを認識・分析するコンピュータ
・自動処理を行うコンピュータ

 総務省公表の「情報通信白書」では、「人工知能(AI)について特定の定義を置かず、人工知能(AI)を『知的な機械、特に、知的なコンピュータプログラムを作る科学と技術』と一般的に説明するにとどめる」と記述されています。

参照:総務省|平成28年版 情報通信白書|人工知能(AI)とは

■IoTとは
 IoT(Internet of Things)は「モノのインターネット」ともいわれます。さまざまなモノをインターネットに接続し、データ収集・共有・操作する仕組みのことです。モノ自身が直接インターネットとつながっており、自律的にサーバーとデータをやりとりして、送信された指示にしたがって動作します。通常の動作をしている限り、基本的に人間の操作は不要です。

 IoTはすでにセンサーをデバイスに搭載して、住宅、工場の設備などさまざまなところで使われています。IoTについては、詳しくは「IoTとは?仕組みと効果・課題、導入事例などを紹介」をご参照ください。

■AIとIoTとの違い
 AIとIoTはよく組み合わせて使われるため、混同されることも多いのですが、ふたつは明確に異なります。

 AIは、どのような環境で動いているかにかかわらず、ソフトウェアを指します。もっとも身近なAIは、スマートフォンのアシスタント機能でしょう。「Siri」、「Googleアシスタント」などと呼ばれている機能です。また、遺伝子解析のようにスーパーコンピュータで動くAIもあります。

 IoTの主体は、インターネットにつながったモノというハードウェアです。そこから多くのデータがもたらされて活用されますが、データを集め、動作するハードウェアがなければ始まりません。

AIとIoTを組み合わせてできること

 AIとIoTはふたつ組み合わせて使われるほか、ビッグデータや5G(第5世代移動通信システム)と組み合わせて使われることも多いです。

■AIとIoTの関係
 AIとIoTは互いに補完する関係にあるといえます。

 IoTがセンサーからデータを取得し、AIがサーバーに収集したデータを分析し、次の動作を指示します。IoTが取得するデータは、AIの精度を上げるための学習データであり、AIを動かすためのデータとなります。

互いに補完する関係

■AIとIoTを組み合わせると何ができるか
 AIとIoTの組み合わせは、次のようにさまざまな場所で使われています。特に、作業の自動化や業務改善に活用されることが多いようです。業界によっては、AIやIoTの導入がかなり進んでいます。

・製造業
 顔認証による機密性の高いエリアや現場での入退場管理
 外観や温度、重さなどを基準にした製品の検品
 外観や温度、重さなどを基準にした正常稼働の監視(モニタリング)、異常検知
 作業員にウェアラブル端末を配布、バイタルセンサーによる状態把握と休憩管理

・流通業
 RFIDタグを使った入荷・出荷検品
 最短経路でのピッキング
 重さを基準にした数量検品

・農業
 気温や湿度、日射量、風の強さなどの気象データの分析、それをもとにした栽培管理
 ドローンが撮影した写真をもとにした栽培管理や病気の早期発見
 消費者のニーズ(販売量)をもとにした生産量調整

・スマートオフィス
 顔認証による機密性の高いエリアや現場での入退場管理
 ビル内に配置したセンサーをもとにした照明や空調の調節
 人の動きを感知したエレベーターの優先割り付けなど

・ヘルプデスクやチャットボット
 チャットや音声認識により顧客からの質問を分析、自動的に回答
 同様に顧客からの注文を分析して受付

■AIとIoTの導入状況と導入による効果
 総務省がまとめた「令和2年通信利用動向調査の結果」(対象:公務を除く産業に属する常用雇用者規模100人以上の企業6,017企業)によると、デジタルデータの収集・解析のためIoTやAIを導入している、または導入予定の企業は、全体の22.2%でした。

 そのなかで、IoT・AIシステムの導入効果があったと回答した企業は81.1%でした。

 これらの数値から見ても、 AIやIoTの導入には一定の効果があるといえそうです。

■5Gが普及するとAIと IoTはどのように進化するのか
 5Gの普及により、これからはAIとIoTを5Gと組み合わせて使うことも増えていくでしょう。

 5Gとは新しい通信規格で、現行の4Gよりはるかに速く、大量のデータを遅延なく送ることが可能です。その性能は、4Gに比べて、最高伝送速度は約100倍、遅延は10分の1、機器の同時接続可能台数は約100倍といわれています。

 近い未来では、5Gにより、データ通信を必要とするIoTがより多くの場所で使われるようになると予測されます。同時に、AIが活用される場面も増えていくと考えられます。

 5Gの普及で、AIとIoTがより多くの場面で活用され、さらに発達していくことが期待できるのです。

 5Gについて詳しくは、以下をご覧ください。
5Gとは?定義やできること・課題などをわかりやすく紹介

AIとIoTを組み合わせて使うときの注意点

 AIやIoTを導入しても、必ず効果が出るわけではありません。導入を成功させるためには、注意しなければいけないことがあります。

■誤った分析結果が導かれることもある
 AIによるビッグデータ解析では、収集するデータによっては、まったく関係のない事象に因果関係を見出されることもよくあります。例えば「ある犯罪を犯す人は、大抵この食品を購入している」のように、人間が見ればすぐに無関係であることがわかる事象です。

 対策としては、「質の高いデータを収集する」「データを適切にクレンジングする」「分析後のデータを人間がチェックする」などが考えられます。

■多額のコストをかけても成功するとは限らない
 AIやIoTの導入や運用には、ある程度のコストが必要です。しかし多額のコストをかけたからといって、必ず成功するわけではありません。

 導入効果を上げるには、IoTによりどのようなデータを収集し、どのように分析するかが重要です。自社の課題や現状分析によっては、かなり的外れな導入になり、効果を上げられないこともよくあります。

 実際、先に紹介した「令和2年通信利用動向調査の結果|総務省」でも、IoT・AIシステムの導入効果があったと回答した企業は81.1%だった一方で、効果がよくわからないと回答した企業も17%あるのです。

 導入効果が上がらなかった要因として、AIやIoTへの期待が大きすぎたことも考えられます。対策としては、「より適切な経営状態の現状把握と分析」「AIやIoTの特性や、できること・できないことを理解する」などが挙げられます。

■人材不足
 現状では、AIやIoTを扱える人材、特にデータ分析の専門家であるデータサイエンティストが大きく不足しています。そのため、せっかくのデータや分析結果を経営に活用できない企業も多いのです。

 データ分析を社外にアウトソーシングするのではなく、社内にAIやIoT、データ分析の専門家がいると、導入効果を上げやすいでしょう。AIやIoTはただ運用するだけでなく、その結果をさらに次の経営に生かし、継続的に利用していくものだからです。

 対策としては、社内での人材確保と育成に取り組む必要があります。

■セキュリティ
 AIやIoTの導入により、業務プロセスにおいてインターネットを利用する部分や、インターネットに常時接続しているモノの数が増加します。それはすなわち、セキュリティのリスクが増大するということです。

 AIやIoTを導入するなら、セキュリティの強化は必須です。

AIとIoTの利用はこれからも増えていく

 AIとIoTは異なる技術ですが、互いに必要なものを補完する関係にあるため、多くの場所で組み合わせて使われています。導入時に注意点はあるものの、5Gが普及することでIoTを活用する土台がさらに整い、AIとIoTの利用はこれからも増え続けるでしょう。

 AIとIoTの導入は、工場や現場の効率化や正確性の向上、オフィスでの業務効率化や働き方改革などにもつながり、DX推進にも大きな役割を果たすことが期待できます。 DXについて詳しくは「【徹底解説】DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?必要性から成功事例まで」をご覧ください。

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