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日本のDXを牽引するロボ、AI、IoTスタートアップ7社が登壇。教育やバイオ、社会インフラを支援

IoT H/W BIZ DAY 2022スタートアップショーケース by ASCII STARTUP

連載
IoT H/W BIZ DAY 2022

 ASCII STARTUPは、先端テクノロジー関連事業者のビジネスカンファレンスイベント「IoT H/W BIZ DAY 2022」を2022年12月14日から16日に開催。12月16日はセミナープログラムとして「IoT H/W BIZ DAY 2022 スタートアップショーケース by ASCII STARTUP」を実施した。本記事では登壇企業7社のプレゼンテーションの内容を紹介する。

コミュニケーションロボットとボイスボットサービスをBtoBで展開
ユニロボット株式会社

ユニロボット株式会社 代表取締役 酒井 拓氏

 ユニロボット株式会社は、コミュニケーションロボット「unibo」と対話型AIプラットフォーム「unibot Cloud」の2つの事業を展開している。

 コミュニケーションロボット「unibo」は、個人の趣味嗜好を学習して相手に合わせた対応ができるのが特徴だ。基本機能として、天気やニュースなどの情報検索、家電制御、音声・ビデオ通話、スケジュール登録、会話、写真撮影、アプリの追加、プログラミング、タイマーの9つを搭載し、ウェブブラウザで使えるスキル開発キットを使って簡単に機能をカスタマイズできる。2023年4月には首をかしげるなどの表現力やカスタマイズ性をアップしたバージョン2を発売予定だ。

 現在はBtoBを中心に、運送、教育、スマートホーム、ヘルスケア領域で提供しており、「IoT H/W BIZ DAY 2022」の会場ブースでは、株式会社エデュゲートおよび有限会社ソリューションゲートとの提携による「ユニボ先生」を出展。小学校全学年の算数を網羅した4000以上の動画コンテンツを搭載し、学習塾や学童保育へ導入を進めている。一人ひとりに合ったコミュニケーションがとれることからタブレット学習に比べて子どもたちの笑顔が引き出せるのが強み。教員の不足している地域での学習補助としての普及も目指している。

 そのほか、運送業界向けの点呼サービス「Tenko de unibo」を富士通との連携で全国約300拠点に導入。またスマートホーム向けロボット「IoT住宅with ユニボ」を現在開発中でスマートホーム領域のコミュニケーション・ハブとしてスマートホーム領域への展開を目指している。

 対話型AIプラットフォーム「unibot Cloud」は、対話エンジン、音声認識、音声合成などのインテリジェンス機能を提供するSaaS型サービスで、例えば、AI電話サービスで自動の予約受付や問い合わせ対応のボイスボットや、文字おこしや議事録の作成など、ニーズに合わせた機能を提供している。飲食店の電話予約を自動受付する「トレタ予約番」に採用されており、約300店舗が登録しているそうだ。

バイオ産業の工業化を加速するAIソリューション「Epistra Accelerate」
エピストラ株式会社

エピストラ株式会社 代表取締役CEO 小澤 陽介氏

 エピストラ株式会社は、AIとロボットを活用して生命科学実験の効率化に取り組んでいる。

 現在、細胞培養などのバイオ技術はひと握りの匠の技術に頼っており、技術継承の難しさから後継者の育成に苦労しているという。これらの技術は対象が複雑なため、すべてを言語化してマニュアル化するのが難しい。この問題を解決するため、同社はデータサイエンスの技術を用いて匠の技術を体系的に抽出し、最適実験条件を求めるソリューション「Epistra Accelerate」を開発(特許6件出願、うち3件登録済み)。

 Epistra Accelerateは、自動評価AIと自動計画AIの2つのAIで構成され、人間の研究者と同様に計画、実行、評価のサイクルで思考錯誤を繰り返すことで重要な条件を効率的に発見できる。また独自の探索技術で、生命科学実験の特有の課題である高次元、高ノイズを効率的に解決し、性能と安定性を両立しているのが特徴だ。

 本技術の有効性を検証するため、理研の高橋政代氏と分化誘導プロトコルのロボット実装のケーススタディを実施した。まず、臨床用に磨き上げられたプロトコルをロボットに完全移植し、次に、iPS細胞の匠が自らロボットのすべての動作を1カ月かけてチェックし、修正を行なった。しかし、結果として匠の技術はロボットでは再現できず、品質に大きな差が生まれてしまう。

 これを解決するために、Epistra Accelerateを使って、重要な7つのパラメーターの最適値を探索した結果、匠と同等以上の分化効率を達成し、匠の技の再現に成功できたという。

 この成果は国際論文誌に採択され、メディアでも取り上げられている(参考記事:「再生医療用細胞レシピをロボットとAIが自律的に試行錯誤」https://www.riken.jp/press/2022/20220628_2/)。

 Epistra Accelerateを使うことで、技術継承が難しかった匠の技をロボットだけでなく、人にも展開が可能になる。期待されている再生医療を多くの患者に届ける目途も立ちそうだ。

 産業への応用も進んでいる。Spiber株式会社では、構造たんぱく質の生産条件をEpstra Accelerateを使って探索したところ、収量が26.5%向上し、2年間かかっていた成果が数週間で出せた、と高く評価されているそうだ。また、株式会社島津製作所との共同で細胞培養に用いる培養条件最適化ソリューションの開発に取り組んでおり、2024年3月に製品をリリース予定だ。

スピーカーの配線が不要になる無線LANで音楽を飛ばす新技術「ミュートラックス」
株式会社ミューシグナル

株式会社ミューシグナル 代表取締役 宮崎 晃一郎氏

 オーディオ系ハードウェアスタートアップの株式会社ミューシグナルは、スピーカーの配線が不要になる無線LANで飛ばす新技術「ミュートラックス」を発表した。ミュートラックスは、「広いイベント会場をたくさんのスピーカーで満たしたい」という発想から生まれたもの。広い会場に1、2個のスピーカーを置くと、スピーカーの付近だけ音が聞こえ、離れると聞き取りにくい。会場のどこにいても同じように音楽が聞こえるようにするには、たくさんのスピーカーが必要だ。しかし、従来の方法で複数のスピーカーを配置するには、ケーブルの配線が問題になる。 無線で音楽を飛ばす方法としてはBluetoothが一般的だが、Bluetoothは基本的に1対1接続で伝送距離も10~15m程度と短いので、広いエリアには向いていない。

 ミュートラックスは、5GHz帯のWi-Fiを使って音楽を配信する仕組みで、1つの音源から20~30台のスピーカーを接続可能。最大300メートル先まで非圧縮データを安定して飛ばせるという。

 親機・子機ともにアナログ入力とUSB入力に対応し、親機にPCやスマホ、セットトップボックス等の音源をつなぎ、子機にスピーカーを接続して電源を入れるだけで使える。親機と子機は直接通信するので、インターネット環境やルーターの設定は不要だ。

 親機と子機とは1:1通信をしているので、スピーカーごとに音量や音質を細かくチューニングできる。また各スピーカーから別々の音を出力することもでき、会場ブースでは20チャンネル音源の再生デモが実施されていた。

 採用事例として、仙台市内での立ち飲みイベントや新橋のルノアール店内の設置を紹介。バッテリー駆動で配線がなく、屋外でも安心して使える。飲食店では、入り口付近と客席のスピーカーで音量を変えるなどの調整も容易だ。ケーブルの引き回しが難しい場所にスピーカーを設置したい、ケーブルを隠したい、といったニーズに応えられる。SEMICON JAPANの来場者からは、工場のラインに指示用のスピーカーを置きたい、という相談もあったそうだ。

現場作業を妨げずに遠隔支援ができる首掛け型ウェアラブル「LINKLET」
フェアリーデバイセズ株式会社

フェアリーデバイセズ株式会社 執行役員 COO /フューチャリスト 久池井 淳氏

 フェアリーデバイセズ株式会社は、LTE搭載の首掛け型ウェアラブルカメラ「THINKLET」と「LINKLET」による遠隔支援ソリューションを紹介。同社は、労働生産人口の減少と高齢化によるフィールドエンジニアの課題を解決するため、ウェアラブルを使った現場のDXに取り組んでいる。THINKLET は5基のマイクと広角カメラ、4G LETを搭載した首掛け型デバイスだ。現場の作業員が装着すると、センターにいる熟練者に現場の声と映像が届き、遠隔で指示を送ることができる。

 当初はヘッドマウント型を開発したが、現場で画面を見るのは危険、首への負担がかかる、操作が複雑、といった問題から現場には受け入れられなかったという。現在の首掛け型のモデルは、デュスプレーをなくすことで軽量化し、シンプルな操作で使えるように改良されている。

 遠隔支援だけでなく、THINKLETを通じて収集した現場データをAIに学習させれば、現場作業の自動化やAI支援にも活用できる。同社がターゲットとしているのは、インフラメンテナンスや製造、建築・土木など、海外にも現場がある業務だ。OT(Operational Technology)と呼ばれる現場知見をデジタル化し、海外現場への日本品質のOT導入を目指している。

 THINKLETをより簡単にしたのが遠隔ソリューション「LINKLET」だ。広く普及しているZOOMやTeamsなどウェブ会議と連携し、センター側の支援者と現場の作業員が会話できる。センターのウェブ画面から現場の端末を操作でき、作業員への教育コストがかからないのが特徴で、現在約20カ国で運用されているとのこと。

 2022年1月に開催された家電の見本市「CES 2022」に初出展し、LINKLETは「Wearable Technologies」、「Streaming」、「Digital Imaging/Photography」の3部門でCES 2022 Innovation Awardsを受賞するなど、海外からも高い評価を集めている。現在、問い合わせの3分の1が海外からだそうで、2023年度は海外進出を検討しているそうだ。

社会のインフラサービスを支援する業務DXロボット「ugo」
ugo株式会社

ugo株式会社 取締役CDO 白川 徹氏

 ugo株式会社は、人手不足のあらゆる業種向けに協働型ロボットを開発・製造する2018年創業のロボティクス企業。さまざまな業務に対応できるように、アーム付きでエレベーター操作ができる「ugo Pro」、「ugo R」、案内や点検用の廉価版モデル「ugo Stand」、「ugo Ex」、小型のスマートロボット「ugo mini」の5モデルをラインアップしている。ロボットはすべて自社設計・自社生産で、東京・千代田区の本社に隣接する工場で組み立てられているのも特徴だ。

 日本のインフラサービスの現場では、人手不足、重労働や深夜勤務などの業務負荷、アナログ業務のデジタル化、属人的なデータの可視化、といった課題が顕在化している。しかし、新しいロボットを導入するには、膨大なインテグレーション費用がかかるうえ、現場に合わせた調整ができず、効率化につながりにくい。

 これを解決する仕組みが業務DXフレームワーク「ugo Platform」だ。ugo Platformは複数のロボットやシステム、IoT機器などの設備を業務フローをベースに連携する機能を備えており、ugoを導入してすぐに既存の業務システムや機器との連携が可能だ。またノーコードで誰でも簡単にロボットの操作や自動化の設定ができる。さらにロボットやIoT機器からデータを収集することで業務が可視化され、業務効率の改善へとつなげられる。

 現在、オフィスビルの警備業務DXとして東京・名古屋・大阪・広島に設置。株式会社NTTデータのデータセンターの点検業務への導入では、人による作業の50%削減できるという結果が出ているという。警備業務については導入先企業からのデータがたまってきており、警備のノウハウの横展開もできそうだ。

工業の自動化、医療のAI画像診断を加速する特殊位相偏光照明「PHASERAY Technology」
シンクロア株式会社

シンクロア株式会社 代表取締役 綾部 華織氏

 シンクロア株式会社は、影を作らない医療用照明技術(無影灯)と、水やテカリが消える特殊位相偏光フィルターの2つの技術を融合した「PHASERAY Technology」で、これまで見えなかったキズや異物がわかる工業用照明装置を開発・販売している。

 手術の際、無影灯を照らすと術野は白っぽく見えるが、特殊位相偏光フィルターを組み合わせることで、色鮮やかで鮮明に見えるという。また独自の楕円偏光により偏光前との光量差がなく、角度に依存しない偏光領域を確保できる。このPHASERAY Technologyに関連する4件の特許を取得、モバイル仕様の特許1件を出願しており、工業、モバイル、医療の3分野で事業展開を進めている。

 工場での生産ラインの自動化は、AIなどによる点検では光の反射や影でキズや異物を見落としやすく、画像処理にコストがかさむのが課題だ。

 カット野菜の工場にPHASERAY Technologyを導入したところ、野菜の水分による光のハレーションを消すことで不良検出率が60%から96%に向上し、コンベアの速度も毎秒30センチから120センチまでアップしたという。重工業の事例では、検査機を使った検出角度が±5度から±30度に広がり、1ラインにおける時間ロスが年間140時間削減できたそうだ。

 プリント基板のキズ、ビニール袋に梱包された製品の最終チェック、バイアル瓶に入った薬液の異物検査など、あらゆる分野で利用できる。

 PHASERAY Technologyによる工業照明装置「inVIEW」シリーズとして製品化し、国内の半導体、自動車、食品メーカーの検査ライン、欧州の医療メーカー等に導入されている。また、海外スマホメーカー向けに内部組み込み技術の提供を予定しており、スマホで撮影する際に蛍光灯の映り込みをなくすアプリを開発。ライセンス事業として国内でフィルターを製造・販売し、国内商社を通じて海外スマホメーカーに提供していく計画だ。

企業向けにBOCCO emoを活用したサービス開発、商品の受託開発・DX支援を展開
ユカイ工学株式会社

ユカイ工学株式会社 CEO 青木 俊介氏

 ユカイ工学株式会社は、コミュニケーションロボットBOCCOシリーズなど、家庭向けプロダクトを中心に開発しているスタートアップ。家族をつなぐコミュニケーションロボットBOCCOシリーズ、クッション型癒しロボットQooboシリーズのほか、NHK小学生ロボコン公式のロボット製作キットkurikitシリーズの開発メーカーとして有名だ。

 こうした家庭向けロボットの開発・販売のほか、BtoB事業としてロボットプラットフォームを利用したサービス開発や、製品・サービスの受託開発・DX支援も行なっている。

 ロボットプラットフォーム事業は、コミュニケーションロボットBOCCO emoを活用したサービスで、スマホアプリと連動したメッセージのやりとり、Bluetooth機器との連携による健康管理、専用センサーを使った見守り、Slackや対話エンジンのDialogflowとの連携などが可能だ。

 活用事例として、セコム株式会社と森ノ宮病院との協業でシニア向けサブスク型コミュニケーションサービスの開発を進めており、ひとり暮らしの高齢者への声かけ、買い物支援などの実証を3年以上実施している。

 受託開発・DX支援は、豊富なプロダクト開発の経験を持つユカイ工学のエンジニアとデザイナーがコンセプト設計からプロトタイプ開発、量産事業化までを支援するサービスだ。  事例として、不動産仲介業の株式会社FLIEと連携し、スマホで物件探しから内覧予約、オートロックの開錠までを無人化できる「Smaview(スマビュー)」のシステムを開発している。

 ユカイ工学は、社内のアイデアを形にする「メイカソン」を毎春開催するなど、デザイナー、エンジニア、営業企画が密に連携したモノづくり文化が強みだ。IoTプロダクトやスマホのアプリ開発だけでなく、小売店のネットワーク、クラウドファンディングのノウハウなど、新しい商品をPRしていくサービス全般のサポートも提供している。新しいIoT製品やサービスの商品開発を考えている企業は相談してみては。

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