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山根博士の海外モバイル通信 第580回

スマホ画面で4つの指紋を同時に認証できるフランスの薄型センサーフィルム

2022年02月01日 10時00分更新

文● 山根康宏 編集●ASCII

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 最近のスマートフォンはディスプレーに指紋認証センサーが埋め込まれていますが、指紋を当てる場所はだいたい固定されており、スマートフォンの持ち方によっては指紋を当てるのがちょっと難しいこともあります。フランスのIsorgが開発中の有機イメージセンサー内蔵フィルムは、スマートフォンのディスプレー全面で指紋認証を可能にする技術です。

Isorgのフィルムを張ったスマホ。全画面およびマルチタッチで指紋認証が可能

 一般的なディスプレー埋め込み型指紋認証センサーはバックライトや超音波を使いますが、IsorgはOPD(Organic Photodiode、有機受光素子)を使うことで薄いフィルム上で指紋を検出できるとのこと。

マルチタッチ対応の指紋認証センサーが組み込まれたフィルム

 センサー部分の厚さは300マイクロメートルと薄く、スマートフォンのディスプレーへの組み込みも難しくはありません。側面をカーブさせたエッジディスプレーや、最近話題の折りたたみ型ディスプレーへの組み込みにも対応しているとのこと。なおセンサーの最小サイズは20x30mm、最大でスマートフォンのディスプレーサイズまで対応するそうです。

この薄さで指紋を検知できる。様々な形状のスマートフォンへ組み込み可能だ

 実際に指紋を検出する様子を見せてもらいましたが、一般的なスマートフォン同様、ディスプレー上をタッチするとすぐに指紋を認識、記録します。デモ機は全画面がセンサーになっていたので、どの部分にタッチしても指紋を記録させることができました。

ディスプレー上のどの位置に指紋を置いても認識される

 また1つの指紋だけではなく、最大4つの指紋の同時認識にも対応します。たとえば高いセキュリティーを求めるときに、ディスプレー上をタッチする指先の数を2つ、3つ、4つと増やすことができるわけです。

マルチタッチ対応で、複数の指紋を同時に認識できる

 たとえばモバイルペイメントの支払いの時、1万円以下なら指紋1本、1万円を超える場合は指紋2本、のようにセキュリティーを高めることもできるわけです。また、自分が寝ているときに悪意ある第三者が自分の指先をスマートフォンの画面にタッチする、なんてことも複数の指紋の同時認証が必要ならば簡単ではなくなるでしょう。

複数の指紋を使うことでセキュリティーは高まる

 ほかにも異なる2名の指紋で同時に認証が必要、なんて使い方もできるかもしれません。いずれにせよ同時に認識する指紋の数が増え、しかもディスプレー全面のどの部分でも認識可能になるだけで、スマートフォンのセキュリティーをこれまで以上に高めることができるわけです。

2本指タッチなら安心して取引ができる

 有機素材を使うことで5層の構造を印刷技術で生成できるためコストも高くはないといいます。現在はまだ開発中の段階ですが、数年内にこの指紋認証センサーを搭載したスマートフォンが登場することは間違いないでしょう。スマートフォンの生体認証は使いやすさの面から顔認証が好まれますが、高いセキュリティー用途には複数指紋による認証が今後求められていくのではないでしょうか。

銀行や仮想通貨取引など、より高いセキュリティーを求めるアプリケーション向けと言える

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