実は冒頭の写真はこの原稿を書いてる最中に撮ったのである。黒猫ミルが遊びたそうにしてたので気分転換にと猫じゃらしを出したらそれはもう待ってましたとばかりに喜んだので、これは撮るしかないじゃないかと左手に猫じゃらしを持ったまま右手でカメラのセッティングをし、こんな感じかな、と連写したものだ。
そしたら天井の照明が目にいい感じに反射してキャッチライトになるし、黒くてつややかな毛がきれいに光ってるし、顔は止まってて目にフォーカスがきっちりきてるけど爪はいい感じにブレてて、これを冒頭に持ってこようと決まったのである。
使ったカメラはキヤノンのEOS R3。縦位置グリップ一体型のプロ仕様のフラッグシップミラーレス一眼だ。EOS Rシリーズ最高峰。発売は2021年11月下旬予定。発売前だけど一足先にちょっと借りられたので、いろいろと猫を試し撮りしてたのである。
フラッグシップ機は伝統的にただ高級なだけじゃなくて、プロが苛酷な現場で使えるように頑丈でレスポンスが良くてサクサクと動いてAFも連写も超高速。つまり、いざというとき確実に撮れるべき写真が撮れてるという高い要求に応えられるカメラだ。EOS R3も……キヤノンはネーミング的にそういうプロ向けフラッグシップモデルに「EOS-1」という名を付けてきたので、「EOS R3」はまだ真のフラッグシップじゃないという声もあるけれども、それはそれとして、ガチで一眼レフからミラーレス一眼へという流れを加速させる製品なのは確かだ。
何しろ手に取ってちょっと触ると、その剛性感や反応の良さがミドルクラスのカメラとは全然違うもの。「ああ、これはいい道具だ」ってのが伝わってくる感じ。しかも、当然ながらEOS R5/R6から進化した「動物優先AF」付。瞳が見つかれば瞳を、みつからなければ顔を、そうでなければ身体全体にピントを合わせてくれるのだ。
さっそくうちの黒猫でためしてみた。黒猫って黒いので(当たり前です)、光の条件がよくないと瞳を捕捉しづらいわけで、動く黒猫をちゃんと捉えられるかって大事なのだ(と、黒猫を飼うようになって思い知った)。
まず、とことことあるいてくるうちの黒猫ミル。遠くから歩いてくるところを連写し続けたのだけど、きっちり瞳を捉え続けてくれた。これはさすが。
じゃあもうちょっと難易度の高いヤツってことで、うちのミルはときどき(あくまでも「ときどき」なのが厄介なんだが)、飛ばしたプロペラを追いかけて加えて戻ってきてくれるので、その様子を狙ってみた。もうちょっとギリギリまで寄りたかったけど、ここで咥えていたプロペラを落としちゃったのだからしょうがないのである。
ではもっといろんな猫を撮るぜってことでいつもの「保護猫シェルターQUEUE」へ。まったり午後タイムだったのだけど、おもちゃを咥えたら離さないチャトラが元気。これなんかもう咥えたら離さないぜって顔をしてる。
次は難易度高いヤツいくかって、で左手でおもちゃをあやつりつつ、捕まえようとジャンプした瞬間を狙ってみた。ちゃんと目にピントは合い続けるか。
いやあ、楽しいですな。猫の瞳や顔を追い続けてくれるので、こっちはタイミングと構図だけを狙って連写すればよいのだ。いろんな被写体を認識する賢くて速いディープラーニングを駆使したAFってミラーレス一眼のトレンドであり、ミラーレス一眼ならではの楽しさなのだ。
保護猫シェルターQUEUEからもう1枚は上から撮ったカット。写ってる足は店長さん。何かもらえるんじゃないかと期待して見上げたときの顔だ。猫を撮るときって猫の目の高さが基本っていうけど、というか基本なのだけど、真上から撮るのもかわいいのである。そのときはちゃんと顔が上を向いた瞬間を狙うべし。
最後は外猫を。猫用に作ったという猫ハウスからひょこっとハチワレが顔を出してたのだ。
動きものに強いカメラなのでついつい動き回る猫の写真がメインになっちゃったけど、動いてなくても写りはすごくいいのである。ただ猫がいる、ってだけじゃなくて猫がいる場所の雰囲気までしっかり捉えてくれる。室内猫を気軽に撮るには大仰なカメラだけど、この高性能に一度触れちゃうと、ミラーレス一眼の未来を見るようで将来が楽しみなのだった。ここまで進化したのだなあと。
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筆者紹介─荻窪圭
老舗のデジタル系ライターだが、最近はMacとデジカメがメイン。ウェブ媒体やカメラ雑誌などに連載を持ちつつ、毎月何かしらの新型デジカメをレビューをしている。趣味はネコと自転車と古道散歩。単行本は『ともかくもっとカッコイイ写真が撮りたい!』(MdN。共著)、『デジカメ撮影の知恵 (宝島社新書) (宝島社新書)』(宝島社新書)、『デジタル一眼レフカメラが上手くなる本』(翔泳社。共著)、『東京古道散歩』(中経文庫)、『古地図とめぐる東京歴史探訪』(ソフトバンク新書)、『古地図でめぐる今昔 東京さんぽガイド 』(玄光社MOOK)。Twitterアカウント @ogikubokei。ブログは http://ogikubokei.blogspot.com/
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